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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
5章 天才数学者、研究する
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76 数学者、パーティーに参加する③


Side レオン・カール


「え、あの『天才コンビ』がいるの!?」


 誰かがそう口にした途端、続々と人が俺たちのテーブルに集まってくる。俺のもとには主に女子生徒が、シェーラには男子生徒がやってきて話しかけられるが、この学校の男女比も例にもれず4:6で女子が多いため、シェーラに集まる男子の方が少ない。

 二年生、三年生が多そうなので、とにかく丁寧な口調で応対しているが、一向に人の波は途切れず、皿の料理が冷えてしまう。パスタソースが固まり始めていることに気づきながらも、先輩から話しかけられている手前、それをどうすることもできない。


「私は○○領の三女で…」

「実家は●●領に拠点を置く大商会の…」

「両親は王国の騎士団の…」


 何人かと話していて気づいたが、品のある衣装を着た人が多く、貴族であったり、平民であっても大商会の娘だったりと、それなりの社会的地位のある人(の子供)ばかりだ。俺が貴族であることが知られているからか、普通の平民にあたる人は俺のもとにやってこないようだ。遠目には平民と思われる装いの人も確認できるが、遠慮しているのだろう。それが良いことか悪いことかは分からないが。

 貴族社会では自分の身分、称号をはっきりと示すことが常識というか、おきまりであることは分かるが、これだけ様々な自己紹介を聞いていると、もはや全てが際立ちすぎてどれも印象に残らない。ただ漠然と『なんだか立派そうな人』という印象だけが残る。2つ前に会話した人の名前すら憶えていない。

 この学校は王立であるため、校内において種族や身分によって不利益が被るようなことはあってはならないとされているが、実態として貴族は貴族としか会話しないことがほとんどである。それは決して平民を下に見ているからなどではなく、単に興味がない、話す必要がないからである。貴族の知り合いがいるのにわざわざ平民の知らない人に話しかけようとは思わないのだ。

 社会的には平民の上に貴族がある構図だから、たとえ学校が公に公平だと宣言しても、平民にとって貴族に話しかけることがなんの気兼ねもなく出来るかというとそうとも限らない。こういうパーティーの場では身にまとう衣服やアクセサリーで、どうしてもその人の身分をある程度推し量れてしまう。相手の衣装を見て、話しかけて良いかどうかを考える人もいるのだ。


「シェーラさん、あなたはなんてお美しいのだ。このドレスも大変よくお似合いです」

「ありがとうございます」


 シェーラに話しかける男子生徒はたいていエルフであることの珍しさ、そしてひいき目に見ても綺麗な容姿を一目間近で見たい、という目的を持っているのだろう。対して彼女はそういう言葉に対し、慣れた様子で礼を述べる。


「あれ、いつの間にかいなくなってる」

「…?レオンさん、どうされましたか?」

「あ、いや、失礼、一緒にいた知人が席を外していることに気づきまして」


 ユウとカティアがいつの間にかどこかに消えていた。俺とシェーラを求めてやってくる人に追いやられてしまったのかもしれない。何も言葉をかけられずに別れてしまったことに対して申し訳なさを覚える。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 どれほど時間が経っただろうか。ついに俺とシェーラの元から人は消え、テーブルの上には完全に固まってしまったパスタが残った。


「レオ、お疲れ様。パーティーでこうして絶え間なく話しかけられるのって初めてでしょう?」

「お疲れ様。シェーラは割と慣れた様子だったね」

「ええ。小さい頃から何回かお父様に連れられて本物の貴族のパーティーに参加していたからね。あっちよりはまだ歳も近くて話しやすいわ」

「そういうもんなのか。そういや、ユウとカティアはどこに行った?」

「分からないわ。2人とも気づいたらいなくなってたもの。探しに行く?」

「そうだね…この皿とグラスはどうすればいいの?」

「放っておけば誰かが片付けてくれるわよ。戻ってきたらまた新しいものをもらえばいいのよ」


 見渡すも2人の影はないので、大ホールを後にする。重厚な扉を閉じると、ホール内の喧騒が大幅にカットされて静かになる。ホールの外を歩いていると、外にいるのは決して俺たちだけではないことに気づく。バルコニーに出て親密に話す男女が見えた。


「ホールの外で話している人もそこそこいるんだね」

「そうね。静かな方が好きな人もいるでしょうからね」


 俺たちも目立たないよう静かに話す。


「見取り図があるわ」

「どれどれ…二階があるのか」

「行ってみましょ」


 二階に上がり、ホール内を見下ろしながら歩いていると、急に前を行くシェーラが立ち止まる。よそ見をしていた俺はぎりぎりシェーラにぶつからずに何とか立ち止まることに成功した。滑らかな髪からほのかに柑橘系の香りがした。


「しっ。…レオ、あれ…」

「ん?……なっ」


 大きな声が出そうになるのを抑える。シェーラが示す先、バルコニーにユウとカティアがいた。


 カティアがユウに口づけていた。


他人の恋愛話ってなんだかんだ聞くの楽しいですよね。

明日は更新をお休みさせていただきます。

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