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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
4章 天才数学者、初めての夏休み
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65 数学者、帰省する②

ライナー・カール 父親(領主)

クレア・カール  母親

エドガー・カール 長男

レオン・カール  次男


Side レオン・カール


「レオさま、到着しました」

「お、着いたか」


 ガロア群の計算をしている手を止め、馬車の外へ視線を移す。

 レンガの塀に囲まれた大きな屋敷。門をくぐると噴水のある広い庭。手入れがされている庭木。出発前と変わらない我が家がそこにあった。


「「「おかえりなさいませ、レオン様」」」


 馬車から降りると、屋敷の玄関前に家事使用人が整列していて、帰りを出迎えてくれた。その列の間から両親と兄が出てきた。


「おかえり、レオ」

「おかえりなさい、レオ」

「おかえり」

「お父様、お母様、エドガー兄様。ただいま帰りました」


 三人は出発前と変わらない笑顔を見せてくれた。




 母のクレアにお土産の薔薇風呂セットを渡し、まずは3か月ぶりに自分の部屋に入ってみることにした。扉を開けると同時にかつての記憶が蘇る。振り子時計の試作。この世界で役立ちそうな道具の設計図。魔法理論の勉強の痕跡。短いが濃密だった3か月の学校生活のせいで、まるで数年ぶりであるかのように懐かしく思う。部屋は定期的に掃除されていたようで、全く埃っぽくない。いくつかの道具の設計図や計算用紙がどこかに消えているようだが、掃除のついでに捨てられてしまったのだろうか。

 晩御飯の時間は、俺の学校での話で持ち切りだった。第一クラスに入ったことについて改めて褒められたし、魔法大会についても簡単に話したら驚かれた。


「レオって勉強が好きで魔法とか戦闘は嫌いかと思っていたけど、そうでもないのね」


 クレアは俺がインドア派だと思っていたようだ。実際そうだと思うのだが。魔法大会は半ば強制参加だったから出ただけで、少なくとも兄のエドガーのように戦闘狂ではない。


「レオは好きなことをするがいいさ。ちょっとぐらいは家に役立つ仕事もしてもらいたいがな!」


 父であり、カール領の領主でもあるライナーにそう言われたのが嬉しかった。


「そうだ、それで思い出したんだがな、レオがいない間に部屋を掃除したメイドが見せてくれたんだがな、この設計図」


 空になった皿を下げられた後、ライナーが紙の束を取り出す。俺の部屋からなくなっていたものだ。


「いくつか間違いなく役立ちそうだったり、面白そうなものがあるんだが、こっちで実際に作ってみてもいいか?」

「はい、勿論です。ただ、設計図も完璧ではないので、書いてある通りに作ってもきちんと動作するかは分かりませんが」

「ああ、そこはうちの領の職人に任せるからいい。それで利益が出た場合の配分については…」

「それはほとんど頂かなくて結構です。学校で自分が不自由なく生活できる分のお金さえあれば十分ですから」

「本当にいいのか?おそらくかなり利益が出そうなやつもあるんだぞ?」

「いいです。この領の発展に役立てて下さい」


 善人ぶっているのかもしれないが、これが育ててくれた領への恩返しになるなら、喜んでそうする。俺は理論を組み立てるのが好きなのであって利益を生み出すのは向こうの仕事なのだ。




 お土産として渡した薔薇風呂をさっそく試してくれたようだ。まずクレアが試してみて、その後俺たちも楽しむ。最後まで薔薇がもつのであれば使用人達も使えるだろう。

 花をそのまま浮かべる方法も、花びらを一枚ずつちぎって浮かべる方法もあるようだが、お土産として買った薔薇風呂セットの量からして花びらをバラバラにして浮かべる方法を採用したようだ。実際に湯舟に浮かぶ花びらを見るまで、屋敷の風呂がかなり広いということを失念していたのが悔やまれる。もし気づいていればもう少し量の多いセットを買っていたのに。

 薔薇風呂はクレアやメイドさん達から大変好評だった。特にメイドさんのほとんどは人生初薔薇風呂だったらしい。クレアは貴族なだけあって経験があったようだが、王立公園の薔薇は初めてだと言って喜んでくれた。


 帰省中の1週間はゆっくり過ごすつもりだったが、唐突にライナーとエドガーに誘われてカール領沿いの森へ行くこととなったり、エドガーと一緒にライナーの手伝いをしたりと、思ったよりせわしない日々だった。この領の財政支出を見せてもらったが、財政経済に詳しいわけではないのであまり役に立てなかったのが申し訳なかった。


 屋敷に戻って一番感動したことは、食事の充実さだった。寮の食事も立派だが、屋敷の食事は品目数が圧倒的に多いのが顕著な違いだ。住み込みの料理人が何人もいる貴族の生活とはまさにこれなのだなと改めて楽しめた。




 あっという間に1週間が過ぎ、来た時と同じく使用人総出で見送られながら寮に帰る。マリーさんも1週間ゆっくりと羽を伸ばしたのであろう。


「マリーさん、また王都ではよろしくね」

「またお傍でお仕え出来てこの上ない幸せです」

「屋敷では十分休んで疲れは取れた?」

「ええ、ゆっくりさせていただきました。ですが、普段からレオさまのご厚意で寮で自由にさせていただいていましたから、疲れなどはありませんでしたよ」


 ふと、マリーさんから薔薇の香りがふわっと漂う。プレゼントした香油を付けてくれたようだ。


「マリーさん、素敵な香りだね」

「ふふ。ありがとうございます」


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