嘆きのダンジョン
嘆きのダンジョンと名付けられた場所は、ワミカの町の近郊の森深くで発見された場所だ。
古代の遺跡跡らしく、これまで探索に入った冒険者によって地下4階までは解明されていた。
4階までに発見された宝は大したものがなく、それなのに生息するモンスターが強いということで、冒険者がこのダンジョンの攻略に挑む意欲が失せていた。
それでも冒険者ギルドが依頼しているダンジョンのマップ作りと情報の報酬狙い。さらには出現するモンスターを退治することによる経験を得るために、たまに冒険者がクエストを請け負うのだ。
「これが5階までのマップと出現するモンスターの情報か……」
冒険者ギルド内の建物の中にあてがわれたリュウジの部屋。そこでアオイが持ってきた『嘆きのダンジョン』の資料に目を通すリュウジ。
アオイは資料に目を通すリュウジの傍に立って、彼が質問する事項に対して、分かる範囲で答えていた。
1階は単純な造りで1本通路から2方向に分かれ、1方は行き止まり。片方が2階へと続く。
ここはゴブリンの住処であったが、初期の冒険者たちが全て狩りつくしている。
2階は少々複雑で、罠などもあったが今は全て解除されている。出てくるモンスターは、スケルトンや動く死体等のアンデッド系。
3階も同じような構造でモンスターも弱いアンデッドであるが、ここからは数が多くなる。
ただ、動きは遅いので追い詰められない限りは回避しながら進むことが可能だ。
4階は地下水で足首まで水に覆われたエリア。モンスターはポイズントードや水蛇などの両生類や爬虫類系が出没する。
そして5階。ここは広さから推測すると5分の1程度しか解明されていない。地図もそこまでだ。モンスターはグールを主体としたアンデッド。
死霊の騎士というゴースト系のハイレベルな敵まで出ることが報告されている。
「死霊の騎士……できれば出くわしたくないな」
リュウジはそう言ったが、アオイにはそれが本心ではないような気がした。リュウジは、もっと強い敵を欲しているように思えたのだ。
それでも死霊の騎士はアンデッドモンスターの中でも、かなり手ごわい相手だ。魔法の武器でなければダメージを与えられない。
僧侶や神官の使う聖属性の魔法で退散させるか、魔法使いの使う攻撃呪文で存在自体を消すしかない。
「あと、一応、本部からこのダンジョンの攻略指令が出されていまして、近日中にAランク冒険者のパーティがやってくる予定です」
そうアオイは補足した。冒険者パーティでAランクと言えば、ほぼ最強といっていい。相当な経験と才能、強力な攻撃力を兼ね備えた冒険者たちだ。ランクBでもレアな存在だが、ランクAともなれば国に数えるほどしかいない。
「Aランクか……。できればAランクが攻略した後に調査を行いたいものだが、依頼人は待ってはくれないのだろう?」
「はい、跡継ぎ問題もあって急いでいます」
「まあ、いいだろう。俺はダンジョンを攻略するわけでも、モンスターと戦うわけでもないからな。攻略はランクAの冒険者様に任せよう」
リュウジはそう言って、アオイの持ってきた資料を隅々まで読み込み始めた。こうなると1時間は話しかけてもリュウジは反応しない。アオイはリュウジの様子を黙って見守ることにした。
1時間ほど経過した時に、不意に部屋のドアがノックされた。




