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異世界ぼっち酒 ~クエスト調査官リュウジの事件簿~  作者: 九重七六八
第1話 グレイウルフの森全滅事件
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カエンタケ

「毒ですよ……。奴は料理に毒を入れたのです。町で手に入る毒じゃありません。自然毒です」


 ラディはルースの殺害した状況を詳しく話し始めた。


「奴は赤く燃えるようなキノコを採取してきました。私は彼が調理するところを偶然に見てしまったのです」

「カエンタケだな」


 ここでリュウジが口を開いた。先ほどから、ラディのことを冷ややかに見ていただけであったから、この一言はナイフのような切れ味があった。

ラディは一瞬だけ、怯えたような視線をリュウジに向けたが、すぐに視線を変えて話を続ける。


「私も知らないキノコです。色はヤバいですが、煮たら目立たなくなりました。それをゴードンとブルーノが食べたのです」


カエンタケは猛毒のキノコだ。毒性は非常に強い。

 食べると30分後に発熱、嘔吐、悪寒、下痢、腹痛でのたうち回り、最後は運動障害まで起こして死に至るという危険なキノコだ。

 ちなみに触っただけでも危険なのだ。


「毒にやられて、のたうち回るっている2人の戦士の首を掻き切って殺したというわけか……」

「はい……ギルド長様」

「魔法使いの女はなぜ殺されたのだ?」

「戦士二人が殺されるのを見て、彼女はパニックになってしまったのです。それで自分のこれまでの行状をしゃべってしまった」

「なるほど。2人の戦士を殺して、興奮気味のところへ女からの裏切りの告白。そのまま、逆上して殺してしまってもおかしくはないだろう……」


 そう結論付けるタンゾウにラディはゆっくりと同意の相槌を打った。

 屈強な冒険者でも猛毒のカエンタケを食べては、体は動かせず、一方的に殺されるしかないだろう。

 カエンタケは珍しいキノコであるから、ベテランの冒険者であっても知らないこともある。しかし、レンジャーなら知っていておかしくない。

 例え、キノコに詳しいベテラン冒険者でも鍋に入れられてしまえば、分からない。特に仲間のレンジャーから普通に勧められれば食べてしまうだろう。

 一口でも飲み込んでしまえば、毒にやられて身動きできなくなる。屈強の戦士も攻撃魔法の達人の魔法使いも軽く殺せてしまう。

 クエスト調査官のリュウジの活躍で、鍋からもキノコらしき残骸が発見されているし、殺された3人も穴から見つかっている。

 証拠を照らしてもラディの証言を裏付けており、おかしな点はない。どうやら、犯人はレンジャーのルース。動機は男女関係のもつれからの殺人ということだろう。


「リュウジ殿の調査でも、今の話は信ぴょう性がある。この事件はこれで終了でしょうね」


 タンゾウはリュウジを見てそう締めくくった。


「ククク……。支配人。それではこの事件の真相の50%しか解明されていませんよ」


 リュウジがそう言った。そして返す刀でラディに問いかけた。その言葉は辛辣であった。


「あんたさあ……。そもそもレンジャーの暴走をどう逃れたのだ?」

「逃れたって……そりゃ、襲われた時は必死で逃げましたよ。砦を出て、沢の方へ。そこで隠れていたのです」

「なるほど。あんたは毒キノコ入りの飯を食べなかったというわけだ。自分の女である魔法使いには食わせなくても、あんたには食わせない義理はない。なぜ、あんたは毒殺を免れたのだ?」


 リュウジに問い詰められて、ラディは少し慌てたように先ほど自分が言ったことを訂正した。


「いや、私も少し食べたのです。ですが、私にはアンチポイズンの魔法がありましたから……」

「なるほど。自分は魔法で難を逃れたと……。くくく……。実に都合がいい話だよな。確かにあんたは冒険者殺しには直接関わっていない。だが……」

「ど、どういうことですか?」


 話の急展開にここまで黙って聞いていたアオイが口をはさんだ。見つかった遺体の状態から、レンジャーの犯行は裏付けられている。

 だが、先ほどから真の犯人は別にいるとリュウジは言い放ち、その新犯人とばかりにヒーラーの男を尋問しているのだ。


「この男がそそのかして、レンジャーに殺人を実行させたと言っているのだよ」

「な、なにを馬鹿な!」


 リュウジの言葉にラディは目を剥いて激高した。その剣幕にアオイは違和感を覚えた。人の良さそうな感じの中年男が豹変したのだ。


「まず1つ目。ルースがお前を殺害しなかった理由。お前は奴と仲間だったからじゃないのか?」

「そ、そんなわけがない。私は殺しに来るルースから何とか逃げたのです」

「ほう……では、2つ目。お前はあのグレイウルフが闊歩する森からどうやって脱出できたのだ?」

「それはたまたま遭遇せず、何とか街道に出ることができたからです」

 

 このラディの言葉は欺瞞に満ちているとアオイも感じた。よく観察すれば、現在のボロボロのように見えるラディの格好も、どことなく嘘に満ちているように感じる。


「嘘だな……」


 リュウジの言葉は強かった。短い言葉であるが、有無を言わせない迫力がある。ラディは思わず黙った。

 リュウジはさらさらとメモを書くと、ギルド職員に渡した。渡された職員は頷くと部屋を出て行く。


「仲間のお前をルースは殺さないだろうが、一緒に行動すればグレイウルフに殺される。そこでお前はルースの目を盗んで沢へ潜伏した。あそこなら、臭いを消せてグレイウルフの目をくらますことができる。2日間耐えれば、救出部隊が来る。そうすれば見事に生還することになる」

「でも、リュウジ殿。彼は救出部隊に救出されたわけじゃないのですが」

「そ、そうだ……。私は救出部隊に助けられたわけじゃない」


 タンゾウの質問とそれに追従するラディの言い訳。

 リュウジはニヤリと笑った。


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