番外編11 数字で遊ぶ日常①
Side レオン・カール
とある放課後、シェーラとカティアが第一クラスの黒板に図や数式を書きながら唸っている。この前出された、算術の授業の課題を考えているようだ。
「ねぇレオン君、教えてあげないの?」
俺の隣で『建築学』の本を読むユウが聞いてくる。ちらりとユウの手元を見てみると、人族、小人族など様々な種族に適した建築の寸法について表を作っているようだ。
「算術は一度自分の頭を使って考えるのが何より大事だ。問題の答えを見るだけでは解けるようにはならない」
「ふーん、彼女が困っているのに?」
「それをいったらユウもだろう」
「まあね。でもボクは算術の授業をとってないから」
昨年末のパーティーで俺達4人はそれぞれ交際することになった。こうして4人で集まる時間は今まで通りに見える。しかしきっとユウとカティアも2人だけの時間を過ごすことが増えただろう。俺はというと学会に行ってから研究により熱中するようになって、年をまたいでもその熱は一向に冷めない。シェーラは俺が研究する自室に勝手に入って来て何かしているようだから、2人の時間が増えたといえば増えたことになるのだろうか。ただ同じ部屋にいるだけを2人の時間と呼んでよいかは怪しいところでもある。
「んー、たぶん分かったのです。つまり、この直線を上にずらしていってこっちの正方形に最初にぶつかった時の切片が最小値になるのです、たぶん」
「え、なんでよ。さっぱりだわ」
「ええとだから…。むー、どう説明すればいいか分からないのです…うまく言えないけど、ここがこうなって…」
カティアがグラフにいくつも直線を書き入れてなんとか説明しようとするが、なかなか要領を得ないようで、シェーラは合点がいかない。
「あれ?話しているうちにカティアもだんだん分からなくなってきたのです!困ったのです」
「うん、一回休憩しましょう。ずっと立っているのも疲れたわ」
「ボクたちも一回休憩しよっか」
「そうだな」
シェーラとカティアが休憩を始めたのを見て俺達も休憩に突入する。するとユウが何やら嬉しそうにノートを一枚ちぎって問題を出してくる。
「ボクから3人にもんだーい。4つの9と+、ー、×、÷、()で10を作ってみよ!」
おお、懐かしきテンパズルか。4つの数字と四則演算、かっこの組み合わせで10を作るという遊びで、日本でも車のナンバープレートを見て挑戦したりと、かなり有名だった。この世界では車もナンバープレートも存在しないが、同じ遊びが開発されるものなのだなあと密かに思う。
「思ったより難しそうね」
「たぶん割り算を使わないと出来ないのです」
「ねぇ、レオン君はどう?」
「…全然できない」
「むふー。みんな出来ないんだー」
俺達が苦戦しているとユウがニタニタと笑みを浮かべる、が、俺達の視線は目の前の紙を完全に捉えているのでその顔は誰にも見られない。
そして全然解けない。別の数字で10を作るパズルなら何回かやったことあるし、割とすんなり解けた記憶があるのに、いざという時になかなか閃きが来ないのだ。
算術、数学が好きだとこれだけ自称している手前、シェーラとカティアには負けたくないと思ってしまう。別に負けた所で何もないのは少し考えれば分かるというのに、今この瞬間だけは燃え滾る対抗心が抑えられない。
誰が最初に答えにたどり着くか、極限まで集中して思考を加速させる。勝者は誰か。
「出来た!」
「見つけたのです!」
「出来たわ」
3人ほぼ同時に顔をあげる。そしてお互いの顔を見て自然と笑う。せーのの掛け声もなしにピッタリ声をそろえて答えを読み上げる
「「「(9×9+9)÷9」」」
「スッキリしたわね。3つの9で90を作るっていう発想から出来たわ」
「難しかったのです」
これは誰の勝ちとかないな。みんなで挑戦してみんな成功する。それでいいじゃないか。しいて言えばユウの負けってことにしておこう。
「わぁ、みんな思ったより早いね。ボク30分くらいかかったよ。これは本に載ってた問題なんだけど、かなり難問って書いてあったよ」
「なるほどな。俺もう1問知ってるぞ、一番難しいやつ。確か3、4、7、8」
「あ!それ本に載ってた!答えが書いてなくて諦めたんだよねぇ」
「よし、やるのです」
「やるわよ」
「俺はうっすらこんな感じだったかなぁというのは記憶にあるからすぐ作れると思う」
「レオ、見つけても私達に教えたりしないでね」
「ネタバレ禁止なのです」
「分かってる」
シェーラとカティアはまた集中しだした。さすがだな、お前ら…。その熱中度合いに関心する。
「ボクはもう諦めてるから、見つけたらすぐ教えてよ。もやもやするんだよね」
お前は…。
3,4,7,8は答えが一通りしかなく、最も難しいらしいです。答えは…一応ネタバレを考慮してずっと下に書きます。気になる方はスクロールしてください。
答え:(3-7÷4)×8
筆者は小学生時代に友人に出題されて解けませんでした。




