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事件の真相

「リュウジさん、指示通り、関係者を全て集めました」

 

 アオイは帰って来たリュウジの指示で、関係者を集めた。全滅したヒノカグツチと同じクエストを引き受けていたローデッドの冒険者たち。

 あと事件の前日にヒノカグツチのメンバーと一緒に酒を飲んでいた冒険者。


「結論を言おう。ヒノカグツチのメンバーが全滅したのは、彼らのミスではない。これは殺人事件だ」


 リュウジは厳かにそう言い放った。驚いたのはアオイを含めてこの場にいる人間全てである。


「な、何を話すかと思えば、クエスト調査官、気でも狂ったのですか?」


 そう口に出したのはローデッドのリーダー、ジェーソンである。リュウジはそんなジェーソンに少しだけ視線を移したが無視して殺人事件だと断定した理由を話した。


「皆さんも承知の通り、ヒノカグツチのメンバーは砂漠の鉄砲水に巻き込まれて命を落とした。川の跡にキャンプを張ってはいけないという初歩的な禁を犯した結果だ……だが、ここで1つ疑問がある」


 リュウジはここに集った人間の顔を見回した。


「ヒノカグツチのリーダーヘイゾウは、それくらいのことは知っているベテラン冒険者。彼がそんなミスをするはずがない。だが、事実は事実。彼らは川の跡にテントを張った。それには理由があったからだ」

「確かに……」

「ヘイゾウともあろう人間がそんなミスをするはずがない。それに他のメンバーもベテラン。間違った判断に従うはずがない」


 みんな口々にそう言った。リュウジに言われてみれば確かに腑に落ちない。


「ヘイゾウは岩場地帯にサラマンダーとロックトロールが現れる危険性を考え、あえて川床をキャンプ地に選んだのだ」


 そうリュウジは説明した。リュウジが遭遇したサラマンダーは岩場から出現した。さらにリュウジを追い詰めようと移動をしていたが、決して川床へは降りようとはしなかった。


「サラマンダーは本能で川床を避ける習性があります。彼らは自分の生息地の危険な場所を本能で知っているのです」


 アオイはそう補足説明をした。さらにリュウジが畳みかける。


「ロックトロールも岩場を移動する。もし彼らが近くに出現したら、岩場でキャンプをしたら襲われるだろう。そして、ロックトロールが現れることを情報として流したのは、ローデッドのリーダー、ジェーソン。あんただろう?」


 リュウジはそうジェーソンを指さした。ジェーソンは複雑そうな表情を一瞬だけ浮かべたが、笑顔を作って答えた。


「ああ、それはその通りだ。出発前の前夜。俺は彼にサラマンダーとロックトロールの情報を教えた。実はダチがいるパーティが2週間前に岩場地帯から、砂漠の中心を目指していて、その時にその情報を得たのだ」


 ジェーソンたちは砂エリアを移動するから、岩場地帯を進むヘイゾウに親切心からそう教えたのだ。


「情報は正しいです。これまで遭遇した冒険者からも、この地帯に出没するサラマンダーとロックトロールは川床へは降りてこない習性があると冒険者ギルドに報告をしています」


 アオイがさらに補足する。そうなるとジェーソンはライバルであるヘイゾウたちに親切に危険を教えたということになる。


 ここで疑問が生じる。


 ヘイゾウが川床にキャンプしたことをミスだと噂が立ったがそれをジェーソンが否定しなかったことだ。

 みんなの視点がジェーソンに向けられる。それを意識したのか、ジェーソンはこんなことを言いだした。


「確かにその情報は流したさ。だが、砂漠の鉄砲水と危険を両てんびんにかけた上での判断だ。結果的に彼は判断を誤まったことがパーティの全滅理由だろ。それを俺がかばう気はない」

「そうだろうか……ヘイゾウはちゃんと手を打っていた。彼は上流に一人のメンバーを斥候で配置していた。もし、雨が降ったのなら下流の自分たちへ合図を送るようにしていたのだ」


「えええっ……」


 これにはみんな驚いた。救出部隊はヒノカグツチのメンバーの遺体を全て見つけていたわけではなかった。鉄砲水の勢いがすさまじく、遺体はどこかへ流されてしまい、見つかったのはヘイゾウと2名のメンバーだけであった。スカウトの男の死体が見つかっていない。

 当初は砂漠に住む大砂蟲に食われたと思われていた。それをリュウジが見つけたのだ。


「これは上流で見つけたスカウトの認識番号が刻まれたプレートだ」


 リュウジは右手に鎖を握り、プレートをみんなに見せた。番号は2098563である。


「その番号はヒノカグツチ所属のスカウト、グレン・アークラットさんのものです。ギルドの登録書にそう記されています」

「そう彼は仲間に合図を送る前に何者かに殺されていたのだ」


 リュウジはぐるりと呼ばれた人間たちを見回す。この中に犯人がいるとその目は言っていた。周りの人間たちは黙る。自分たちがクエスト調査官に疑われていると悟ったのだ。


「へえ……砂漠地帯の荒野に犯人がねえ」


 そう口にしたのはローデッドのジェーソン。彼は同じ時間に20kmも離れた砂漠でキャンプをしていた。

 それはローデッドの仲間たちと共にだから、完全なアリバイがある。だから、犯人と疑われていないと言う余裕があった。


「そうだ。犯人は斥候に出たグレンを殺し、岩場にたまっていた大量の水を流した。岩を魔法トラップで破壊すれば、雨が降らなくても鉄砲水は起こせる」

「破壊されたって……。岩が自然に崩れて水が漏れ出たとは考えられないのかい。砂漠の岩場地帯じゃよくあること。岩も風化でもろくなっているからね」


 ジェーソンはそう言って否定する。ジェーソンの言葉も決してでたらめではない。自然の中では思いがけないことが起こることはよくあることだ。


「風化ね……そういう反論もあろうかと思ってね。これが破壊された岩場の写真。そして採取した破壊された岩石だ」


 リュウジが取り出した写真と岩石。黒く焼け焦げた跡があった。明らかに人為的に破壊された証拠だ。


「ぐっ……」


 この証拠にジェーソンは黙った。どうやら鉄砲水の原因は断定された。次はそれを誰がやったかである。


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