吊り先
ここへ来て、またグレーを精査すると話が戻って来た。
夏菜が人外であったことを祈りたいが、今の時点では分からない。
そんなわけで、精神的にダメージを負ってはいるが、亜佳音、奈央、楓馬、眞耶、千隼、由弥、祐吏、一敬、理人、勇佑の10人を精査しなければならないのだ。
この中に、太月が知った二人の狩人候補と、共有者の相方が一人の三人が混じっているので、実質7人のグレーから選ぶ必要があった。
果たしてこの中に、どれぐらいの人外が残っているのだろうか。
囲われていたとしたら、たった一人しか居ないのではないだろうか。
何しろ、みんな白く見えて仕方がないのだ。
意見は違うが、それぞれの視点ではおかしなことは言っていないように思うのだ。
千隼は、一番最初に口火を切った。
「正直、それぞれ意見が違うだけで白いと感じてしまうんだよね。」と、ノートに視線を落とした。「グレーが最初から話したことを見てたけど、結局誰を真に見るかとか、グレー詰めか霊能ロラかの考え方の違いぐらいで。目立って怪しい動きなんかしないだろうから、当然なのかもしれないけど。ただ、由弥はかなり強めの発言をして目立ってるから、人外ならわざわざ隠れてるのにそんな事はしないだろうと思うから白く見えてる。楓馬は白く見えてたんだけど、さっき夏奈ちゃんがあんな感じでイレギュラーで追放された後に、それでも光祐を吊ろうと言ったのが少し、違和感があった。霊能の結果が全く落ちない上に、占い師の結果も落ちてない状態で、ロラ完遂してしまったら情報が落ちないんじゃないかって疑問に思ったんだよね。それぐらいで、他はそんな意見もあるなって、特に違和感は感じなかった。」
楓馬が、言った。
「あれは吊りたいと言ったんじゃなくて皆に問いかけただけだ。今も、グレーからがいいというならそれでいいと思ってる。ただ、光祐はそのままにできないんじゃないか?放置してたら人外だった時面倒だろう。それで、夏奈ちゃんが居なくなったんだから今夜はロラ完遂で光祐かなって単純に思っただけだ。そもそも役欠けがあるかもしれない状況なのに、落とす情報を信頼できるのかとも思うし。」
眞耶が、言った。
「楓馬の言う事は分かるな。このままグレーをわけがわからないまま吊るより、霊能者を吊り切って1人外落ちたってクリアになる方が良いとはオレも思うから。でも、千隼が言う通りに夏奈ちゃんのあの様子を見たら、どうも味方が居るように見えなかったし、人外だったかなと思ってしまうんだよな。だとしたら、役欠けを追わない限りは光祐は限りなく真だし、一日ぐらい結果を見たいとは思うのが村人だと思うよね。だから、気持ちは分かるけど、このケースには当てはまらないよなって違和感はある。だから、千隼の言う事も分かる。」
一敬が割り込んだ。
「オレもそれは思う。霊能ローラーは完遂したいとは思ってたけど、それはあくまでも真っぽい人は残して結果を見てから、占い師の結果も合わせて明日考えようと思ってた。今日一気に二人共ただ処理しようとか望んではいない。だから仮に光祐を吊るとしても、明日以降だと思ってる。グレーを詰める方がいいとオレも思う。」
由弥が頷く。
「オレも同じだよ。でも、怪しいところが千隼の言うようにわからないんだよな。」と、理人を見た。「理人はどう思う?放って置いても話すのは今話した4人と僕ぐらいで、他は促されないと話さないよね。祐吏は寡黙そうでも話してたよ。夏菜ちゃんの情報をくれたのも祐吏たったし。理人、勇佑、亜佳音ちゃん、奈央ちゃんが聞けてないよね。」
理人は、言った。
「オレは言いたい事はみんなが言ってくれるから言わないだけだぞ。というのもやっぱりオレも、こうなったからには霊能ローラーよりもグレー吊りの方が良いと思ってる。ただ、楓馬は最初からよく話してたし、ローラー完遂したいと言ったぐらいでは怪しいとは思ってない。本当にさっさと霊能者は居なかった事にして、明日の占い師の結果に賭けようとしただけに見えてるな。」
勇佑は、顔をしかめた。
「でも、他に怪しい所が見当たらないから、グレーからと言うならちょっとでも他と意見の違う所を疑うしかないんだよな。何しろ、オレもこの場合はグレーからだなと思ったんだ。だから千隼がそれは違うと言い出した時、ホッとした。千隼は白いなと思ったよ。何しろ自分の反対意見を、誰も言ってない中で出すのは人外だったら勇気が要る。」
亜佳音は、うーんと眉を寄せた。
「でも、もし光祐さんが狼か、狼と通じてる狂人だったら?知ってるから庇ったとも考えられるわ。」
奈央が言った。
「え、でも狼だったらわかるけど、狼がリスクを冒して狂人を庇うかしら?むしろ吊るのを押すんじゃないかって思うんだけどな。」
亜佳音は反論した。
「でも夏菜ちゃんがあんな感じで真目を取れてなかったのよ?光祐さんが人外だったら、願ったりの事じゃない?結局、夏菜ちゃんの色は分からず終いなんだもの。」
祐吏が、言った。
「じゃあ亜佳音ちゃんは、千隼が狼だと思うの?」
亜佳音は、それには戸惑った顔をした。
「え?いえ…千隼さんは白いとは思うけど…。」
楓馬が、言った。
「グレーと言うなら誰も怪しく見えてなかったけど、ラインはあるよね。中には村人が混じってるかも知れないけど、千隼と由弥、祐吏は結構意見が近くていつもお互いの意見に同意してる。涼太郎の白の大都もそうだ。他も同じと言ったら同じだけど、一敬とかはちょっと違う感じの意見。眞弥は単独っぽい。完全同意な感じの意見を出してるのは、今オレが言った4人じゃないか?村人同士ならあまりにも意見が合いすぎてるようにも思うけど。」
奈央が、千隼や由弥の顔を見た。
「言われてみたら…そうかも知れないけど…。」
太月が、ため息をついた。
「グレーの中には人外は多くて二人、囲われてたら一人だからまあ、ラインが見えない方が怪しく見えると思うけどな。でも、一敬も眞弥も怪しい意見じゃなかったし、ライン考察はまだ早い。明日以降だろう。初日にグレーを吊るのは、とりあえず狭めるのが目的で白ならごめんって程度なんだよね。ほんと、今夜吊られる人には村人だったら必ず勝つからごめんなって先に言っとく。寝て待ってて欲しい。というのもオレにも、さっぱりわからないから。」
だが、一敬が言った。
「それでも指定しなきゃならないぞ。この中に相方と狩人候補が居るんだろうが。自由投票にしたら、人外の思うツボだと思うぞ。無理でも人外らしい所を吊らないと。」
太月は、ますます眉を寄せて苦悩の表情になった。
怪しい位置など、全くわからないのだから無理もない。
だが、一敬の言うように自由投票は危険だった。
「…とりあえず、二人は指定する。」太月は、言った。「でも期待はしないでくれ。ほんとにわからないからな。二人指定して残った方は占い師のどちらかの占い指定に入れる。その方向で行こう。とはいえ、ほんとにわからないんだよ。役職達の話を聞かせて欲しい。その意見でまた、怪しむ場所も分かって来るかもしれないからな。何しろ役職には、人外が居るから。」
しかし狩人は公表されていない。
狩人は狼なのだろうか?
しかし狼は3人なのに、もしかして仲間の狼は安全圏に居るのだろうか。
千隼は考えたが、それは人外にしか分からなかった。




