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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
3章 天才数学者、魔法大会に出る
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46 数学者、魔法の鍛錬をする④


Side レオン・カール


 体育の授業で俺が魔法大会が決定してしまってから1週間以上が経過した。シェーラは放課後に図書室で魔力を込める方法を模索したり、体育でカティアと相談しながら練習したりと、必死に考えて頑張っているようだ。俺は俺で体育中はひたすらダンベルを用いたトレーニングばかりをしている。魔力で軽くなるダンベルの仕組みの解析はかなり進んできた。

 そんなある日の放課後、俺は久々にペアノ先生の研究室に訪れていた。


「聞きましたよ、レオン君。魔法大会に出場するようで」

「はい。体育のガーフィー先生に出場するよう言われまして…」

「なるほど。では、それまでにもう少しスカイの本を読み進めておきましょうか。もう少し先の理論まで使えば発動可能な魔法の幅が広がるでしょうから」

「ええ。そう思って早く読み進めようと思ったところでした。それで、さっそくなのですが、このページの補題の証明についてなんですけど…」


 1時間近く、事前に読んできた本の内容について議論する。


「まぁ、この章が最後まで読めたので、魔法大会に生かせるような部分はほぼ網羅したといえますね。もう時間も遅いですし、今日はここまでにしましょう」

「ありがとうございました」


 荷物を片付けてペアノ先生の研究室から帰るとき、去り際にペアノ先生から声がかかる。


「魔法大会、いいものを期待していますよ」

「頑張ります」


 この世界で最も尊敬している先生から言われると、とたんに身が引き締まる。この世界における、算術理論、論文の書き方、文献の探し方など、何から何まで教えてくださったペアノ先生。魔法大会という場で恩返しができたらいいなと決意を新たにし、研究棟を後にした。




 研究棟を出て校門へ歩みを進めようとすると、ばったりとシェーラとカティアにでくわした。いまはちょうど図書室が閉まる下校時間だから、時間ギリギリまで図書室にいたのだろう。


「シェーラとカティアじゃないか」

「あっ、レオなのです」

「あら。もしかしてペアノ先生のところに?」

「その通り。そういうシェーラとカティアはさっきまで図書室にいたのか?」

「そうなのです。シェーラと魔力の操り方に関して調べていたのです」

「なるほどね。進展はあった?」

「あったわ。今、すぐに色々と試したくてたまらないの」


 すぐに試したくても、図書室内はもちろん、いたる所で魔法をみだりに使ってはいけないことになっている。シェーラは明日の体育までずっと待たなければいけないのだ。


「レオはどうだったのです?この前、もうちょっと進んだらきりがいいって言っていたのです」

「うん。ちょうど魔法大会に応用できるかもしれない理論の部分が読み終わったんだよ」

「そうなの?そのスカイって分野について私達にもちょっと教えてくれないかしら」

「教えたいのはやまやまなんだけど、いかんせん説明するために必要な言葉が難しくて…簡単な結果なら、例えば同じ属性の魔法を連続で使うとき、上位の魔法のあと下位の魔法を使う時と、下位のあと上位の時だと、前者の方がクールタイムが約2/3になって、少ないなんて結果があったりするね」

「ああ。それは前図書室で調べた魔法理論の本にも載っていたわよ」

「そうなんだ。ただ、俺が読んだ本ではそうなる理由が論理的に証明されているんだ。多分魔法理論の本だと結果が載っているだけでしょ?」

「そうね。でも、これに関しては事実だけ知っていれば十分だと思うわよ?」

「まぁ。そういわれるとそんな気もするけどね。でも、本の理論だともう少し踏み込んだ考察が出来るようになるんだよ。ウィンドのあとウィンドスピアを使うために何秒間待つ必要があるかとか、具体的な場合についておおまかに計算できるようになるし」

「あぁ。それは確かに使えるかもね。ほら、さっきカティアが言っていた話で…」

「使えるのです。その秒数が分かればシェーラがどんな魔法をどの順番に使うべきか参考になるのです」

「分かった。でも、それはまだきちんと計算してないから、明日までになんとか計算してくるから」

「あら、今ぱっと答えられるものではないの?」


 これは算術、数学のよくある話である。理論として、一般の場合についてこうすれば可能である、という方法が学ぶのが座学であり、では具体的にこの場合ではどう適用するのか、ということは別問題なのである。実際に具体的な場合に適用しようとすれば、その場合特有の性質、条件も考慮してうまく計算していかなければならず、決して一般の場合さえ分かっていれば具体例が常にすぐできる、という話ではないのだ。


「じゃあ、明日レオから聞いて、改めて戦略を練るのです」

「ええ、そうね」


 どうやら、カティアは自分が魔法大会に出ない代わりにシェーラが魔法大会に出られるように手を尽くすつもりのようだ。シェーラがどう魔法を使えば的が壊せるかを一緒に考えているらしい。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


 翌朝、登校して教室の席につくとすぐカティアがやってきた。何かを期待してキラキラした目をしている。当然、昨日の帰りに話したクールタイムの話だろう。


「カティア。おはよう。これが昨日話していた、魔法と魔法の間のクールタイムに関するデータね」

「わぁ、ありがとうなのです。これがあれば…!」

「レオ、ありがとうね」

「どの魔法とどの魔法だと何秒のクールタイムなのかを表にまとめたよ。これで魔法の順番を考える参考になるといいんだけど」

「なるのです!ありがとうなのです!」

「カティアはまるで自分のことのように喜んでいるね」

「カティアはこういう数字を見てあれこれ考えるのが大好きなのです。これでもっとシェーラの役に立てるのです」

「ありがとう、カティア。大好きよ」


 がしっと抱き合う二人。仲がよろしいようで。


 その後、1時間目は歴史の授業だったが、ふとカティアの方を見ると、先生の板書を写しているだけとは到底思えないくらい忙しくペンを走らせているのが確認できた。カティアも俺と同じタイプなんだなと思うと、自然に笑顔になるのだった。



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