第21話 ギャンブルでコインを倍に!
遊園地兼カジノには、ぞろぞろと人が集まり、入り口に吸い込まれていく。
どのくらいの広さがあるのだろうか? かなり大規模な施設だと見受けられる。
「鳥居は、どこにあるんだ? 」
俺が、額に手を当てて、じっと目を細める。
しかし、どう頑張っても、鳥居らしきものを発見できない。
そもそも、遊園地エリアにあるのか、それともカジノにあるのかすらわからないのだ。
「そうだね。まずは、遊園地で探そうか」
「私も行く」
短く、リーチェが言う。
確かに、この子は頭が良いし、もしかしてカジノの超攻略法とかも知ってたりして!? と、期待する。
入り口まで来ると、今度は、簡単な身体検査とチケット料金について説明された。
……なんだか、俺の胸や尻を軽くタッチするたびに、門の警備員たちがにやつくのが、少し気味悪かった。
「チケット料金は、大人5000イェンに子供4500イェン」
だるそうにチケット支払いの管理人が、説明した。
俺も、魔界の通貨の相場などわからないが、かなり強気の値段のようだ。
それから、管理人は言った。
「遊園地に遊びに行くならば、カジノのメダル100枚が必要になります」
「ほ? 」
俺が、素っ頓狂な声を出すと、「なるほどねえ」とニーヤンが顎に手を当てる。
「つまり、こういうわけだよ。『カジノで稼いで、子供を遊園地に行かせる』って名目で、ギャンブルができるってわけ。元々、この辺にはギャンブル文化があまりないからね。でも、一度射幸心を煽られてしまったら、ギャンブル依存症の入り口、『いらっしゃいませ』ってことだよ」
「シャコーシン? 」
「射幸心。つまり、幸運などによって思いがけない幸せを得たい、という気持ちだ。ギャンブルでは、テクニックもそうかもしれないけど、大半は運の世界だからね。ちなみに、この射幸心を持っていないのは、猫だけだという話もあるよ」
「へー」
俺はそう納得して、カジノの入り口を見る。
カジノは開放的で、開け放たれている入り口には、何人もの警備員が配置についていた。
ニーヤンは、「大人2枚に子供1枚」と受付に申し出ていたが、ふくれっつらのリーチェにガンガン足を蹴られていた。
「痛い痛いよリーチェ。……はい、これ入場チケットね」
「紙製なんだな。意外」
「紙製のチケットは、今では珍しいわ。皆、手の甲にスタンプしてもらうのが当たり前だからね。でも、魔界では色んな種族がいるし、リザードマンなんかは鱗でスタンプできないでしょ? 」
「むう。それもそうか」
そして、俺たちはカジノの方に足を踏み入れた。
――
回るルーレット台。やかましい音のパチンコ機。ポーカーやブラックジャックなどのカードゲームも取りそろっている。
カジノでは、それこそ様々な種族が、めいめいに自分の好きなゲームに興じていた。
しかし、その誰もが、魔王に気付いた気配がない。
「……魔王って、もしかして、面割れてないの? 」
「まあ、地上遠征に行ってない種族もいるしっ! 直属の部下以外には顔見せてないしっ! ぜんっぜん心が痛くはないもんね! 」
「……はあ」
俺は、正直に言うと、これほど人望がないニーヤンに、いささか同情すらしてしまった。
しかし、よくもまあ、顔も知らない『魔王』とやらについていった奴らがいるもんだ。
「で、どーする? メダル100枚……だっけ。金で買えるのなら、買っちゃった方が安いんじゃねえか? 」
「買えるならね。受付でちょっと聞いたんだけど、俺らブロンズクラスの客の買えるメダルの上限は50枚」
「ブロンズクラス? 」
「会員の等級だよ。初めて利用すると、ブロンズクラス。そこから通っていくと、シルバー・ゴールドって上がっていくみたいだ」
「……ってことは、遊園地に行くまでには、あとメダル50枚をギャンブルで稼ぐ必要があるのか」
「そゆこと」
俺たちは、きょろきょろと一旦ギャンブル場内を見渡す。
……鳥居は、ない。やはり、遊園地エリアに鳥居は置かれているようだ。
「じゃーまあ、50枚、稼ぎますかねえ」
「まず、5000イェンから両替しますか」
「ん? そんなに必要か? ニーヤン、ギャンブルしたくて騙してんじゃねーの? 」
「静かにしなさい」
そう言われ、リーチェにすねを蹴られる。
俺は、うめいてがくんと座り込んだ。
「こっ……このガキ……! 弁慶の泣き所はマジで痛いんだぞ……! 」
「メダル1枚100イェンで、50枚買ったとしたら、値段は5000イェン。間違ってはないわよ」
「ぬう……」
俺は、半分の25枚を貰い、「さーてと」と、ギャンブル場内を徘徊した。
ニーヤンには「付いていかなくて大丈夫? 迷ったりしない? 」と、田舎のばあちゃんくらいに心配されたが、子連れで固まっているようなところではない。
黄色く灯るシャンデリアに、金ぴかの内装。
なんだか、本当に、「ギャンブル場らしいギャンブル場」である。
「初心者でもとっつきやすくて、頭の中で計算とかしなくて良くて、しかも簡単にメダルを倍以上にできちゃうギャンブルは……と」
と、紳士淑女の皆さんのやっているギャンブルを、ざっと見物する。
「ポーカーは意味わかんねえし、ブラックジャックも計算が危ういしなあ。カードゲームはなしってことか……」
俺は、「うーん」とうなって、のろのろと歩き始めた。




