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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
5章 天才数学者、研究する
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79 数学者、パーティーに参加する⑥


Side レオン・カール


 パーティーが終わる。ユウとカティアを祝ったり、余興の大道芸を楽しんだり、上級生の第一クラスの先輩から有意義な話を聞いたりと、全体的に満足する内容だった。

 話すことが出来たのは基本的に貴族の娘ばかりで、どれも同じ人に見えてしまった。ちょうど、おじいさんがアイドルグループのメンバーを見分けられないように。そして1つ気づいたのだ。結婚相手を探すと言っても、こちらに要望、判断基準がなかったのだ。それではただ女性と会話して終わりになってしまうのも当然である。自分はどのような人と結婚すべきか考えたことがなかったのだ。だからこそ、どの女性も等しく埋もれてしまうのだ。


「マリーさんに怒られないかなぁ」


 年功序列の概念があるようで、上級生から優先的に会場を後にする。パーティーの終わりを告げられ、1人で、またはカップルで帰る人達を見ながらぼやく。満足はしたが、成功はしなかった。自分が結婚について全く真剣になれていないのが問題だった。


「どうしたのです?」


 浮かない顔をする俺をカティアが心配する。カティアはある意味、このパーティーで大成功を収めた。意中の人と結ばれたのである。

 しかしカティアもユウも、結局いつも通り過ごせばいいのでは、という結論になったのだ。俺たち4人は特に何も変わらない。ちょっとだけ、ユウとカティアの2人だけの時間が増えるかもしれないが。


「いや、何でもないさ。さぁ、俺達も帰ろうぜ」

「ええ、帰りましょうか」

「やっとボクたちも帰れるんだね」


 上級生が出ていくのを待たなければならなかったし、ホールの扉の近くのテーブルに座っていたのに、退場する人の列の伸びる方向が逆だったため、ほぼ最後に退場することになってしまった。


「ユウ、一緒に行くのです」

「…うん、そうだね」


 どちらからとも無く手を繋ぎ、揃って顔を赤くする2人。実際はカティアの方が若干積極性を見せているようだ。


「微笑ましいわね」

「そうだな」


 俺達は若干ぎこちない2人の後ろを追ってホールを出た。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 校門を出ていつもの道を歩く。ユウとカティアが手を繋いでいること以外、いつもと何も変わらない。


「どの料理もおいしかったよね。ボクは最後のスポンジケーキが一番好きかなぁ」

「カティアもケーキが一番なのです」

「飲み物もかなり良かったわね」


 少し夜遅いが、今夜はいつも以上に王都内の警備が厳重にされているらしい。魔法学校に通う、将来を牽引していく子供たちに何かあってはならないのだ。


「寄り道せずに、気を付けて帰るんだよ~」


 武器を携えた警備兵が優しく声をかけてくれた。これなら保護者も安心だ。まぁ、もともと王都の治安は非常に安定しているらしいのだが。


 いつもの曲がり角でユウ達と別れる。そういえば、下校時にユウとカティアは毎日ここで俺たちと別れた後2人きりになっていたのか、と改めて気づいた。それで仲が進展したのだろう。


 商店街はひっそりとしている。等間隔に並ぶ街頭が影を作る。遠くから大声で楽しそうに笑う声が聞こえる。


「…ごめんなさい」


 シェーラが静かに言う。


「どうしたの?」


 おおよそ検討はついているが、聞く。十中八九、ランプ先生との会話の話だろう。


「パーティーでランプ先生がおっしゃったこと。レオを人避けに利用しているんじゃないかってこと」

「…うん」

「レオは大切な人で、損得勘定とは切り離されたものだと思っているの。でも、先生に言われると、心の中で否定できない自分がいることに気づいて。やっぱり、薄々分かっていたの」

「…うん」

「それに、仮に私にそういうつもりが無くても、結果的にレオを…その、利用するような形になってしまっているんだって、そう気づいたの。だからね…」


「ごめんなさい」


 隣で申し訳なさそうにややうつむくシェーラ。彼女からこのように改まって謝罪されるのは初めてで、どうしたらよいか分からず戸惑う。

 俺が何も言わないでいると、シェーラはさらに続ける。


「それとランプ先生は、もう少し1人でいろいろ対処出来るようになれとも。結局、私がまだ未熟なのが問題なんだって思ったの」


 これはその通りだと思っていた。なぜランプ先生に指摘されたかと言えば、それは弱さだと。強い魔法が出せるとか、そういう物理的な強さでなく、精神的な話だ。エルフという珍しさに寄せる目線、言葉、絡んでくる人を恐れている部分が抜け切れていないのは見て分かっていた。


「思えば、昔に第二クラスの人に『エルフのくせに』と言われたときも、下校の道が分からなくて迷ったときも、1人で解決出来なかった。何かあったら全部レオが助けてくれた」

「…うん」


 数学をやっていると、こういう場面でつい癖で『正確には全部ではない』とか心の中で思ってしまうが、それをここで言うのは野暮だろう。


「それでレオが何とかしてくれるのに甘えて、私はいつまで経っても弱いままなんだって…。自分が情けないの」


 シェーラの声が少しずつか細くなっていく。


「レオみたいに強くなりたい。レオみたいに人目を気にせず堂々としていたい。レオに…」


 青い水晶の瞳から涙がこぼれる。


「レオに、嫌われたくないの」


 俺を人避けのために利用していたから、俺がシェーラを嫌う?弱くて助けられてばかりいると、嫌われる?それが嫌で彼女は今泣いているのか?

 混乱する俺を待たずに、シェーラは続ける。


「レオが好きなの。ずっと一緒にいたいの」



前日、23時まで用事があって、日付が変わるまでに書くのは無理と判断して、1日お休みさせて頂きました。申し訳ありません

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