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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
5章 天才数学者、研究する
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74 数学者、パーティーに参加する①


Side レオン・カール


 定期考査。これはどの世界の学校にも存在する、全生徒が恐れるイベントである。普段から勉強する習慣を身に着けていない生徒程、この期間に焦りながら集中的に勉強することになる。定期考査直前になってから普段から勉強すべきであったことを悔やむが、ひとたび定期考査が終わればその後悔もさっぱり忘れ、次の定期考査でまた同じ過ちを繰り返すのだ。

 そんな定期考査はつつがなく終了した。俺もシェーラも入学時の成績を維持している。定期考査についてこれ以上言うべきことはないだろう。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 定期考査が終わるとあっという間に冬休みになる。冬休み前には学会以外にも大きなイベントがある。それが魔法学校主催のパーティーだ。クラスメイト以外との交流関係を築くのに絶好の場であり、交際相手、結婚相手を探す場でもある。参加は任意だが、俺はマリーさんが出た方が良いと言うので参加するのだ。ただでおいしい料理がたらふく食べられることもあり、ほぼ全員の生徒が参加する。

 服装についてはある程度きちんとした身なりであることが暗黙の了解となっている。俺は当然どういう服装なら良いかの境界線を知らないので、マリーさんに全部なんとかしてもらう。


「着てみたけど…」


 マリーさんの差し出す服をまとってみたが、屋敷にいた頃、来客の時だけこういう服を着ていたことを思い出した。


「失礼します…はい。これで完璧ですね」


 マリーさんが俺の横に回って袖や裾を正す。残念ながらパーティーは生徒、教職員しか参加出来ないのでマリーさんは留守番だ。正直一緒に参加できたらこれ以上なく心強かったのだが。


「じゃあ、もう行くね」

「レオさま、くれぐれも気を付けてくださいね」

「分かってるって」


 先ほどからしつこいほどパーティーでの振る舞いについて細かく注意を受けた。部屋の移動や女性との会話で避けるべきフレーズなど、とりわけ()()()()()()()()()()()()()について長々とレクチャーを受けた。魔法大会であれだけ目立ったこともあるから大変なことになるだろうとマリーさんが言っていた。なぜか普段の学校内でそういう場面にあまり出くわさないから、多くの女性から話しかけられるのが全く想像できないのだが。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 寮の玄関でシェーラと待ち合わせている。貴族でない生徒に合わせるため、普段から学校に馬車で来ることを禁止している。こういう特別な日だけは解禁してもいいと思うのだが。そんなことを考えながら玄関に向かうと、既にシェーラがいた。

 白を基調とし、所々に淡い水色のリボンや装飾があしらわれたドレス。滑らかできらめく金髪。コバルトブルーの大きな瞳。エルフのお嬢様を体現したかのような装いだ。実際にお嬢様なのだが。


「あら、レオもそういう服装を着れるのね」

「服選びは全てマリーさんに任せた」

「だろうと思ったわよ。あなた、いつもごく普通の服しか着ていないもの」

「服と算術には何の相関もないからね」

「ふふ、そうね。でも意外と似合っているわよ」


 お嬢様からお褒めの言葉を頂いた。こういう時は褒め返すのが礼儀だろう。


「シェーラもとっても似合っているよ。綺麗だ」

「…ありが、と」

「じゃあ行くか」


 褒め返すミッションを達成したのでさっさと会場へ向かおう。既に外は日が沈んで暗くなっているのでシェーラの表情は窺えない。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 校門でユウ、カティアと合流し、4人で会場に入る。研究棟のさらに隣に会食用の館があるのだ。俺たちは今日初めて足を踏み入れる。


「広っ…天井たかっ!」


 ユウがまず驚きの声を上げる。屋内運動場よりも高い。見上げた天井からは今まで見た中で最も大きいシャンデリアが下がっている。


「料理の量もすごいのです」


 豪華なテーブルに並べられた数々の料理。ビュッフェ形式で各自とっていく立食パーティーなのだろう。屋敷にいた頃でもここまでの量が一度に並んだ光景は見たことが無い。何百人分なのだろうか。

 同じクラスの人達が集まっているのを発見したので、まずはそちらに合流してから何人かと世間話をする。誰も食事に手を付けていないので、何らかのタイミングを待っているのだろう。

 そんなことを考えていると、正面のステージに校長先生が現れた。短いスピーチを話し、パーティーの開始が告げられた。


「…もうご飯をとってきていいってこと?」

「そうよ」

「レオン君はよほどお腹がすいているの?さっきも同じこと聞いていたし」

「いや、それほどじゃないんだけどね」


 いよいよ料理が食べられる…と思ったのだが、テーブルに大量の生徒が殺到するのが目に入る。俺たちは一旦待つことにした。


「いまこの会場に何人いるのかしら」

「たぶん300人くらいなのです?各学年だいたい100人足らずで、それに先生が足されるのです」


 カティアがまっとうな推理をする。そうか、300人もこの建物内にいるのか…


「ね、このホールも当然だけど、外の通路とかもとても豪華な内装だったよね。後でちょっと探検してみない?」

「ユウ、いいわね」


 ユウとシェーラは料理より装飾のようだ。


「今日ってこのホールでただ食べて喋って終わりなのか?」


 俺はここで具体的に何をするか、マリーさんからも詳しく聞いていないのだ。


「確か、途中で一年生だけで集まったり、各学年の第一クラスだけで集まるんだよね」

「そうなのです。第一クラスの先輩とお話できる貴重な機会なのです」

「そうなのか。あ、そろそろすいてきたから料理を取りに行こうか」

「そうね。行きましょ」


 こうして俺たちのパーティーが始まった。


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