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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
3章 天才数学者、魔法大会に出る
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57 数学者、魔法大会で魅せる⑧

二日も更新をサボってしまいました…気を付けます


Side レオン・カール


 昼ご飯を食べ、屋内運動場に戻ってきた。午後は二年生の部、三年生の部があり、きっと俺が披露した魔法以上の魔法が見られることだろう。


「二年生の部を始める前に、午前の最後だった1組の点数を発表します」


 開口一番、ランプ先生が俺たちの点数を読み上げるようだ。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


1組の点数:9点、8点、10点、10点

合計:37/40


2組:33/40

3組:28/40

4組:25/40


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 点数を見た1組のクラスメイトが立ち上がって喜ぶ。カティアとユウも俺たちのおかげだと言ってくれる。


「1組の最後の発表者のレオン君が魔術的を3個用いるという、こちらが想定していなかった事態が起こったため、こちらで審議の時間をとらせていただきました。

本来の評価基準として、『的が割れたら基本的に10点』というものがあるのですが、的を3つも割った場合も10点でいいのかという意見がありましたが、10点を超える点数をつけることは出来ないため、ご覧の点数となりました」


 的を3つ割ったから30点、とはさすがにならなかったか。俺を10点として、他の人の点数を相対的に下げる、ということもないみたいだな。まぁ、俺は点数が欲しくて3つも的を割ったわけじゃないし、正直どうでもいいのだが。どれくらいの魔力を込めたらあれくらいの質量の物体を浮かすことができるのか、が分かっただけで十分だ。


「また、今回は特例としますが、次回以降、一年生の部では原則『魔術的1つを使用』とします。…以上です。では、二年生の部に移りたいと思います」

「レオ、完全に先生方に迷惑をかけちゃったじゃない」

「え、迷惑なんてかけたか?」

「あなたが変なことをするから、先生方がルールを調整することになったのよ」

「いやー、そんなことを言われてもなぁ、ルールの範囲で出来ることをしただけのつもりなんだけど」

「もう、ほんとうにレオったら」


 シェーラは困ったような、しかし嬉しい表情を見せる。点数が発表された瞬間、小さく「やったっ」と呟いていたから、高得点が取れてご機嫌なのだろう。


 二年生の部が始まる。二年生、三年生の部は魔術的を必ずしも使わない。人形に魔法を撃つ場合や、そういった道具を使わずにただ虚空に向けて魔法を出すこともあるらしい。


「なるほど…素の魔力を分割することで一つの魔法が分裂するように見せかけるのか…」


 上級生の魔法は総じて面白い。どれも威力が少なくとも魔術的の青から紫は出ていて、その上さまざまな創意工夫がこなされている。一つ一つの魔法をどうやって実現しているかを考察するので忙しい。


 シェーラと寮で勉強会をした時、マリーさんから魔法は6,7個程度しか同時に制御できない、と聞いていたが、三年生に同時に6個の魔法を制御している人がいた。会場もよく盛り上がっていたし、よほど高等技術なのだろう。火、水、風、雷、光、闇の色鮮やかな6つの玉が踊るさまは見ていて華やかだった。これは到底マネできないだろう。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 三年生の部まで終わり、最後に各学年で特に優秀だった者に対し表彰がされるらしい。的を3つも割ってみせたのだから表彰されるだろうと思っていたら、案の定名前を呼ばれた。シェーラも的を割ったということで表彰の対象になったようだ。


 校長先生から表彰状を受け取り、拍手を浴びながら舞台の袖に退出する。シェーラや他学年の受賞者も続々と表彰状片手に舞台袖にはけてくる。中には俺に声をかけてくれる上級生もいた。魔法には興味あるがそれをやった人の人柄については興味ないので、のらりくらりと当たり障りなく会話する。


「いやー、君の魔法は面白かったね。アタシが一年生のときはあそこまで出来なかったよ」

「はぁ。ありがとうございます」

「ね、あの魔力について詳しく聞きたいから、2人でお茶しない?王都の東地区にお気に入りのお店があるんだけど…」

「ははは、機会が合えば、ぜひお願いします」

「ほんとう?じゃあ、次の日曜日はどう?」

「申し訳ないんですが、ここしばらく土日はずっと予定(研究)がありまして…」

「そうなんだー、残念。じゃあ…」

「れ、レオ!ユウ君とカティアさんを待たせていますから、行きましょう!」

「え?あぁ、分かった。先輩、失礼します」

「失礼します!」

「あっ、待ってよぉ~」


 急にシェーラが割って入ってきて先輩との話を強引に打ち切る。ユウたちを待たせていたっけなぁと思いながら腕を引っ張られるままに歩く。


「シェーラ、あんな強引なことしなくても良かったんじゃ…」

「レオ。あんな出会っていきなり2人でお茶に誘うなんて、明らかに婚約者としてレオを捕まえるつもりの人よ」

「はぁ。そういう狙いがあるかもしれないけど、別にお茶するくらいなら構わないと思うよ?」

「あのねぇ、女性からのお茶のお誘いを受けるっていうのは、それだけで大きな意味を持つのよ」

「どういうこと?」

「要するに、脈ありって向こうは捉えるのよ」

「えぇ、ただお茶しただけじゃん」

「そういうものなのよ。レオはこういった話に疎すぎるから知らないの。『2人っきりで』って言われたときは、それはあなたを狙ってますっていう意思表示だと思った方がいいわよ」

「この社会ってめんどくさいなぁ」

「常識よ。貴族なのにそういうことを教わらなかったの?」

「いや全然。ずっと研究して実験しての日々だったから」

「はぁ、レオが変な人に騙されないか心配だわ…」


 シェーラがため息交じりに言う。その後もシェーラからこまごまと説教じみたことを言われた。前も聞いたことあるような話だったので俺は丸めた表彰状を広げて読みながら聞いていた。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 閉会式を終え、保護者がぞろぞろと帰る。生徒はすぐに帰るわけにはいかず、会場の後片付けをしてから帰ることになる。ただひたすらに出したパイプ椅子を仕舞っていく。


「よし、一年生の仕事は以上だ。帰って良し!」


 指定されたパイプ椅子を全て仕舞い終わり、ガーフィー先生から帰宅の許可が出る。魔法を使うより疲れた。


 ユウ、カティアと別れ、シェーラと二人で寮までの道を歩く。夕暮れ時、人で溢れている商店街を通り抜けて静かな道に入る。


「レオ。改めてお礼をいうわ。あなたの助言が無かったら的は壊せなかったと思うの」

「どういたしまして。カティアもよく頑張ったらしいけど、俺よりカティアのほうが頑張ったんじゃないか」

「カティアにもお礼を言ったわ。でも、やっぱりレオのおかげでもあるから」

「そうか。ちゃんと的を割れて良かったね」

「ええ、本当に」


 風がシェーラの髪を揺らす。シェーラが髪を耳にかけてから続ける。


「レオの魔法を見てあまりにも驚いたわ。勝てないって思ったし、レオに勝ちたいとすら思えなかったわ」

「そりゃどうも」

「的を割る魔力についてレオに聞いたらすぐ答えてくれた。それはこれまでずっとレオが1人で研究し続けていたからできたことよね」

「そうだね」

「それで思ったの。レオは1人でどこまでも勝手に高みに昇っていく。私達が出来ないことを、いとも簡単に出来てしまう。私達が困ったことを、簡単に解決してくれる」

「そこまで万能ではないよ」

「ううん。きっと、レオなら出来るの。だからね」


 少し先を歩いたシェーラが振り返って言う。


「これからも困ったことがあったら、助けて欲しいの」


 そんなこと…と言いかけた口を噤む。シェーラの表情、しぐさ、雰囲気がどこかいつもと違い、縋るような、許しを請うように見えた。その意味ありげな表情をするシェーラの青く輝く瞳に吸い込まれるように見惚れてしまったのである。

 ただの勘違いで、普通の友達としてのお願いなのか、はたまた隠された意図があるのか。2人きりのお茶の誘いの意味すら分からない俺は、シェーラが何を考えているか分かるわけがなかった。ただ、どうであれ俺の答えは決まっている。


「ああ、もちろんだ」


 まだ俺は、シェーラに対して抱いている、とある感情に、気づいていない。


魔法大会編が終わり、夏休みに入ります。

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