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異世界ぼっち酒 ~クエスト調査官リュウジの事件簿~  作者: 九重七六八
第4話 梟の巣団全滅事件 前編
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ダイビング

 さらに3体のロックトロールを葬った2人であったが、事態は好転しなかった。森には無数のロックトロールの集団がおり、寧音とリュウジの行く手を次々と阻んでいったのである。


「はあ……はあ……」

「どれだけいるにゃ……」


 2人は森の中を逃げながら、追撃してくるロックトロールを次々に倒した。寧音はとっておきの爆裂魔法を何発も繰り出し、肉体を炭と化すまで焼き尽くしたし、リュウジは再生ができないように粉々になるまで切刻んだ。

 数にして50体は葬ったであろう。リュウジの魔法剣もロックトロールの血糊で切れ味が落ち、一撃で切れなくなった。寧音も魔力切れとなり、魔法が使えなくなってしまった。

 それでも新手のロックトロールは2人への追跡を止めない。むしろ、やられた仲間の復讐に燃えている。捕まれば確実に八つ裂きにされてしまうだろう。


「寧音、どうやら絶体絶命だぞ」

「全く運がないにゃ」


 がむしゃらに逃げ回ったせいで、二人は行き止まりの場所へ追い込まれた。退路は崖。地面は暗くて見えないが、相当深い谷である。

 転落したら、間違いなく死ぬだろう高さだ。


「くそ!」

「もう逃げられないにゃ……」

「下は……見えない。たぶん、体感で10m以上はあると感じる……落ちたら危険だ……」


 月明かりがうっすらと追跡して来るロックトロールの影を映した。前から迫るロックトロールは2体以上。リュウジは疲労で剣を持ち上げられない程であり、寧音も魔力が底をついていた。


「寧音、もうあの爆裂魔法は使えないよな」

「もう魔力は0にゃ。アイテムで魔法トラップが1つあるにゃが、ミラーオブジェクトだにゃ」


 魔法トラップ、ミラーオブジェクト。これは玉に封じられた魔法で、地面に投げると割れて魔法が発動する。

 ミラーオブジェクトは、60秒間現れる魔法の鏡が出現するものだ。使いようはダンジョンで通路の目くらまし。精神支配の魔法を跳ね返す等の効果がある。

 トラップとしては、使いどころが難しいなかなか渋いものであるが、今のピンチでは使いようがない。


「ここが死ぬ場所と思って戦うしかないようだな」

「そうにゃ……」


 寧音は両手を前に突き出した。爪が1m半ほど伸びた。ネコマタの能力、猫の爪と呼ばれる武器だ。鋭利な爪は鋼鉄でできたサーベルと同等の威力がある。


 コツン……コツン……ボチャ……。


 リュウジが剣を構えた時にかかとにあった石が弾かれて、崖下へと落ちて行った。それは崖の岩に何度もあたり、そして底へ飲み込まれた。石が地面に当たった音は水面のものであった、


(下は川か……)


 高さがあるので、石が水面にぶつかった音はかなり経ってからではあるが、確かにかすかに水に飛びこんだ音が聞こえた。


(問題は水の深さだな……)


 こういう絶体絶命の場合、一か八かで飛び込んでしまうかもしれないが、リュウジは慎重であった。生き残るためには最善を尽くすのが、優秀な冒険者なのだ。

 リュウジはベルトに取りつけたリールのようなものから、細い紐をくるくると取り出した。これはいざという時に使うロープ代わりになる紐である。

 細い紐であるが、特別な繊維で加工されており、リュウジ一人の体重なら十分支えられた。

 握りこぶし大の石に巻き付けて縛ると、それを谷へ落とした。腰に取りつけたリール部分が回転し、紐がどんどんと出て行く。


(10m……12m……15……)


 紐の長さを確認する。15mほどで水面に達したようだ。そして石は水底へ。20mを越えたところでようやくリールの回転は止まった。


「水面まで15m。水の深さは6m……」


 条件は整った。うまく足から飛び込んで体への衝撃を抑えれば、助かる確率は上がる。


「寧音、鎧は脱いで。革鎧でも水の中では命取りになる」


 そう言いながら、リュウジは自分が着用していた鋼の胸当てを脱ぐ。止めてある革ひもをナイフで切り、ガチャガチャとその場に脱ぎ捨てた。

 川へ飛び込む場合、着水の衝撃に耐えることができても、次に溺れないようにする必要がある。水深6m以上あることは分かっているが、流れは分かっていない。重い鎧を着用して飛び込めば、間違いなく溺れて死ぬだろう。


「リュウジ、無理だなにゃ……うちは泳げないにゃ……」


 突然、寧音がそんなことを言った。深刻そうな顔の表情を見ると冗談ではなさそうだ。

 優秀なBランク冒険者でも、この国では泳ぐと言う経験はそれほどない。泳がなくてはいけない場面はそうそうないからだ。生まれが海辺で、小さい時から泳いでいない限り、この国の住人で泳げる人間は多くはない。


「猫又族は泳げないのか?」

「元々、水は嫌いにゃ」

「風呂にも入らないのか?」

「失礼するにゃ。風呂には入るにゃ。だけど、小さい頃、川で溺れたことがあって、それ以来泳ぐのが怖いにゃ!」


 ここまで強気でリュウジに接していた寧音が情けないくらいに弱気である。


「子供の頃って、何年前の話だ?」

「ご……50年前……」


 ネコマタ族は人間よりも長寿だという。その平均寿命は300年。人間の4倍以上である。50年前なら12,3歳ころの話であろう。


「そんな昔の話、忘れろ!」


 ロックトロールが姿を表した。同時にリュウジは寧音の腕を掴んで、思いっきり走った。歩数にして3,4歩のダッシュであったが、最後は地面を思いきり蹴った。

 寧音もリュウジにつられて思いきり跳んだ。本能で飛ばなきゃ危険だと判断したのだ。ネコマタの身体能力なら跳躍力は楽に4,5mに達する。

 崖に体をぶつければ大けがを負う。それに着水の姿勢も大事だ。腕を体につけて足先から水面へと落ちる。


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