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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
3章 天才数学者、魔法大会に出る
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47 数学者、魔法の鍛錬をする⑤


Side レオン・カール


 歴史の授業が終わり、体育の授業の前にカティアの元へ向かう。さっきの授業中にどんな考察をしていたのか見てみたくなったからである。


「カティア、さっきの授業中にどんな計算をしていたんだ?」

「あぅ…見ていたのですね…ふ、普段はちゃんと、しっかりと授業を受けているのですよ?」

「はは。分かっているさ。別に怒ったりなんてしないから。それで、どう?」

「えーと、効率を考えると、ウィンドスピアだけを連続で放つか、ウィンドスピアとウィンドを交互に放つのがいいのです。ウィンドスピアを連続でやる方が威力がでるけど、難易度が上がるのです」

「へー、そんな結果になったのか」

「そうなのです。次の体育でさっそくシェーラに提案してみるのです」

「そうか。頑張れよ」

「もちろんなのです!」


 以前、変な三人組にシェーラが絡まれた事件をきっかけに校長先生からシェーラと仲良くやって欲しいと頼まれた。それ以来、たまにこうしてシェーラのいないところでカティアと話す場面が増えたのだが、カティアが本当にシェーラのためを考えていることがよく分かる。シェーラがここまで心を開いている証拠なのだろう。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 最近、体育の授業中にユウ以外のクラスの男子からも魔法の操作について質問されることが増えてきた。この第一クラスには向上心のあり、真面目な男子ばかりのようで、みんな魔法大会出場を目指して真剣に取り組んでいる。

 俺は的に向かって複数の魔法を同時に当てる練習を始めた。まずはファイアを2つ操れるようにと思い、練習の結果両手に一つずつ火球を生みだせるようになった。興味深いのは、特に意識せずにやると、利き手でない左手のファイアが小さくなりがちな点だ。普段から魔法の練習をしている右手の方が魔力によくなじむのだろう。これからはダンベルで左手を重点的に鍛えることにする。

 実は方法があるが知らないだけかもしれないが、基本的に一つの手から一つの魔法しか出せない。よって、3つ以上の魔法を同時に扱うには、一度生み出した火球なり風なりをいったん手から分離させ、空中にとどめた魔法を後から再び制御して飛ばす、ということが出来なくてはならない。


「おう、レオン君。今度はどんな練習をしているんだい?」


 的の前で腕組みをしている俺のもとへ、巡回中のガーフィー先生がやってきて言う。


「ファイアを手から放った後、好きにその軌道を変えることは出来ないかなと思いまして」

「あぁ、出来るぜ。ほら」


 そういってガーフィー先生は何も言わず右手からファイアを出し、俺の体の周りをぐるっと一周させてから的へ飛ばす。そして俺の方へドヤ顔を向けてくる。


「な?」

「どうやったんですか?」

「これはファイアを出す際に普段より少し多く魔力を込めて、ファイアの中にファイアに変換されていない素の魔力を残しておくんだ」

「…つまり?」

「つまりよぉ…何の魔法にもなっていないただの魔力、これを素の魔力って呼ぶんだがな、その塊をまるごと炎で包むんだよ。そして手から離れた後はその素の魔力を少しずつ消費して速度、向きを変えるんだよ」

「…それはつまり、自分の素の魔力であれば、自分の体から離れていても魔法に変換することが出来るということですか?」

「そうだ。まぁ、あまり距離が開きすぎたり、時間が経ちすぎるとそうもいかないがな。そこらへんは練習して掴むしかない。魔物との戦闘だとフェイントのためによく使うテクニックなんだぜ」

「わかりました。ありがとうございます」

「おう、頑張れ」


 俺の肩をポンと叩いて立ち去る先生の背中を見つつ、ひそかに興奮していた。

 面白い。これは面白いぞ。まず魔力は何の魔法にも変換されていない状態で外に出せるということ、そして体外のそれを遠隔で魔法に変換出来ること。これは非常にできることの幅が広がるに違いない。これまでのさまざまな観察の結果、おそらく魔力というのは粒子だ。自分の手から離れた素の魔力を含んだファイアは、その座標に素の魔力を少し残しながら移動するのだろう。そうして自分の手と火球の間に素の魔力の道が出来、その道を通って魔法に変換するという情報が伝わる。そう仮説が立てられる。

 これは、簡単なイメージとしては、蟻が餌を探すときに通った道にフェロモンを残していくことと似ている。蟻が隊列を組んで歩くのは、地面に残されたフェロモンを辿っているにすぎない。これと同じように、手から離れた火球は素の魔力を空中に残しつつ進むのだろう。距離が開きすぎたり、時間が経ちすぎるとうまく制御できないというのは、素の魔力が空中で拡散しすぎてしまうからだと考えられる。


 体育の終わりの時間ギリギリに、ファイアを遠隔で好きなベクトルで動かすことに成功した。中心が空洞の炎の球を作り、あとから中に素の魔力を注入する、というイメージを持つと出来た。ユウが見ている前で、思わず大きくガッツポーズをしてしまった。


「あはは。レオン君がこんなに子供っぽく喜ぶところ、ボク始めてみたよ」

「え…あぁ、そうかもな」


 ユウに指摘されると途端に恥ずかしく感じてしまう。


「普段、レオン君って落ち着いていて大人っぽいから、珍しいなと思って」

「なんだか恥ずかしいから忘れてくれ」

「やだねー。あはは」


 そういたずらっぽく笑うユウはいつも通りかわいいのであった。



8都道府県を除き、非常事態宣言が解除されましたが、完全に今まで通りの日常、とはいかないようですね…新しい生き方、というと大げさに聞こえますが、うまく適応した生き方が求められそうです。

しかし私は現在東京にいるので、まだまだ自粛が続きます…


私の小説を読んで下さる皆さまが健康でいられるよう、心からお祈り申し上げます。


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