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第八頁 依頼者の友人 来咲蜜花

 僕たちは依頼者の友人でありクラスメイトの少女に違和感のない接近を試みることにした。

 クリードから聞いた依頼者からの情報も頼りに、彼女が激高している時間帯を狙うため3時ほどになって、学校の校門で待つこととなった。

 クリードは烏の姿になってもらい、学校周辺の調査を頼んである。

 後は、彼女を見つけられればいいのだが。


「……来たね」


 僕はぽつりと言葉を漏らし、前髪で目元を隠した長い淡い色の茶髪の少女を見つける。

 長く伸びた髪はサラサラと髪でよく梳いているのがわかるが、目元を隠しているのは疑問だ。

 きっと、こういう流れの場合、相当の美少女、という展開は漫画では定番だと思うが……どうだろう?


『エル』

「わかってるって」


 僕は通りがかるのを見計らって、彼女に声をかける。


「やぁ、お嬢さん。少しいいかな」

「…………」


 少女は無視して去ろうとしているのを見て、僕はくすっと笑う。


来咲蜜花(くるざきみつか)さん。君にしか、お願いできないことなんだ」

「……警察呼びますよ」


 僕は続けて彼女が興味を引くように、わざと依頼者のことを言った。


「ああ、佐伯宥子(さえきゆうこ)さんがいまどこにいるか、君が知りたくないならそのまま行ってもいいよ」

「……!」


 少女はこっちを見て、驚いたように息を漏らす。


『エル、直球過ぎないか?』


 脳内で声をかけてくる従者には脳内で会話をする。


 ――そういうのを変に誤魔化す方が、探偵じゃなく変質者感を出すんだよ。


『そういうものか?』


 うん。そうだよ。

 後は彼女の好奇心がどちらに寄るか、になるけどね。


「……なんなんですか?」

「君が佐伯宥子の親友じゃないなら、別に構わないさ。でも、彼女は既に自殺を図ろうとしたことがあるようだけど、君が興味がないなら問題はないね。同じ学校で同姓同名の別の人を探すとするよ」


 僕はわざと彼女が本人であると踏んだうえで、親友として聞きたくてたまらない情報を垣間見せる。エルエスは踵を返し、拠点へと戻ることにした。


「――――、まっ、待ってください!」

「……何かな?」

「普通、学校に同姓同名の人がもう一人いるなんて滅多にいるわけないじゃないですか」

「でも、君が違うと拒否するならそれはあまり変わらないんじゃないかな?」

「教えてください!! ユウちゃんがどこにいるのか!!」


 少女は僕のコートの袖をぎゅっと掴んだ。

 前髪で隠れていてもわかる。

 決意した彼女の琥珀色の瞳は、真実を知りたいと僕に訴えかけている。

 どうやら、本人のようだね。


「……ここでは聞かれたくないなら、一度、喫茶店で話さないかい? その喫茶店なら情報が漏れることはないよ」

「……なら、はやくしてください。私も知りたいので」

「君が理解がある人でよかったよ」


 司書は少女に微笑みかけると、少女は忌々しそうに先を促した。

 僕は、よく通っているある喫茶店へと彼女と一緒に歩き出す。

 チリンチリンと鈴の音が鳴り響くと、僕たちは店員に案内され、席に座る。

 店員が水とおしぼりを置くと、僕たちはそれぞれ自分の好きなドリンクを頼んだ。


「それで、どこにいるんですか? ユウちゃんは」

「ああ、僕の事務所で少し休んでいるよ。セラピストもいるから、精神面的にも少し落ち着いている頃だろうとは思うけれどね……自己紹介をした方が、互いに理解を得られやすくなると思うんだけれど、いいかな?」


 店員は静かに僕が注文した紅茶と、少女が注文した紅茶がテーブルに並ぶ。

 僕は軽く店員の女性に頭を下げると、少女も小さく、ありがとうございますと礼をした。


「……貴方が言ったように、私の名前は来咲蜜花(くるさきみつか)です」

「僕はエルエス・ブッカーだ、探偵をしているよ」


 彼女はテーブルに置かれた自分の紅茶も飲まず、先に自分から自己紹介をした。

 苛ついている少女に僕は優しく彼女の問いに答える。

 少女は不審そうに、僕をジトっとした目で睨む。


「探偵……?」

「ああ、そうだよ」

「……正直に言って、美少年の探偵なんて漫画の中だけだと思ってました」

「僕は漫画の中から出てきたキャラではないよ? でないと、かわいい君との会話はできなかっただろうからね」

「……キザなんですね」

「可愛らしい物に可愛いと言うのは、人種も容姿や内面も関係ないことだろう?」


 紅茶のカップを持ちながら彼女へと微笑むと……確かに、と少女は感心したような息を漏らす。話したいのは、こういう話じゃないのだけれどな。


「それで、話さないかい? 僕の依頼者、佐伯宥子(さえきゆうこ)のことについて」


 少女は、コクリと頷いて宣言した。


「あのユウちゃんが頼った人です、私は信じます」

「……それじゃ、彼女のことについて話そうか」


 コトリ、と僕はソーサーにカップを下ろす。

 僕は図書館に来たことはぼかし、彼女と一緒に情報交換をすることとなった。

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