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1日目の昼

そんなこんなで12時を過ぎて、さすがに朝早くから起きているのでお腹が空いて来た二人は、書きまくったノートを持って部屋を出てキッチンへと向かった。

キッチンでは、多くの人が食事を始めていて、入ってきた千隼と大都に気付いた由弥が、言った。

「あれ。二人共どこに居たの?見なかったよね。部屋?」

千隼は、頷く。

「うん。」と、ノートをテーブルに置いた。「何食べてるんだ?弁当?」

祐吏が答えた。

「そう。あっちの大型冷凍庫に山ほどあるよ。中華がおいしいってみんな言ってる。」

中華弁当か。

途端にお腹が鳴りそうになった千隼は、そちらへ歩いた。

由弥が、ノートを手に持った。

「何?会議をメモでもするの?」と、中を開いて、目を丸くした。「げ。凄い書き込んである!」

脇の太月が歩み寄って来て覗き込んだ。

千隼は、大都と弁当を選んで電子レンジに持って行きながら頷いた。

「そうなんだよ。書いとかないと忘れるから、今まで大都と二人で部屋に籠って思い出してたんだ。人ごとに分けてあるから、前の発言と矛盾があったりしたらよく分かるだろ?グレーなんか誰が怪しいのかわからないから、言ってた事を書いてる。今はみんな意見が違うだけで怪しくないけど、そのうちこれが役に立つかもしれないだろ?」

太月が、感心したように言った。

「お前って昔から何でも書いとく奴だったもんなあ。これはありがたいよ。言った言わないの水掛け論になりそうでも、これがあれば否定できないな。よし、お前を書記に任命するよ。午後からの会議もしっかり書いてくれ。」

千隼は、それには顔をしかめた。

「別にいいけど、書いてたら議論に参加できないじゃないか。適当に書いといて後でちゃんと書く。」

勇祐が、言った。

「お前白いなあ。狼ならまずこんなの残そうとは思わないだろう。自分の言ったことも書いてるもんなあ。言い逃れできないもんな。」

由弥が、ウンウン頷いた。

「だよね。ホッとしたよ、少しでも白い所を増やして行きたいし。」

脇に居た、亜佳音が寄って来た。

「それって、私にも見せてもらえるの?」

太月が言った。

「いいよ、事実だけしか書いてないからね。」

亜佳音は、由弥が持つノートを覗き込んだ。

そして、女子達の項目へと真っ先にめくって行った。

「…ほんとだ。別に悪口とか主観じゃなくてちゃんと言ったことだけ書いてあるわ。」と、離れてこちらを見ている、他の女子達を振り返った。「考え過ぎよ。言ってないこととか想像とかは書いてないわ。」

そんなことを思ったのか。

気を悪くした千隼は、ムッとした顔をしながら温まった弁当を手に由弥の隣りに座った。

「事実だけだよ。そもそもオレにはまだ誰が人外なのかわからないのに、主観で書き留めないよ。誰が何を言ってたってことだけ書いてる。とはいえ、太月だけが見た方が良いんじゃないか?狼が、上げ足を取るのに使うかもしれない。みんなそれぞれ思ったことは書き留めたほうが良いよ。それはオレのノートだし。」

太月は、そうだなあと顔をしかめた。

「言われてみたらそうかも知れない。人外に対策を立てられたら面倒だもんな。オレも、じゃあオレ用のノートを作っておくかな。相方に残しておかないといけないし。」

「狩人とかはそこには書かないでよ?」由弥は言う。「見られたらどうするのさ。口頭で相方に伝えておいてね。」

それに関しては、太月は険しい顔をした。

「分かってる。1時から会議をするから、みんな食事を急いでくれ。他の奴らにも伝えて来る。」

慌ててキッチンの時計を見ると、今は12時40分を回ったところだった。

千隼は頷いて、大都と共に急いで弁当を食べたのだった。


その後太月から午後の会議の時間を知らされた人達がわらわらとキッチンに駆け込んで来て、慌ただしくなった。

いち早く食事を終えた千隼達はさっさとキッチンを出たが、時間は迫っていた。

円形に並んだ椅子に座って待っていたが、段々に人が増えて来る。

やっと皆が揃った時には、1時を少し過ぎていた。

太月が、ホワイトボードの脇に立って言った。

「…じゃあ、昼の会議を始める。慌てるから先に言っとく。夕方は7時から会議をするからな。投票が8時だから、最終はそれで良いだろうと思って。」と、ホワイトボードを見た。「…で、結論だが。今夜は、霊能から行く。」

皆が、え、という顔をした。

「え?グレーが詰まらないんじゃ。」

千隼が言うと、太月は頷いた。

「その通りだが、グレーには人外が少ないんだよ。」皆がわけがわからない顔をしていると、太月は続けた。「…狩人は、二人居たんだ。」

…二人?!

だから、さっき狩人の話が出た時険しい顔をしたのか。

千隼は、混乱した。

つまりは、騙りが出たということだ。

狩人の名前を言わないのは、狼がそこを噛むのを避けるためだろう。

仮に片方が狂人だった場合、狼は残った方が吊られる懸念もなく簡単に噛んで来る。

面倒な事になるからだろう。

「つまり、5人外中、占い師1人、霊能者1人、狩人1人の3人外が役職に出てるから?」

由弥が言うと、太月は頷いた。

「そう。狩人は両方共怪しいわけでもないし、判別が付かないしな。だったらもう、霊能者から行くしか方法はない。グレーの人外は、占い師に任せる。占い師は頑張って黒と呪殺を狙ってくれ。」

楓馬が、言った。

「それって…狼だけで3人は絶対ないだろう。何しろ狼は3人しかいないんだ。ってことは、どこかに狐と、狂人が出てる?」

太月は頷く。

「そうだと思う。狐だって、人狼ゲーム自体を良く知らない人なら霊能者に出る事も狩人に出る事もあるかも知れないしな。ゲームを作れる占い師に狼が出ていないはずはないと考えているから、オレは狩人か霊能者の中に狐が居ると見ている。だから、最終的には占い師にはそこを占ってもらうが、とりあえず今夜はグレーの黒を探してもらうよ。霊能者は、すまないがローラーさせてくれ。明日黒が出たら一旦止まるかもしれないが、とにかく今夜は霊能者から。じゃあ引き続き霊能者の話を聞いて、それに対してグレーの意見を聞いて行こう。占い師達は、グレーの意見を聞きながらどこを占うのか決めておいてくれ。二人の意見を聞いて、指定先を決める。」

面倒な事になった。

千隼は、思った。

吊り縄に余裕があると思っていたが、役職に3人出ている以上、それを処理するためにあちこちローラーしてしまうと縄余裕がなくなってグレーの色が見えなくなり、吊る時に困る。

ミスしたら終わりになるからだ。

狼も、恐らく誰が狐で誰が狂人なのかわからないので、占い以外の役職に出ているのが狼ではない限り、どこを噛めばおかしくないのか迷うだろう。

噛んだ場所によっては、村利になる可能性があるのだ。

狩人に狼が出ていたとしたら、狩人を噛めば太月が両方知っているので自分も吊られる。

太月が狩人を両方共伏せているのは賢い選択だと思えた。

「え、役職は吊られないんじゃないの?」夏菜が、抗議するように言った。「私は真霊能者なのに!」

太月は説明した。

「確かに霊能者も重要な役職だが、二人出てしまうとどちらか真なのか村人にはわからないんだ。占い師にも人外は居るが、そちらは色を付けて吊る場所を決めるのに重要だ。だから、必ずどちらかに人外が居る霊能者に2縄使う事で、確実に1人外を落とす方法なんだ。」

夏菜は、立ち上がった。

「そんなの聞いてない!だったら出なかったわ!私は白だもの!」

光祐が、言った。

「そうか、君は狐か狂人だな?吊られたくないから出たんだな。狐もあり得るか。何しろ役職は基本的に占わないからね。いや、それも知らないのか?」

夏菜は、首を振った。

「私は人外じゃないわ!そもそも人狼ゲームなんて知らないもの、ルールブックを読んだだけよ!あなた達みたいにいろいろ罠を張るとかできないわ!」

知らないから出た人外。

そんな風にも見えた。

だが、何も知らないただ死にたくない霊能者にも見えた。

そんな夏菜を、どっちと判断したらいいのか、千隼は迷っていた。



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