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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
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37 数学者、授業を受ける⑤


Side シェーラ・キース 体育の授業中


 リラ先生が二人組を作るようおっしゃったから、迷いなくカティアと二人組になる。カティアと真っ先に目があったのが嬉しくて、どちらからともなく笑顔になった。


「シェーラ、行くのです」

「ええ、倉庫に行きましょ」


 カティアと二人で的を運んで、魔法の練習を始める。そういえばカティアが魔法を使うところはまだ見たことないわね。第一クラスに入っているのだから、それなりに魔法ができるのだろうけど。


「じゃあみなさん、まずは的に向かってファイアからやってみましょう。ペアの人と交互にね」

「私からいきますわね。ファイア!」


 顔の大きさほどの火球が飛んでいき、的が大きく揺れる。帰ってきた爆風が髪を軽く揺らす。


「まあ、こんなものですわね。屋敷にいたころより若干小さくなった気もしますが…」

「すごいのです。カティアはここまで大きいのを出せないのです」

「ありがとう。カティアの魔法も見せて?」

「わ、分かったのです」


 緊張した面持ちで的に向かい合うカティア。ぎこちない動作で火球を打ち出す。


「ファイアっ…」


 握りこぶしより一回り小さい火球が的を揺らす。


「…やっぱりちょっと小さいのです。どうしたらシェーラみたいに大きな球が出せるのです?やっぱり魔力量なのです?」

「そうね…魔力量もあるかもしれないけれど、カティアは少し体に力を入れすぎなんじゃないかしら。もう少しリラックスして魔力を手先に集めるのよ。こんな感じに…集めた魔力を固めて飛ばすように…ファイア!」

「わあ、カティアもやるのです……ファイアっ」

「よくなったわね」

「ちょっと大きくなったのです。シェーラ、すごいのです!」

「ふふ。ちょっと教えただけですぐよくなるカティアもすごいわよ」

「えへへ、ありがとう!シェーラ」


 カティアが笑顔になると私も嬉しい。いつか小説で読んだ、『友達の幸せが自分の幸せ』という言葉はこのことを言うのね。



―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―



Side レオン・カール


 体育が終わり、次は歴史の授業だ。一部の女子に熱狂的人気がある犬人族の優しいおじいちゃん先生は今日もにこにこして教室に入ってきた。


「さぁ、今日から本格的に講義が始まりますからね。教科書の10ページから一緒に読んでいきましょう。建国後、初代皇帝が制定した…」


 歴史の授業はどうしても他の授業より身が入らない。教養として歴史が大切なのは分かるが、どうしても授業中に関係ない数学や魔法理論について思いをはせてしまう。ぼんやりと先生の話を聞き、黒板の内容を書きとめつつ、さっきの体育のダンベル魔道具について考える。


 質量が軽くなるとはどういうことか。今まで見てきた魔法は、火や水を生み出すように、無から有への変換が基本で、何かが生まれることはあっても消えることはまずなかった。そのため自分が立てた仮説では、魔力は熱、光といった様々な粒子になりうる量子論的な存在で、魔法を行使することでどの粒子になるかが確定するものだと考えている。そうすると質量が減るというのは、魔力によってダンベルを構成している原子そのものを消していると考えるのは難しい。そうすると、魔力を流すことでダンベルに上向きの力を発生させたと考えるのは…負の重力か?地球の素粒子論では重力を発生させるのは重力子という素粒子だが、電子に対し陽子があるように、重力子に対して負の重力を働かせる素粒子が存在して、それを発生させる魔道具だとしたら…そうすると流した魔力量から取り出されるエネルギー量は…


「時間だね。では今日の授業はここまでにしましょう。よく復習してくださいね。それでは」


 先生の声で思考の海から引き上げられる。考察の続きは寮でやることにしよう。次の授業は聞きたいことがたくさんある魔法技術だ。フーコー先生が持っていた懐中時計や、魔術的、ダンベルの仕組みを質問したいな。




「ねぇレオ、もしかしてさっきの体育で魔術的壊した?」


 魔法技術の教室に移動中、隣を歩くシェーラが思い出したかのようにジト目で聞いてくる。


「壊したね。なんで分かったの?」

「授業の終わりに的をしまう時、割れた的が目に入ったからよ。こういうことをするのはレオしかいないだろうから」

「そうか。行けるんじゃないかと思って魔力の密度を高めたら閾値を超えて壊れちゃったんだよね。ガーフィー先生も笑ってたよ」

「ガーフィー先生は…そういう先生じゃない。豪快だし…」

「まあ、そうね」

「でも、やっぱり先生は壊すことを想定していなかっただろうし、学校の物を壊すのはよくないわよ。ダメよ」

「次から気を付けるよ」


 魔法技術の教室に入る。シェーラにいちゃもんを付けた三人組はいないようだ。フーコー先生はまだ来ていないようだ。先生が早く来て授業開始前に時間があったら質問をしたいな。


 残念ながらフーコー先生は開始時間1分前にやってきたので質問できなかった。


「今日の授業は魔法陣の基礎についてです。まず魔法語とは魔法陣を構成する最小単位のことで…」


 フーコー先生の授業はとてもハイスピードだ。ただひたすら先生がしゃべり続け、黒板に文字を書きなぐる。一度でも聞き逃すと追いつくのが大変だ。逆に言えばそれくらい濃密な授業で、独学での研究では決して気づかなかったであろう視点が学べる。


「さてと…ここまでの内容で質問はありますか…はい、では今日はここまでにします。後から質問などがあれば私の研究室まで来てください。解散」


 そして授業が終わると一目散に出ていってしまった。これは…これからも授業の前後に関係ない魔道具の質問をするのはダメそうだな。ギリギリに来てすぐ帰るさまに、まるで一秒たりとも研究の時間を無駄にしたくないという気概を感じる。研究の邪魔をするのは申し訳ないから、うまくタイミングを作って質問しに行こう。





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