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異世界ぼっち酒 ~クエスト調査官リュウジの事件簿~  作者: 九重七六八
第1話 グレイウルフの森全滅事件
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とある冒険者たちの記録 その1

「紹介しておこう。今日から我がパーティに加わるヒーラーのラディさんだ」


 そう無骨な戦士は小柄な男を紹介した。彼はゴードン。パーティ名『カルバドス』のリーダーである。36歳のベテランである。

 武器はバトルアックス。身長188センチもあるゴードンしか扱えない巨大なものだ。

 テーブルには3人の仲間がいる。一人は鉄製の胸当てを付けた戦士。武器はテーブルに立てかけたブロードソード。名前はブルーノ。28歳の青年だ。短く手入れした顎髭が印象的である。

 その横には大きなウィザード帽子を被った女性。名前はフラン。年は25歳。妖艶な雰囲気を漂わせている。魔法使いローブに隠れて体は見えないが、なかなかのプロポーションである。

 その横に座っているのが、革製の胸当てを付けた軽装の青年。武器は弓とナイフ。レンジャーのルースである。年齢は24歳。

 ゴードンに紹介されたラディは、帽子を取って挨拶をする。ヒーラーらしく、純白のローブに純銀のチェインメイルを身に付けている。腰に装着したポーチには、いくつかの回復系ポーションがストックしてある。

 年齢は30代後半というところであろうか、人の良さそうな雰囲気を漂わす風貌である。


「ラディさんは、以前はどこかのパーティで冒険を?」


 ひどく当たり前の質問をしたのはルース。ラディの年齢を考えれば、どう見てもベテランの域であり、どこかのパーティに所属していたことは容易に予想できる。


「はい……実は」


 ラディは浮かべていた笑顔を封印し、険しい顔つきになった。その表情の変化に聞いていた3人の顔が神妙なものに変わる。

 ラディは説明をした。ラディ自身は年齢は高いが、ヒーラーを目指した年齢が遅く、冒険者としての経験は5年もない。

だから、使える回復魔法は少ない。そんなラディが参加した以前のパーティは、経験豊かな冒険者を中心としたもので、ギルドでも名前が知られたところであった。

 ところが、先日、クエストに失敗し、全滅してしまったのだという。ラディは幸い、レベルが低いということで、途中のキャンプ地に置いていかれ、全滅した戦闘の場にいなかったのだという。


「そうですか……それはお気の毒に……」


 ルースはそう言ったが、実のところ内心はあまり気の毒とは思っていない。冒険者たるもの、常に危険と隣り合わせの仕事なのだ。

 全滅したということは、酷な言い方であるが、実力がなかっただけということだ。


「今回のグレイウルフのクエスト、どうしてもヒーラーの力が必要なのだ。ギルドに要望していたら、偶然にも仲間を失ったラディさんが見つかったと言うわけだ」


 ゴードンはそう自慢げに続けた。新しい仲間の紹介も終わり、次は明日から挑戦するクエストについての作戦会議である。


「このクエスト、すでに3つのパーティが失敗している」


 ゴードンはそう説明し始めた。グレイウルフは確かに戦闘力の高い生物であるが、1対1なら武器をもった冒険者の方が強い。

 しかし、群れともなると人間の戦闘力を凌駕することになる。こういう場合は、攻撃魔法とのコンボで倒すことになる。


「私のスリープの魔法で眠らせれば、一網打尽ではなくて?」


 そう魔法使いのフランが進言する。スリープクラウドは動物系のモンスターには有効である。これをかけられたら激しい睡魔に逆らえず、そのまま意識を失ったように寝てしまう。

 寝てしまったグレイウルフを一匹ずつ、殺していけばいいのだ。しかし、これまでの冒険者にも魔法使いはいた。同様の作戦は実行しているはずだ。


「やつらのリーダー、ロボはそういう魔法を無効化する、リーダーの『雄叫び』なる技を使う」

「雄叫び?」

「それは鳴き声だろ。そんなものに魔法効果があるのかよ」

「リーダー級になるとそういう特殊能力があると聞いたことがあるわ」


 ブルーノ、ルース、フランがそんなことを言う。新しく加わったヒーラーのラディは、ニコニコしながらメンバーの話し合いを聞いているだけだ。


「これまでのパーティは、森で遭遇したグレイウルフとまともに戦って敗れたのだ」


 そう言ってリーダーのゴードンは、ギルドの戦闘レポートを示した。これまで失敗したパーティは、魔法攻撃を過信して森の中でまともに戦ったらしい。

 グレイウルフがただの獣で、力押ししかしないモンスターであったのなら、これでよかったかもしれない。

 しかし、強力なリーダーであるロボを中心とした組織化された群れは、そんな単純な攻撃をさせるほど甘くはなかった。

 いつの間にか、包囲された冒険者たちは、一斉に襲い掛かられてしまった。素早い動きで攻撃してくるグレイウルフの集団は、大変な脅威になる。


「そこで俺はこういう作戦を考えた」


 ゴードンは森の地図を示した。入り口から北へ向かったところの印が付いている。


「ここは岩で行き止まりのようだが?」


 そうブルーノが尋ねる。ゴードンはそれに頷いた。そして説明を続ける。


「ここは3方を囲まれた要害の地。ここを要塞化してグレイウルフを迎え撃つ」

「なるほど……ゴードンと俺が前線に立ち、フランが魔法で後方から援護。崖上からルースが弓で撃つ」

「怪我をしても新しく加入したラディさんが回復に徹するということね」


 ブルーノと魔法使いのフランがそう補足する。この作戦ならうまく行きそうだ。問題は要塞までグレイウルフに襲われないようにたどり着けるかということと、そこにどうおびき寄せるかということ。


「雨が降った後に行けば、臭いで嗅ぎつけられない」

「なるほど……」


 ゴードンの意見に一同は頷く。おびき寄せは問題ないだろう。森の主を気取るグレイウルフは、冒険者パーティを見逃すはずがない。


「それでしたら、準備万端にして時を待つということですかな。何はともあれ、本日からよろしくお願いします」


 そう新しく加わったラディがそう締めくくった。

 今は雨が少ない時期なので、しばらく待つという結論になる。


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