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異世界ぼっち酒 ~クエスト調査官リュウジの事件簿~  作者: 九重七六八
第4話 梟の巣団全滅事件 前編
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墜落

「どうしてうちがこの新米と一緒にゃ!」

「寧音、仕方がないだろう。グライダーの操縦ができるのは俺とクルーベと寧音にテルー。そして重量を考えるとテルーとラノン、クルーベとリリーゼ。俺は一人用グライダーで先導するから、必然的に寧音はリュウジと組むことになる」


 そうブライトンは嫌気を示す寧音を説得した。リュウジとしては、この猫又という異種族の女性から、最初から毛嫌いされて少々不愉快であった。

 しかし、寧音の毛嫌いは自分の力を信用していないところからきており、それを示せば、幾分、和らぐのではないかと思っていた。


「ちっ……。仕方がないにゃ。後ろに乗るにゃ」


 そう吐き捨てるように命令する寧音。リュウジは大人しく従った。不平を言うためには、実力を見せるしかなかった。


(今はその時ではない……)


 やがて、馬に引っ張られて滑走するグライダーは次々と上空へと離陸していった。上空でゆっくりと旋回すると、ブライトンが操縦するグライダーについて北方向へと進路を取った。

 空を飛べばロックトロールが陣取る森を問題なく突破できる。ただ、目的地についても着陸地点がないから、グライダーを捨てて、パラシュートを使って降りることになる。

 離陸してから1時間ほど経過した。ここまでは順調に進んでいる。風を利用しているグライダーだから、それほどスピードがあるわけではないが、徒歩でいけば2日以上はかかる森林地帯もあと1時間ほどで突破できる。


「団長、北から突風が来る!」


 リリーゼが風の振動を探知し、そう叫んだ。グライダー同士は魔法のアイテムによって、リアルタイムで通信が可能であった。リリーゼのこの忠告に仲間たちは体を硬直させた。

 グライダーは風任せの乗り物だ。風をうまく操り進むが風に煽られれば、バランスを崩して墜落することもある。


「降下する。森の木すれすれに飛ぶぞ。それで突風をやり過ごす!」


 ブライトン機は機首を下げて降下する。2番期のクルーベ機、テルーの3番機も後に続く。だが、寧音が操縦する4番機は僅かに遅れた。

 リリーゼが察知した突風がグライダーに向かって来る。


「ダメにゃ、風に巻き込まれるにゃ~」

「ちっ、まずいぞ、猫姉さん!」


 リュウジは思わず、そう叫んでしまった。今は地上から100m以上上空にいる。そこから落ちれば間違いなく死ぬ。


「誰が猫姉さんにゃ!」


 寧音がそう返した途端、突風がグライダーの翼を浮かせたかと思うと、機体を90度方向へ強引に曲げた。木製の機体が耐えきれず、ミシミシと音を立てて裂ける。


「今、それを言うか!」


 体にかかる横Gに耐えながら、リュウジが叫ぶ。翼がダメージを受けてグライダーの揚力が失われ、機首が下になる。体がふわりと浮くような感覚と共に、落ちて行く。


「貴様に猫姉さんと言われる筋合いはないにゃ!」

「俺より年取ってるのだから、姉さんだろ!」


 墜落の恐怖を打ち消すかのように、大声でののしりあう2人。その間もグライダーはきりもみ状態で墜落する。


「にゃにゃにゃにゃああああっ~」

「うああああああっ~」


 ザザザザーッ。墜落した森は大木密集地帯。まるで手を広げたように緑のクッションが寧音とリュウジと破壊されたグライダーを受け止めた。

 機体は樫の大木の枝に引っかかり、シートベルトで体を支えられた2人は、投げ出されることなく葉っぱの山に埋もれた。豊かな森の恵みのおかげで地面への激突、そして死亡ということにはならなかった。


「どうします団長、森に落ちたようですが……」

「下はロックトロールの巣ですぜ?」


 上空を旋回しながら、そうクルーベとラノンがどうするか団長の判断を仰いだ。ブライトンは、寧音とリュウジのグライダーが壊れながらも、その残骸が木に引っかかっているのを確認して、作戦を続行することを選択した。


「クルーベ、先に進もう。あの2人なら大丈夫だ。危機を脱して脱出するだろう。オロチ退治は俺たちで挑むしかない」

 魔法が使えるネコマタとスカウトしたばかりの優秀な戦士が離脱したが、残った戦力だけでも十分に戦えると、経験豊かなブライトンはそう判断した。

「このまま、直行する。夜明けまであと4時間だ。急ぐぞ」

「了解……」

 

 クルーベはそう返答した。仲間全員の心は一致していた。

 ロックトロールは少数ならば、このパーティのメンバーなら問題なく倒せる。しかし、集団となると別だ。

 だから、王国は軍隊を派遣して殲滅しようとしているのだ。

 新しく加わったリュウジの力量はともかく、寧音の実力は十分に把握しているパーティの仲間たちは、2人の帰還を信じた。ロックトロールの集団の中に落ちたとしても、生還できる可能性はある。


(6時間……あと夜明けまであと6時間だ。ロックトロールが苦手な夜明けまで耐えろ、寧音、リュウジ。そこまで粘れば勝機が見えてくるぞ)


 ブライトンはそう呟き、寧音とリュウジが落ちた森の上空からアデン湖沼地帯へ移動を開始した。

 自分たちに今できること。すぐに任務に戻り、ロックトロールの守護獣であるオロチを倒す。オロチの邪悪な魔力の供給を失った、ロックトロールの能力は大幅に低下する。そうすれば退治している軍隊がロックトロールどもを撃破するだろう。そうなれば、落ちた2人はその混乱に紛れて脱出できるはずだ。


 ブライトンのグライダーを先頭にして、2号機、3号機は後に続いた。


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