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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
3章 天才数学者、魔法大会に出る
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51 数学者、魔法大会で魅せる②


Side レオン・カール


「次は、2組の披露です。披露の順番は…」


 ランプ先生が2組の代表4人の名前を読み上げる。やがて1人目の女子が2組の待機場所から結界へと、拍手に包まれながら入る。2組の待機場所と俺たちの待機場所は結界を挟んで反対側なので、ここで初めて向こうの顔が見える。眼鏡をかけた、三つ編みが特徴的な子だ。

 中央で静かに佇む彼女は、目を閉じて集中し、左手に光る短弓を顕現させる。


「おぉ、もしかして光属性か?」


 思わずシェーラに聞く。確かシェーラは光属性魔法に適性があり、俺より詳しいはずだ。


「そうね。まさかここで出してくるなんて」


 シェーラが驚いている。光属性は使い手の数が闇属性と同程度で少なく、珍しさだけでなくその神聖さも相まって非常に審査員の目を引く。


「ふっ!」


 右手で引き絞った弓を離すと、2本の光の矢が放射線状に飛び出す。横に広がった2本の矢は途中で軌道を曲げ、的の中央へと吸い込まれる。


「おぉ!」


 弓を引き絞る段階では1本の矢に見えていて、意表を突かれ思わず声を上げてしまった。そして威力を表す的の色は…青。


「今大会初の青色が出ました!」


 ランプ先生がやや興奮気味に実況し、会場が盛り上がる。魔術的の威力を示す色は、赤が最も弱く、そこから黄、緑、青と変わっていき、紫が最も威力が大きいことを表す。これは光のエネルギーの大小と同じ関係になっている。この少女が出した青色は、5段階のうち上から2番目を表すことになり、現時点で最も威力が高いことになる。

 ちなみに、紫を上回る威力を出した場合、さらにエネルギーが大きくなって的の出す光の波長がさらに縮み、紫外線になってしまうのではないかと思ったが、どうやらそうならずに的が壊れるらしい。

 これまでで一番大きい拍手が鳴り止まない中、会場のボルテージが高まった状態で2人目の女子が現れる。


「な、なんだって…!?」

「嘘だろ…!?」


 会場から次々と驚きの声が発せられる。2人目は驚くことに、炎の弓を作り出し、同じく2本の炎の矢を射ってせたのだ。なるほどそういう魅せ方もあるのか、と感心せざるを得ない。


「二人連続で属性の異なる同じ魔法。コンセプトが非常に練られていて芸術性が高いです。その上、二人連続で青色を出しました!」


 ランプ先生の言葉を聞いた会場全体がさらに盛り上がる。


「あっ…」

「あ、確かあいつは…」


 交代で現れた3人目を見てシェーラと俺が同時に顔をしかめる。彼はかつてシェーラにいちゃもんをつけてきた三人組のうちの1人だ。あのとき彼らが主張していた内容の一つに、「魔力量がAだったのに第一クラスになれないのはおかしい」というものがあったのを思い出す。彼は魔力量が多い。当然高い威力が出せるのだろう。


「やはりな…」


 3人目の彼も左手に氷の短弓を生成する。これは、4人目も異なる属性の短弓で矢を打つのがほぼ確定だろう。十分に弓をしならせた右手を離すと、弾性エネルギーを極限まで蓄えた弓が元に戻ると同時にエネルギーが伝わり速度を得た氷の矢が3つに分かれ、同時に的に着弾した。


「今度は3本…」

「お見事です。同時に3本の矢を飛ばして見せました。的の色は当然のように青色です」


 シェーラがつぶやくと同時にランプ先生がコメントする。

 すでに終えた3組、4組はただ各人が得意な魔法を見せるだけでまとまりが無い演目だったが、2組は威力もさることながら、複数の矢を飛ばすというテーマで統一した構成になっており、明らかな差がある。

 これに対し、俺たち4人の魔法もただただ出せる最大威力をぶつけるだけで、チームとしてのテーマも何もない。もしかしたら負けてしまうのではないか。結界を去る3人目の背中を見ながら、そんな不安を感じていた。

 大歓声に包まれながら結界に入ってきた4人目も例の三人組のもう一人だった。シェーラの表情は曇ったままだ。

 結界の中央で自信ありげな表情をする4人目の彼は、左手を前に突き出し、金属質な光沢のある金色の弓を創り出す。


「やっぱり弓だ!」

「4人目は雷属性だ!」

「今度は何本に分裂するんだ!?」


 弓を生成しただけで会場は大盛り上がりだ。これまでの3人を見てきた観客の期待を完璧な形で答えたのだから当然の結果だ。

 時間たっぷりと会場が静まるのを待った彼は、ついに右手で弓を引き絞る。指に持っている矢は電気を帯びていることが一目で分かる。しんと静まった会場の中で、帯電した矢がバチバチと放電している音だけが鳴っている。


「はぁっ!」


 彼の放った矢は3本に分裂する。その全てが的の中央へまっすぐと飛んでいく。


ドーーーン!!


 矢がぶつかると同時に、爆音を轟かせながら雷が落ちる。

 耳がキーンとなりながら、屋内なのにどうやって雷が落ちるんだ、と考察を始める。的しか見ていなかったが、一瞬頭上に雲が生成されたのだろうか。

 プスプスと音を立てながら、的はついに紫色を呈する。


「ついに紫が出ました!なんという威力でしょう!」

「すげえぇぇぇ!!」

「なんてこった!!」

「おおおぉぉぉ!!」


 拡声器の魔道具を使ったランプ先生の声すらかき消されるくらいの歓声が沸く。満足気な表情をして4人目が退場し、ランプ先生の代わりに校長先生が総括のコメントをする。


「4人全員が属性の異なる矢を射るというテーマ。複数の矢を同時に中央に当てる高度な操作精度。文句なしの威力。計算された美しさがあり、非常に楽しめた。素晴らしい!」


 改めて会場に大きな拍手が巻き起こり、俺も思わず拍手をしてしまった。ここまでよく考えられた内容は簡単にマネできない。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


2組の点数:8点、8点、8点、9点

合計:33/40


3組:28/40

4組:25/40


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 俺たちはここまでのクオリティに打ち勝てるのか。俺たちはここまで会場を賑わせることが出来るのか。第一クラス代表の心の中には皆一様に同じ不安が渦巻いていた。


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