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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
3章 天才数学者、魔法大会に出る
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49 数学者、魔法の鍛錬をする⑦


Side レオン・カール


 放課後になった。ガーフィー先生から会議室に集まるよう言われていたので、第一クラスの代表四人で会議室に向かう。歩きながら簡単な自己紹介やちょっとした雑談をしたが、相変わらずこのような場面でシェーラはお嬢様モードだった。

 会議室に入ると、学年もクラスもバラバラな20人近くの生徒が座っていた。ここで初めて全出場者が一堂に会する場なのだと理解する。四人で固まって座っていると続々と代表者と思われる生徒が入って来て、最後にランプ先生と先生が数人入ってきた。その中にはガーフィー先生もいる。ランプ先生はいつもの全身真っ黒な魔女スタイルだ。


「そろっているか点呼をとるわね。まず一年から。第一クラスの代表、いるかしら」

「「「「います」」」」」


 四人で返事をする。


「はい。じゃあ次、第二クラス」

「「「います」」」


 次々とランプ先生が各クラスの代表を呼んでいく。


「はい、全クラス、全学年そろっているわね。じゃあ最初の連絡。明日から本番まで放課後に屋内運動場で自主練が出来るわ。ただ、ここにいる50人近くが一斉に屋内運動場に向かうと大変なことになるから、日にちごとに屋内運動場を使える学年を決めたわ。それがこの紙。一人一枚とって回してちょうだい」


 回ってきた紙を受け取る。今日から一ヵ月のカレンダーと、その日に屋内運動場が使える学年が書き込んである。


「この紙を見て、自主練をしたいなら放課後に屋内運動場に来ること。事前に連絡をする必要もないから、来たいときに好きに来ればいいわ。体育の先生が必ず一人は屋内運動場にいてくれるから、的などの必要なものを出してもらうこともできるわよ。ここまではいいかしら?」


 ランプ先生が会議室全体を見てから、話を続ける。


「次は、改めて魔法大会の審査について話すわね。さっきの紙を裏をみてちょうだい。

各クラス4人が魔法を披露して、点数の合計をクラスごとに競うのがルールね。それで学年ごとに点数をつける先生が違っていて、公平を期すために、1年の審査をするのは2年か3年の先生、2年の審査をするのは1年か3年の先生、という風になっているわ。それと、全学年共通して校長先生も審査員に加わるわね。

ということで簡単に審査員をする先生の紹介をするわ。まず2年と3年の審査をする、1年の体育の先生、ガーフィー先生よ」

「ガーフィーだ。お前ら、面白い魔法を見せてくれよ?よろしく」


 このためにランプ先生以外にも先生がいたのだと納得した。しかし正直他の学年の先生にまったく興味がわかなかったので、審査をしてくれる先生の名前は聞き流した。


「さて、今日の最後の連絡事項ね。魔法大会本番の前日にそれぞれの担任の先生に出して欲しい紙があるの。その紙には次の二つを書いて」


 ランプ先生が黒板に文字を書く。ランプ先生は背が低いのだが、若干背伸びをしながら書いているのが見えてしまった。


「一つ目は、当日に魔法を披露する順番。これは各クラスの代表同士で決めること。そしてもう一つは、的や人形を使う場合はそれを届け出ること」


 人形、いままで一度も見たことないからおそらく上級生が使う、魔術的に代わるものなのだろう。


「魔法大会のルールとして、一年生は全員的を使うことが決まっているから二つ目については何も書かなくてもいいわ。でも二年生と三年生は的や人形を使うか使わないかは自由。個数も同じものは3つまで使える。当日になってから急に使うと言われても会場にありません、なんてことにならないように、必ず前日に届け出ること。いいわね?」


 なるほど。上級生は的などを使わない魔法の魅せ方もできるのか。


「連絡は以上よ。こうして代表が集まる場は本番までもうないから、今日の内容はよーく頭に入れておいてちょうだい。では終わりにしましょう」


 こうして最初で最後の説明会は終わった。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 何回か放課後の練習をした。放課後の屋内運動場には出場者以外も入れたので、俺、シェーラ、カティア、ユウの四人で練習していた。シモン君やハルさんも仲の良い友達を一人二人呼んで、楽しく話しながら練習しているようだ。

 シェーラはウィンドとウィンドスピアをいかに魔力を込めた高い威力で撃てるかを練習している。一度、本番でどんな風に魔法を撃つのかと聞いたのだが、笑いながら俺を驚かせてみせると言うだけで、詳しくは教えてくれなかった。お返しとして俺もシェーラに本番の魔法を教えないことにし、放課後の練習も基礎トレーニングばかりをしている。


「レオは今までずーっとダンベルばっかり使っているのですけど、的を使った練習はしないのです?」


 全く的を使わないことを不思議に思ったカティアが聞いてくる。もちろん、カティアにも本番の魔法は明かしていない。


「これでいい、いや、これがいいのさ」

「…?よく分からないのです」

「やっぱり基礎的な鍛錬って重要だからね」

「それについてはボクも同意だけど、さすがに一回も的に向かって魔法を撃たないのはまずくない?」

「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ、これからちゃんと的に向かった練習もするから」


 カティアとユウがかなり心配してくれているようだし、重要なネタバレはしないよう気を配りつつ、別のトレーニングもしよう。そう思い立って、倉庫前にいる体育の先生(他学年の体育の先生で、ガーフィー先生ではなかった)にダンベルを返し、的を借りてくる。


「さて…まずはこの実験からするか…」


 屋内運動場の壁際に置いていたカバンからノートを取り出し、事前に考えていた実験の内容を確認し、一つずつ順番にデータを取っていく。


「急にレオン君が研究者モードになっちゃったね」

「自分の世界に入っちゃったのです」


 ユウとカティアは、俺が魔法を撃ってはノートに数字を書き込んでいる様子を見守りつつ、シェーラの様子も交互に見る。俺はその視線を気にすることなく淡々と実験を進めた。



「おぉ、レオン君がなんかすごい魔法を撃ってる」

「あ!的が割れているのです!」


「よし、実験は成功だな」


 仮説に基づく計算通りの結果だ。これで、ずっと構想を練っていた一連の魔法が実現可能であることが確認できた。俺は自然と笑みを浮かべた。


「レオン君、今の魔法ってどうやったの!?」

「もう一回みたいのです!」

「いいや、本番までの秘密。さっき見た魔法は誰にも教えないでね」


 こうして俺は放課後練習において、最初で最後の魔術的の破壊をしたのであった。


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