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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
5章 天才数学者、研究する
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70 数学者、問答する①

昨日更新出来なかったので、特例として水曜日の今日、更新しました。


Side レオン・カール


 夏休みが終わり、授業を受ける日常が再開した。時折算術の先生であるペアノ先生の研究室へ訪れて議論を交わすようにもなった。また、シェーラ、ユウ、カティアと4人で放課後に教室に残って勉強を教えあったり、雑談したりするようになった。大きな黒板を自由に使えるので他のクラスメイトも絵を描いたり遊びに活用することもある。


「昨日、下校中に変な物を見たのです」


 全員の集中が切れたあたりでカティアの一言をきっかけに雑談の時間になる。


「何かしら」

「ある建物の壁に『貼り紙禁止』って書かれた紙が貼ってあったのです。じゃあ、その紙を貼るのも禁止にならないのです?って思ったのです」


 カティアがチョークを持って、黒板に壁と『張り紙禁止』の貼り紙の絵を描く。


「ふふ、確かにそうね」

「そういう紙、ボクも見たことある」

「じゃあこういうのはどうだ?」


 俺はノートのページを一枚切り取ってあることを書いて3人に渡した。


「なになに…『この裏面に書いてあることは嘘だ』だって」

「じゃあ裏を見てみましょう」


 ユウが読み上げると、すかさずシェーラがひっくり返した。


「『この表面に書いてあることは真だ』なのです…あっ」


 カティアはいち早く気づいたようだ。


「でも、さっき表面に書いてあったとおり、これは嘘なんだよね?つまり表面に書いてあることは実は嘘ってこと」

「そうね。で、表面が嘘ってことになると『裏面に書いてあることは嘘だ』が嘘だから、裏面は真ってことになるわね」

「あれあれ?そしたら裏面に書いてある『この表面に書いてあることは真だ』は真だから、やっぱり表面の…」


 シェーラとユウは紙をペラペラめくりながら循環に陥っている。


「面白いのです。いつまでもぐるぐる回って終わらないのです」

「表面が嘘だと裏面が真で、すると表面が真で、そしたら裏面が嘘で、やっぱり表面が嘘で…」


 楽しくなってきたのか、ユウが早口で紙をひっきりなしに返し続ける。


「ねぇ、他にもあるの?」

「そうだなぁ…『ある村の唯一の床屋は、自分で髭をそらない人全員の髭だけをそる。この床屋の髭は誰がそるのか?』」


 シェーラに求められたので、地球で知った自分の好きな話を出してみる。


「床屋が自分の髭をそらないとすると、この人は『自分で髭をそらない人』になるから、やっぱり自分で自分の髭をそらないといけないのです」

「で、もし自分の髭をそるとすると、『自分の髭をそらない人だけをそる』ことを守ってないことになるからダメだね」


 カティアとユウがすぐに自己矛盾に気づいたようだ。


「そる、そらないどっちを仮定しても矛盾になるわけだ。これも『張り紙禁止』や『裏面は嘘の紙』と同じような話だね」

「じゃあ、実際はそういう人はありえないってことなのね?」

「いや、じつはこういう床屋は現実にあり得るよ」

「えっ?」


 シェーラが期待通りの質問をしてくれて、さらに期待通りの驚きを見せてくれた。


「だって、もしそういう床屋がいたら、自分の髭をそると仮定しても、そらないと仮定しても矛盾になって、だからやっぱりいないってことよね?」

「シェーラのいう通りなのです。今の話によるとあり得ないのです」

「レオン君、どういうこと?」


「それはね…」


 ごくり。

 3人がつばを飲み込むのが分かる。


「その床屋は女性なんだよ」


 これは地球で少し有名なジョークなのだ。


「えー、なんかずるいよー」

「これはやられたわね。勝手に男性だと思い込んでいたもの」

「確かに、レオは性別については何も言っていなかったのです」


「よし、じゃあ1つ、こんなクイズを出そうかな」

「お!受けて立つよ!」

「やるのです」

「いいわよ」


「シェーラとカティアがある盗賊にさらわれてしまった。盗賊のリーダーが2人にこう言った。『いまから1つ、勝負をしよう。もし成功したら解放してやる』」

「カティア、私達捕まっちゃったってよ」

「ピンチなのです」

「ボクは登場しないの?」

「じゃあユウが盗賊のリーダーってことで」

「ユウが…ぷっ。弱そうね」

「ぜんぜん怖くないのです」

「ちょっとー、ボクはそんな悪いことしないからね!」


 ユウが頬を膨らませて抗議する。こんなにかわいい盗賊なんていないか。


「はいはい。勝負の説明するぞ。内容はこうだ。

リーダーの手元には赤と白の帽子が2つずつある。

この中から1つずつ選んでシェーラとカティアに被せる。

シェーラもカティアも、自分が何色の帽子をかぶったのかは分からないけど、相手が何色の帽子をかぶったかは見て確認できる。

2人は喋ったりして相手に何色の帽子か伝えることは出来ない」

「それって目くばせや地面を叩く回数とかで教えるのもダメなの?」


 途中でシェーラが口を挟む。


「全部だめ、一切相手に何かを伝えることは出来ない。

この状況で2人はせーので同時に色を言う。

もし片方でも自分の帽子の色を当てることが出来たら、2人の勝ち。

帽子を被らされる前に相談できるとして、どういう戦略をとれば確実に勝てるか?

…というもの」

「無理じゃない?」


 ユウが即答する。まぁ、そう思うのが普通なのだろうけど。


「本当に可能なのかしら?自分の帽子の色はどうやっても確認できないのでしょう?運に任せて赤か白か言うしかないと思うのだけど」

「うーん、でも、そうすると相手の帽子の色を見れる意味が全くないのです…」


 相変わらずカティアは鋭い。


「カティアの言う通りだね。でも、実は相手の帽子の色を見れる、これがあることで必ず勝つことが出来るんだ」

「でも、その色を相手に一切伝えられないのよね?」

「うむ…じゃあこの問題はみんなへの宿題ってことで。もし解けたらワイバーンのから揚げを贈呈」

「絶対に正解して見せるわ」

「必ず解いてみせるのです」

「ボクも頑張る」


 3人ともやる気を出したようだ。きっと正解を見つけてくれるだろうし、マリーさんにから揚げをおねだりすることになるだろう。

 せっかくだから、マリーさんにも出題してみよう。必死に頭をひねる3人を見ながら、そう決めた。


次回答え合わせ。有名な問題なので知っている方も多いかもしれませんが、ぜひ考えてみてください。

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