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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
4章 天才数学者、初めての夏休み
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58 数学者、夏休みを満喫する①


Side レオン・カール


 魔法大会が終わり、次の登校日。ランプ先生がいつも通りの魔女スタイルで教室に入ってくる。


「みんな、おはよう。魔法大会お疲れ様。第一クラスが総合点で一位になって担任として嬉しいわ。代表として魔法を披露してくれた4人だけでなく、それを支えてくれたクラスのみんなで勝ち取った勝利だと思っているわ」


 クラスの誰もが誇らしげな表情をしている。いいことだ。


「さて、魔法大会が終わって、すぐに夏休みになるわ。寮にいる人は、帰省するならいつするのか、ちゃんと大家さんに連絡するようにね」


 そうか。寮をしばらく離れるのであれば、大家さんが用意する食糧の量も変わるわけで、確かに連絡しないといけない重要なことだ。

 にしても、ガイアで初めての夏休みをどう過ごそうか。帰省はもちろんするつもりだが、研究をするなら王都にいる方が色々と揃っていて捗るのだ。なるべく王都から離れたくない、というのが正直なところだが、いつ帰省しようか。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 窓の外の入道雲がゆっくりと流れるのを見ながら授業を受ける。気づいたら金曜日となり、今日が夏休み前最後の登校日だ。


「ねぇ、レオン君とシェーラさんはいつ帰省するの?」


 放課後になり、ユウが俺たちの机にやってきて言う。


「1ヵ月ずっと帰省するつもりはなくて、1週間くらい帰ればいいかって思っているところ」

「私もあまりキース領に長居するつもりはないわ。たぶん休みのちょうど真ん中あたりにちょっとだけ帰省するかしら。それよりも、王都のさまざまなところを巡ってみたいの」

「じゃあボクと同じだね!カティアさんは家が王都にあるんだよね?」

「そうなのです。旅行の予定はなくて、ずっと家にいるつもりなのです」

「じゃあさ、ボクたち4人でどこかに出かけない?」


 ユウが待ってましたとばかりに、とある冊子を取り出す。


「へー、王都の観光についての本か」

「そ。さっき図書館から借りてきたんだ」

「図書館ってこういう本も置いてあるのね。知らなかったわ」


 ユウが本をパラパラとめくる。


「カティアの家の近くの王立公園はどうです?前シェーラが行きたいって言っていたのです」

「そうだったわ。王立公園に行きたいわね」

「王立公園…あった、このページだ」


 ユウが王立公園のページを開く。色とりどりの花が咲き乱れる庭園、と書いてある。ガイアにはまだ写真はないようで、簡単なスケッチと文章のみで説明がされている。


「ちょうどこの時期が見ごろだってあるのです。ピッタリなのです」

「よし、決まりだな」

「やった」


 シェーラが小さく喜ぶ。


「いつがいい?」

「夏休みの真ん中じゃなければいつでも大丈夫よ」

「いっそのこと明日でいいんじゃないか」

「ボクはそれでもいいけど…土日より平日のほうが混んでないだろうし、来週の平日がいいんじゃない?」

「じゃあ次の月曜とか」

「それがよさそうなのです」

「ええ。いいわね」

「ボクも賛成」

「じゃあ決まりだな」


 全員が了承したことを確認して月曜日で決定する。ガイアに電話なんてないし、あとは当日に無事そろうのを願うのみだ。


「って、集合場所は?そもそもどうやって行くんだ?」

「それは校門でいいのです。王立公園はカティアの家の近くだから、カティアがいつも使う乗り合い馬車に乗っていけばいいのです」

「それなら、せっかくだから私達でカティアの雑貨屋にも行ってみましょ」

「いいねー」

「えっ、そ、それは…嬉しいのですけど、恥ずかしいのです。小さな雑貨屋だから、きっとシェーラやレオンが来るような所じゃないのです…」

「ボクも行ってみたいけどなぁ。それに、2人はそういう身分的なこととか、気にしないでしょ?」

「そりゃあね」

「もちろんよ」

「あぅ…でも、やっぱり恥ずかしいのです」


 カティアは顔を赤くして下を向いてしまった。


「たしかカティアには妹さんがいたわよね?会ってみたいわ」

「わ、分かったのです。紹介するのです」


 カティアはシェーラの押しに弱いんだな。押されるがままカティアの雑貨屋に行くことが決まったようだ。まぁ、カティア本人も嫌そうにしていないからいいか。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 土日にみっちりと研究をして翌日。4人で王立公園に出かける日になった。10時ちょっと前に寮を出発してシェーラと校門に向かう。二人とも作ってもらったお弁当を持っている。


「あ、2人が来たみたいだよ、おーい」

「これで全員揃ったのです」


 校門にはユウとカティアが先に待っていた。ユウは俺たちを見つけてせいいっぱい大きく手を振る。カティアも小さく手を振っている。


「今日が待ち遠しかったわ。さぁ、早く行きましょ」

「ふふ。そんなに急がなくても、乗る予定の馬車は変わらないのです」


 シェーラとカティアが仲良く前を歩き、その2人のすぐ後ろをユウと並んで歩く。シェーラとカティアは仲良く手を繋いで、楽しそうに何度も笑いあっている。


「シェーラさんもカティアさんもおしゃれだね」


 ユウが唐突に語りかけられて、改めて前の2人を見やる。

 シェーラは真っ白なワンピースに大きな麦わら帽子をしている。王都ではエルフが稀だが、これでエルフ特有の耳を隠すことができる。入試当日もこの装いだったなぁと思い出す。セバスさんに作ってもらったであろうお弁当をバスケットにいれて持って来ている。

 一方カティアは、夏を感じさせる水色のワンピースに、ピンクの髪留めをしている。雑貨屋に寄る予定なので手ぶらだ。確かに2人ともおしゃれであるし、ひいき目に見ても、かわいいと思っている。


「確かにそうだな」

「ね、2人ともかわいいよね」

「ユウの方がかわいいぞ」

「もうっ、かわいくないってば!」


 こうやって頬を膨らませるユウが一番かわいい。


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