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異世界ぼっち酒 ~クエスト調査官リュウジの事件簿~  作者: 九重七六八
第2話 御曹司のダンジョン転落死事件
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P案件

 その依頼はPと印を付けた書類となって、ワミカ地区冒険者ギルドの統括官アオイのところにやって来た。

 Pとはプライベートの略で、この依頼が冒険者ギルドが主体となって発注されたものではなく、個人の依頼によるものを示している。

 冒険者が死亡した時に、その死亡原因に嫌疑があり、冒険者ギルドとして責任を問われる恐れのある時や、原因をケースとして記録する必要があると認められた時にはリュウジのようなクエスト調査官が派遣される。

 しかし、認められなかったり、そもそも調査する必要が全くなかったりしたときには、ギルド主体の調査は行われない。

 そういう場合に遺族、関係者がギルドに対して調査依頼をする時がある。それがP案件と呼ばれるクエストになる。

 費用は依頼した人間が負担をするから、相当な出費となる。だから、よほどの金持ちじゃないと依頼はしない。


「ちょうど、このギルドにはクエスト調査官が着任しています。すぐに取り掛かれそうですね」


 そうアオイの助手ワカバがそう言った。アオイは頷いたものの、この事件をリュウジが引き受けるかどうかは懐疑的であった。

P案件はクエスト調査官が拒否する権限があり、その場合は中央ギルドで人選されることになる。

 これはP案件が厄介なケースが多いのと、依頼者の支払い能力に問題があるケースもあるためで、クエスト調査官しだいとなる。


「一応、リュウジさんに聞いてみます。依頼内容と関連資料はこれだけですね」


 そうアオイはワカバに確認した。

 ワカバは今年、このギルドに採用された少女だ。

 金髪のショートカットがよく似合う16歳である。活発で物怖じしない性格である。


「アオイ先輩、最近、あのおじさんといつも一緒にいますよね。まさか、アオイ先輩って、おじさん趣味なんですか~?」


 よってこのように先輩のアオイにずけずけとものを言う。

 最も本人は、アオイのことをお姉さんのように思っているらしく、その気さくさがあってのことだろう。他人に対しては、丁寧に礼儀をもって接している。

 アオイもワカバのことを妹のように思っている。年齢は5歳も下であるから、何事も大目に見ているところがある。

 しかし、この質問は聞きようによっては失礼である。アオイはリュウジに対してプロフェッショナルな部分に興味があるだけで、それ以外の感情はない。


「仕事に恋愛感情は持ち込まない。あと私にはおじさん趣味はないわ」

「そうかなあ。先輩、いろんな冒険者さんにお誘い受けても全く取り合わないのに、あのおじさんとはくっついていつも食事していますよね」

「それは仕事のうちです。リュウジさんはこの町が初めてですから、案内しているだけです」

「案内ですか……」


 何だか納得できないという表情のワカバであるが、アオイの仕事に対しての真面目さは普段から知っているので、そんなものかと少しだけ納得した。


「でも、あの人、時折、首から下げた猫の彫り物に話しかけていますよ。ちょっと、変ですよね」


 また、ワカバは失礼なことを言う。アオイは目でワカバを嗜める。確かにリュウジは時折、猫の彫り物と会話しているかのように見つめたり、独り言をしゃべっている時がある。

 それもあの猫の彫り物がリュウジにとって、とても思い入れのある大切なものであるということをアオイは知っているから、変な人とは思わない。


「それではリュウジさんのところへ行きます」

「あ、先輩、私もついて行っていいですか。今後の参考にしたいです」

「……そうね。クエスト調査官と話す機会は滅多にないけど、将来、全く関わらないということはないからね。それにリュウジさんはランクBの冒険者でもあるわ。ランクBの冒険者とはどんな存在か、知ることも大切だわ。ワカバ、同席しなさい」


 アオイはそう言ってワカバの同席を認めた。リュウジはこの時間、トレーニングを終えて、ギルドの事務所で休憩している頃である。



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