表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
5章 天才数学者、研究する
80/168

71 数学者、問答する②


Side レオン・カール


 寮に帰ってから、マリーさんにも同じ問題を出してみた。立ったまま顎に指をあてて考えるマリーさん。頭の上の猫耳がぴんと立ち、しっぽはゆっくりと左右に揺れる。


「そうですね…○○、ということですか?」

「お、正解」


 マリーさんはすぐに答えにたどり着いた。正解して嬉しそうなのがしっぽを見て分かる。


「正解できて良かったです。そうでなかったらレオさまのメイド失格でした」

「いや、それくらいで失格にしないよ。いつも感謝しているしね」

「勿体なきお言葉。ありがとうございます」


 マリーさんがスカートの裾をつまんで一礼する。何度みても所作が滑らかで美しい。


「難しい問題ですね。本来、自分の色とは関係ないはずの相手の色がここまで重要な役割を果たすのに驚きです」


 まさにその通りだ。




 翌朝、ランプ先生が来る前に答え合わせの時間がやってきた。


「カティア、答え分かった?」

「分かったのです。シェーラは?」

「ばっちりよ。レオと答え合わせまでしたからね」

「ボクも分かったよ」


 どうやら全員分かったようだ。シェーラが正解していることは登校中に答え合わせ済みだ。カティアの方が信頼できるから、ユウから答えを聞いてみるか。


「じゃあユウ、答えを教えて」

「えーとね、2人のうち片方は相手の色と同じ色を言って、もう片方は相手と違う色を言う」

「カティアも同じなのです」

「うん、2人とも正解」

「わーい、から揚げー」

「やったのです」


 カティアもユウも正解して嬉しさを全身で表している。


「なんでその方法でうまく行くか説明できる?」

「2人の被る帽子の色は赤赤、赤白、白赤、白白の4通りあるのです。そのどれが来ても片方は正解できることを確かめてみればいいのです」

「そうだね。ちなみに、赤赤でうまくいくことが確かめられたらほぼ自動的に白白でもうまくいくと断言できるよね。同じように赤白で出来るなら白赤も問題ないといえる」

「そうね」

「じゃあ赤赤でうまくいくかやってみるか。赤赤だと…相手の色と同じ色を言う側が正解できるね」

「赤白だと、相手の色の反対を言う側が正解するのです」

「そうだね」

「で、いつから揚げが食べられるの?」


 ユウが待ちきれないといった様子で聞いてくる。当然昨日のうちにマリーさんに頼み、持って来ているが、今取り出すのは違うだろう。


「昼に食堂でご飯を食べる時にしようか」

「分かった。はやくお昼にならないかなぁ」

「昼が待ち遠しいわね」

「楽しみなのです」


ガラララ…


 ランプ先生が教室に入ってくることで、俺たちも自然と席に着く。昼までお預けだ。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 から揚げパーティを楽しんだ放課後、余ったから揚げを持ってペアノ先生の元へ訪れる。今日も数学の議論のためだ。


「相変わらず、レオン君の発想はやや突飛なものが多いですね」


 から揚げを食べ、飲み物を飲んだペアノ先生がそう言った。確かに、地球ではるかに発展している分野の結果から天下り的に見つけた定理が多いので、ガイアの人からしたら不思議なのだろう。


「研究というのは基本的にそれまでに分かっていることのその少し先しか見えないものです。これまでの大定理も全て突然出来たものではなく、研究しているうちにだんだんと法則が明らかになり、最後に誰かが美しい形にまとめ上げただけ、というのが普通です」

「なるほど」

「君が今まで提示した主張のいくつかは、どう思いついたのか、が理解しがたいものが多いです。全く考えられないような主張なのに、確かに成り立つ」


 地球の数学を知っている身としてはそこまで突飛なことをしている自覚はないのだが。


「ここまで不思議な発想をしていると、異なる世界の学問に触れている気分になりますよ、はは」

「…っ!」


 一瞬、どきりとした。ペアノ先生は半分冗談のつもりで言ったようだが、鋭く当ててきたのだ。これが最先端の学者の勘なのだろうか。


「で、ですね、今までこの部屋で議論してきた内容を、一度きちんとまとめて発表してみませんか」

「そ、それはつまり」

「年明け、うちの学校に王都の全魔法学校の算術教授が集まる学会が開かれる予定なのです、そこで発表してみませんか」

「やります!」


 即答した。ガイアで算術を究める人として認められる、初めての機会なのだ。これを逃さない手はない。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


「学会ですか?」


 その日の夜、マリーさんと残ったから揚げを食べながら雑談する。マリーさんがから揚げを口に運ぶたびに耳がぴんと立つ。


「そう。これまでの研究の結果をまとめて発表しないか、とペアノ先生に提案していただいてね」

「なるほど。ついにレオさまの叡智がこの世界を揺るがすことになるのですね」

「…いや、そこまで大それたことじゃないと思うけど」


 マリーさんは俺のこととなるとちょっとおおげさに考えがちな傾向がある。だが目を輝かせるマリーさんを見ると、強く否定することもできないのだ。


2020/06/18 0:32更新 第79部分「70 数学者、問答する①」から5章になるよう章を設定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ