50 数学者、魔法大会で魅せる①
Side レオン・カール
魔法大会前日、第一クラスの出場者4人は放課後に集まって話し合っていた。
「ということは、派手な魔法を使う予定のシモン君が最初に披露するのがいいのかな?」
「おう、任せてくれ!」
そう自信満々な様子で胸を叩くシモン君。彼は水属性の魔法を使い、大きな波を作り出すらしい。大がかりな魔法を最初に持っていくことで、まず審査員を驚かせる目的だ。
「で、次がハルさん」
「うん。静かに、鋭く決めるよ」
シモン君の次に出てくるのがハルさん。彼女はクラス唯一の闇属性魔法の使い手だ。話を聞くと、闇属性魔法で作り出した弓を使って漆黒の矢を射るらしい。俺の頭の中では完全に弓道のイメージがあるが、どうなのだろう。
「そして、三番目が私ですね」
シモン君、ハルさんと来て、シェーラの番だ。約十年ぶりの、そして第一クラス唯一のエルフ。しかも学年一位の魔力量に、学年二位の学力。これが他の人の目にどう映るだろうか。話題性、意外性という点でも、これ以上の適役はいないだろう。ちなみに、シェーラは最後の放課後練習でついに的に亀裂を入れることに成功したらしい。本番で的が割れたとしたら、その時の会場はどれだけ盛り上がるだろうか。
「で、最後が俺と」
「割ってね」
「割るのよ」
そして最後が俺。確実に割って見せる。
「よし、決まりだな」
「よーし、じゃあさっさと紙を出して帰るか!」
シモン君が大きく背伸びをする。実は30分近くずっと同じ姿勢で話し合っていたのだ。
「じゃあ、私が出してくるね」
「いいや!俺が出してくるよ」
「えっ…いいの?」
「ああ!」
俺は半ば強引にハルさんを差し置いて紙を提出しに席を立つ。
「ちょっと待って、レオ!」
ドアまで速足になっていた俺をシェーラが呼び止める。
「私が鞄を持っておくから、校門に直接来て」
「分かった。ありがと」
俺は短く返事をして、職員室へ向かう。しかし角を曲がってから俺は唐突に立ち止まり、あることを紙に書き足す。
「…よし、これでいいかな」
そして俺は再び職員室へと小走りで急いだ。
「ねぇ、レオ、何であんなことをしたの?」
「え、何のこと?」
寮までの帰り道、シモン君とハルさんと別れて二人で歩いていると突然シェーラが聞いてきた。
「急に自分から紙を出すなんて言っていたじゃない。なんだか不自然だったわ」
「…ナンデモナイヨ?」
「うそね」
なぜ俺が何かを画策していたことがばれたんだ。
「紙に何かをしたの?勝手に順番を変えたりしてないでしょうね?」
「いやいや大丈夫、全然悪いことはしていないから」
「…てことは、やっぱり何かしたってことじゃない」
「あ、自分から墓穴を掘っちゃった」
「で、何をしたの?」
シェーラが訝しげに俺の顔を見る。
「いやぁ、ね。これも明日までのお楽しみってことで」
「…そう」
俺がはぐらかして答えると、シェーラはやや物足りなさそうな、不満げな顔をしながら前を向いた。
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魔法大会本番。広すぎるあまり、いつもスペースが余りすぎていた屋内運動場が埋まるくらい人が集まっている。全校生徒だけでなくその保護者までもがいるようで、一部スペースに保護者のための席が用意されていた。遠くから見る限り、地球のパイプ椅子とそっくりだ。うちの家族は、領が遠いため残念ながら来ていないが、おそらくマリーさんがどこかにいるのだろう。
生徒側にもパイプ椅子が用意され、クラスごとに固まって座っている。代表は出番の少し前に専用の集合場所へと抜けていくのだ。一年の部が最初にあるので、俺たち代表は最初からクラスメイトとは違う場所にいる。
「これより第50回魔法大会を開催する!」
校長先生の高らかな宣言と共に、屋内運動場が震えるほどの歓声に包まれる。とんでもない盛り上がりだ。自分の小学校、中学校の運動会でもここまで盛り上がっていなかった気がする。
「これより一年の部を開始します。一年の部は魔術的に向かって魔法を放ってもらいます」
いつもにまして魔女スタイルが決まっているランプ先生が丁寧な口調でルール説明をしている。拡声器の魔道具を使用しているようだ。
「披露した魔法の審査については、魔法の威力、発動の難しさなどを総合的に評価して、点数をつけます。体育の先生と校長先生の点数の平均をとり、10点満点で採点します」
つまり各クラス4人が披露するから、最大で40点が取れるわけだ。
「また、この魔術的は大会用に調整されたもので、的に対してどれだけのダメージを叩き出せたかが分かるようになっています」
そんな特別な的が使われるとは知らなかった。まぁ、割ってしまえば関係ないのだが。
「では4組から順に披露していただきます。披露の順番は…」
1組、通称第一クラスは一年の部の最後だ。基本的には下のクラスから順にやっていく。
「最初の最初にやる人って重圧がとんでもないだろうね」
「そうね。でも、特殊な結界で覆われていて私達代表は外が見えなくなるそうよ。だから周りの目を気にせずに出来るのだとか」
「ほぉ、そんなことできるんだ」
シェーラと話しながら驚いていると、ランプ先生含め何人かの先生がやってきて、大きな長方形の頂点にあたる位置に魔道具を設置していった。やがて起動した魔道具は、魔道具同士を結ぶように大きな透明な壁を形成し、小さな教室ほどの空間が出来る。
これが結界か。マジックミラーのように外から中の様子が見えるらしい。
関心していると、ついに魔法の披露が始まる。緊張気味な一人目が的に向かって火球を放ち、的が変色する。色の変化で威力を測るようだ。
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4組の点数:6点、6点、6点、7点
合計:25/40
3組の点数:7点、6点、8点、7点
合計:28/40
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4組と3組を見てきたが、今のところ火属性、水属性、風属性しかいない。この3つがこの世界で一番使い手の多い属性トップ3だと聞いたことがある。
「レオ、緊張している?」
隣に座るシェーラが聞いてくる。
「俺の予測では失敗する確率は0.1%未満」
「ふふ。さすがね」
実はかなり緊張しているのだが、それを隠す。
「そういうシェーラはどう?」
「もう緊張で押しつぶされそうよ。喉が渇くし、お腹は痛むし」
「いつものシェーラらしくないね」
「誰だってこの場で緊張するわよ。レオが変わっているだけ」
「それは否定しない」
「次は、2組の披露です。披露の順番は…」
いよいよ2組が始まる。これが終わると、ついに俺たち第一クラスだ。ますます固まって口数が少なくなるシェーラは、心ここにあらずといった感じで結界の中を見ている。そんなシェーラを見ていると、じわりじわりと、緊張が伝播していき、それが蛇のように俺の心臓を締め付けてくるのであった。
すみません、明日は更新できない可能性が高いです。
これから毎週水曜日の0時は更新したりしなかったりすると思います。




