――ブっ飛びなッ!!!
「おーおー、やっときやがったか。見ろよボク、あれがクイズの正解だぜ」
不気味に、猛々しく来襲してきた夜の群れ。それ等を前にサモは怖気づくのではなく、何処か得意げに言った。
「おー、凄い……! ワンコがいっぱいだね。あの子はワンコの餌にするってこと?」
「いや、違げぇよ。本当の正解は死体の臭いであいつ等を誘き寄せるってことだ。後、あいつ等は犬何か可愛いモンでもねぇ」
「え? でも可愛いよ? 毛がボサボサしてる所とか、歯のギザギザとかサモちゃんに似てるし」
「全然似てねぇだろ! はぁ、ったくよぉ……!」
そう言った後、狼の毛並みに似ていると言われた髪の毛を掻きながら、サモはボクより一歩前に出た。夜の群れは速度を上げて、すぐそこまで差し迫ってきている。
「……ボクはアタシの背中に隠れてな。これから先輩としてよぉ、この世界で生き抜く方法ってやつを教えてやんよッ!」
深く長い息を一つ吐き、不敵な笑みで眼前の夜を見据える。
迫る夜、笑うサモ。空気がピリつき、空に浮かぶ星達が思わず固唾を呑んでしまいそうな雰囲気が当たり一面に漂っていくのであった……。
「…………うーん、どうしよう。サモちゃんの背中、小さすぎてはみ出ちゃうんだけど」
そんな空気をぶち壊すかの如く、サモの後ろでしゃがみ込んだボクがひょっこりと彼女の肩口から顔を出して言った。
「おいッ! アタシの格好良いところ邪魔すんなよ!! それくらい我慢しろッ!!!」
「でも、やっぱ窮屈だよ? 屈み過ぎて膝折れそう……」
「アタシはそんなチビじゃないだろ!……ってボク? どこ行くんだよ! おいッ!」
小さなサモの背中をいつの間にか抜け出したボクは、そのままスタスタと夜の群れへと歩みを進める。
「おい何やってんだよ!? 危ねぇから戻ってこい!!」
「んー、でも背中に隠れるの嫌だし。それにサモちゃんに似てて可愛いから大丈夫だよ、多分」
「だから似てねぇっつってんだろ!! 早く戻れよ!!!」
「へーきへーき。ほら、ワンコおいで」
三度舌を鳴らし、夜の群れを手招きするボク。それを聞いた夜達は耳に響く重低音な唸り声を上げ、気泡交じりの涎を垂らし、一斉にボクへと飛び掛ったのだ。
「うわっと」
ソレ等を受け止められず、ボクは地面に倒される。倒れ込んだご主人様を心配したり、もっと遊んで欲しいとねだる愛犬達……。そんな愛くるしい光景など当然無く、夜達は躊躇せずボクに襲い掛かった。
「おいボク! 大丈夫か!?」
「う、ん。へーきだよ、へーき……」
全身噛み付かれながらも、サモを心配させまいと片腕を上げて手を振った。だがそれも一瞬、上げた腕にすぐ夜が飛びつき、群れの体毛でボクの姿は完全に見えなくなってしまった。
「あーもうッ! ボクのバカ! アホッ! だからアタシは言ったのによぉ……!!」
このまま行けばボクの身体は食い荒らされ、横たわる少女の仲間入りを果たすだろう。そんな状況下、サモは両手をピストルの形に合わせ始める。
「ったくよぉ、ボクの奴。生きてたら絶対ぇ説教してやるかんな……」
ボクへの怒りを吐き捨てる様に、もう一度深く息を吐き、両手を目線の高さに上げる。照準に見立てた親指の爪先は、己の欲望のため貪りを尽くす夜の群れを捉えていた。
感覚を研ぎ澄ませる。靡く風の音が消え、星も草木を視界から無くなる。辺りは真っ暗な夜。その中で夜の群れだけを捉えて。
そして――。
「――ブっ飛びなッ!!!」
真っ暗な夜に、一瞬の火花飛び散る。サモの指から火の玉が放たれ、夜の群れに着弾したのだった。