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第一三頁 女スパイに頼み込み

 僕たちは蜜花ちゃんが時折、彼女と情報交換もしつつ二人の情報を一つ一つ集めて言った。いじめっこたちの人柄や過去などは、不良君仲間からの情報を集めてきてくれて話してくれた。

 まず射越只広は学校生活では普通の男子生徒だが、依頼人の彼女をいじめるきっかけを与えた人物でもあるから、何の因果か味園義男とつるんでいる、という情報がある。

 本人の性格的に、暗い性格なのは掴んでいるが……自分自身がもう忘れているかもしれないセクハラをしていることを黙ってくれていた女子をいじめる側の人間の味方をするなんて最低の極みだな。

 次に味園義男の今の高校生としての態度は、基本的にセフレなどという関係を築いている女子生徒たちが複数人いるそうだ。他校の女子たちとも関係を持っているらしい。

 しかも、セフレたちに金を貢がせているそうで、どこぞの屑系なホストを連想させる。

 いや、ホストのイメージがそういうわけではないが、作品の中で基本的にホストはまともなのもいれば、心の底から屑と罵りたくなるような奴もいる。

 その点については、どの役職でも言えた話だが……だが。


「うん、屑だね」

「ああ、屑だな」


 僕たちはホテルで情報を整理しながら互いに口にした。

 はぁ、と重たい溜息が零れる。

 まだ依頼者の彼女が妊娠させられて転落人生を過ごす、なんてしていたら救いが完全にないが暴力を振るわれたからやり返す報復を先生に気づかれないように行う、なんてみみちぃ男共なのだろうと思う。義男に関してはセフレにピルを飲ませてヤリまくっているという情報もあったが……いや、やはり屑以外の何者でもないな。


「とりあえず、蜜花ちゃんに知られたら彼を殺しかねないね」

「そうだな」

「けど、多少は知っているからこそのあそこまでの啖呵を切ったんだろうさ……はぁ、今回はまた、色々と暗躍していそうなヤツがいそうだ」

「……なぜだ?」


 僕は不良君に渡された写真を目にする。

 いじめにしてはやたら性的ないじめの写真が多い。佐伯宥子が全裸にさせられているのはもちろん、尿を催しているところを取った写真や、肌に落書きされている写真まである。

 そんなあれやこれやの写真に頭痛を余儀なくされた。

 ……しかもこの写真は味園義男たちが持っている写真のようで、これが彼女にとっての弱みの一つなのは間違いない。

 だが、気になるのはそこだけじゃない。


「女子生徒の反応がおかしいんだよ。話しかけたら、特定の話題になると目をとろんとさせて、洗脳されたように目が死ぬんだ……これは何かがあるよ」

「それは、確かに怪しいな」

「とりあえず、まず一旦確認をしようじゃないか」


 僕はポケットからスマホを取り出して、とある人物のアドレスでスピーカーモードにした。


「……キャサリン、少しいいかな」

『ハニーじゃない! どうしたの? 今日はアタシと一緒にデートしてくれるのかしら』

「あはは、ごめんね。今は仕事中なんだけど少し聞きたいことがあるんだ」

『あら、つれなぁい……今度アタシとデートしてくれるなら考えてあげてもいいわよ?』

「はは、そう来ると思った。いいよ。今度の休み、デートしようか」

『嘘ついたら、針千本とハリセンボンを一緒に飲んでもらうから! そのつもりでいてよぉ?』

「あはは、僕は嘘はつかないだろう? 大好きなキャサリンがしたいこと、叶えてあげたいから手伝ってくれるかな」


 エルエスはクスと笑いながら、エージェントであるキャサリンの条件を飲んだ。

 キャサリンは嬉しそうに、そして強かな脅しを加えた。


『ええ、わかったわ。愛しのハニーのためですもの。色々教えて、あ・げ・る♡』

「……俺の主人を誘惑するな、スパイ女」


 甘ったるいキャサリンの言葉に苛ついたのか、クリードは罵倒になっていない罵倒を吐く。


『え!? ハニー、ドブガラスと一緒にいるの!?』

「僕の従者だしね、キャサリンは今は何してるの?』

『ちょっと屑政治家の極秘資料漁ってると・こ♡ おじ様から今回の依頼人がどっちなのか聞いたけど……女の子なのねぇ。もし今回の依頼人が男なら私のテクで一発なのにぃ』

「……? あれ、なんだかんだでキャサリンが聞いてくれたんじゃないの?」

『違うわよ? ドブガラスが珍しく女の子を気遣いながら話を聞いてたって、孤狼おじ様が言ってたもの』


 じー、と僕はクリードを見る。

 なんだかんだでキャサリンの力を借りなくても頑張れる程度にはなってくれたんだ。

 ……ホテルに最初来た時にわざと強気に言ったけど、実はクリードはまた聞けてないと思ったのに。少し眉をハの字にして、困った顔をしているクリードは静かに言った。


「……俺だって成長はするんだぞ、エル」

『アンタの成長度合いなんか興味ないわよドブガラス!!』

「うるさいぞ、スパイ女」

『全然罵倒になってないわよ汚物ガラス!! もう少し従者として語彙力付けなさい!!』

「……まあ、それがクリードの可愛い所だから許してあげて? ダーリン」

『もう、ハニー甘やかしすぎじゃなぁい?』

「……あはは。キャサリン。今は僕のお願いを聞いてほしいな」

『はーい……じゃあ何してほしいの?』

「ああ、味園義男って知り合いの子を誘惑して陥落してほしいんだ。できるかな?」

『……味園義男ってどんな男?』

「君が大嫌いな屑男だよ、セフレ持ってる高校生。依頼人の子が彼に裸で落書きされた写真とか持ってる感じかな。知り合いにも渡してたりしてるね」

『……ふーん? 男の風上にも置けないわねぇ』


 向こう側で、やる気に燃えているキャサリンの絵が容易に想像できる。

 君は屑男なら路頭に迷わせるほど追い込みたくなる性質(たち)だもんね、と心の中で囁いた。キャサリンはやる気に溢れた声で、最期の方では僕に甘く媚びる。


『いいわぁ、やってあげる。ハニーの頼みだもの♡ 後でご褒美頂戴ね♡』

「もちろんだよ、とりあえず依頼者の子はクリードが案内するから、少し待っててくれるかな?」

『はーい、ハニー♡ それじゃまた後でねぇー!』


 プツンと、通話は切れる。

 僕はふぅと、溜息を吐きつつ、僕はパチンと指を鳴らす。

 すると、ホテルの最上階のこの部屋の出口である扉が僕の図書館の扉へと変わった。


「それじゃ、行ってくる」

「うん、お願い。僕は情報の整理をもう少しやっておくから、二人とも喧嘩はしないでよ?」

「……できる限り務める」

「うん、行ってらっしゃい」


 僕は扉の向こうに消えていくクリードを見ながら改めて今まで集めた情報の整理を始めた。

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