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サラマンダー

「シュッ……シュッ……」


 異様な音の正体は巨大なトカゲであった。そいつはぬっと顔を岩陰から出すと、長い舌を何度も出し入れして後を伺う。そして、口を変えたかと思うと強烈な炎を吐いた。炎にあたった岩は真っ黒に焦げた。


「リュウジ、あれはサラマンダーにゃ」

「デザートリザードならまだよかったが、最悪だったな」


 この岩場で出会うモンスターの中では、単独ならもっとも強いモンスターだ。ロックトロールは集団なら手強いが、単体ならリュウジの敵ではない。デザートリザードならリュウジの力ならばなんとか倒せる。

 しかし、サラマンダーは違う。倒すには炎を防ぐ装備をもつか、神官による防御魔法がいる。つまり、パーティによるチームプレイが必要なのだ。


「リュウジヤバいにゃ……」

「奴は臭いで獲物を探知する。この岩場では人間の臭いは消せない……」


 ぐおおおおおおっ……


 凄まじい咆哮を乾燥地帯の上空に突き抜けさせた。サラマンダーがリュウジを見つけたのである。

 ドスン、ドスンと近づいてくる。リュウジの臭いは三方向を岩で囲まれた場所であった、唯一、開かれた場所にサラマンダーは鼻ずらを突きだした。

 勝ち誇ったように口から炎の舌をちょろちょろ吐き出し、丸焦げにしてから食事にするつもりで口から炎を吐き出そうとした。

 

ぶおおおおおおっー。


 視界に入った瞬間、サラマンダーは炎を吐いた。どこにも逃げ場所はない。目の目の人間は焼き死ぬはずであった。

 現に燃え盛る服と木の枝……。想像したのとは違う光景にサラマンダーは固まった。それは本能だったのであろう。しかし、ヒトカゲの知能では目の前に起きていることと、頭上から近づいてくる脅威にを結ぶ付けることはできなかった。


「残念だったな!」


 リュウジはバゼラードをサラマンダーの脳天に突き刺した。リュウジが潜んでいたのはサラマンダーの後方の岩。そこから飛び降り、サラマンダーの脳髄を一撃で破壊したのだ。


「リュウジ、やるにゃ。自分の服と装備でエサを作るとはにゃ」


 サラマンダーが臭いで獲物を追い詰めることは経験から分かっていた。だから、自分の服を脱ぎ、落ちていた流木に被せて立てかけた。そして自分は風上に姿を消す。

 服や装備の臭いをリュウジだと勘違いしたサラマンダーを誘い出し、攻撃しやすい位置へ先導。油断したところを背後の頭上から攻撃する。

 チャンスは1度だけだ。倒せなかったらそれで終わりの攻撃にリュウジは勝利した。


「はあ……はあ……。強敵は倒した」

「とりあえず、おめでとうだけど、装備も服も失ったにゃ」


 寧音が指摘するとおり、リュウジが身に着けているのはパンツとランニングシャツとベルト、靴下と靴。そして二本の短剣のみだ。


「やむ得ないとはいえ、装備をほとんど失ったのはこの砂漠地帯では自殺行為だったな……」


 まもなく夕方になるとはいえ、照り付ける太陽は容赦なくリュウジを焼く。人間は1日に2リットルの水は必要である。ましてや、激しい運動をした後ではかなりの水分が汗となって失われる。


「燃え尽きた装備の中で使えるのは、ファイアースターターしかないにゃ」

「いや、これも使える」


 そう言うとリュウジは燃えて炭になった木を指さした。


「そんな炭、何に使うにゃ」

「炭は貴重な物資だ」


 そう言うと炭を拾い集め、脱いだ靴下に入れる。それをベルトに挟む。


「これからどうするにゃ」

「今日はここで野宿をする。捜査の続きは明日の朝だな」


 そう言うと少しでも体力を温存するために、リュウジは比較的涼しい岩陰を探す。

 一人で行動するリュウジにとっては、この乾燥地帯の岩場は安全ではない。灼熱の太陽から身を守り、打って変わった夜の寒さ対策。そして夜に徘徊する危険な動物、モンスターから寝ている最中に襲われない場所を探さないといけないのだ。


「ここがいいな……」


 リュウジが見つけた場所は大きな岩。それは小屋ほどあるもので、下の部分に隙間がある。滑り込ませるように足から入ると、辛うじてリュウジ一人が寝られる隙間があった。狭すぎて寝た姿勢でしか動けない。


 中の空間を観察すると、リュウジは日が落ちる前に岩を集めだした。入り口に山ほど積むとその大岩の隙間に潜り込み、入り口に積んでおいた岩で丁寧に入り口を塞いだ。


「これなら寝ているうちに襲われることもないだろう」


 そういうとリュウジは目を閉じた。やがて、日が落ちて夜となる。暗闇が支配する砂漠の闇だ。


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