32 数学者、勉強会をする①
Side レオン・カール
変な三人組にシェーラが絡まれた翌日、シェーラ、カティアと帰りながら明日の勉強会について話す。
「明日の勉強会はシェーラの部屋でやるんだったよね?シェーラ、セバスさんがいたら口調の問題が面倒じゃない?」
「それは大丈夫よ。部屋に入ってこないようしっかり言えばいいのよ。それで、昨日話した通り、8時に校門でどう、カティア?」
「カティア、カティアが乗る予定の馬車の時間を調べたのです。そしたら明日は学校がお休みの日だから、昼まで乗り合い馬車がないのです」
「あら。そうしたら昼に集まりましょうか。カティア、最速で何時にこれるかしら?」
「13時ちょっと過ぎなのです」
「では、13時ちょっと過ぎに校門の前集合にしましょ。レオもそれでいいわよね?」
「うん、いいんじゃないか」
「じゃあ決まりね。ああ、明日が楽しみね」
「楽しみなのです。三平方の話、どうしても気になって図書室で本を借りてきたのです」
「お、じゃあ明日はその本も見ながら勉強していこうか」
「いいわね」
「分かったのです。それじゃあ、また明日なのです」
「カティア、ごきげんよう」
「また明日」
「シェーラ、レオ、バイバイなのです」
次の日、昼ご飯を食べて少しゆっくりしてからシェーラと校門に向かうと、既にカティアが待っていた。こちらに気づいたカティアが笑顔を咲かせて走ってくる。
「カティア、待たせちゃったかしら」
「ううん、いま来たのです」
「本は持ってきた?」
「ばっちりなのです」
「では、私の寮に行きましょうか」
「楽しみなのです」
「ええ。うちの領のおいしいお菓子を用意していますわよ」
「それは気になるな」
「さ、ここが私とレオが住んでる寮よ」
「わぁ、とっても大きいのです」
「まあ、10人くらいいるからね」
「それに食堂もありますわよ」
「すごいのです」
「さ、私の部屋はこっちよ。セバスが待っているわ」
「執事さん、すごいのです。失礼のないように気をつけないといけないのです」
「うちのセバスは私以外の人にはとても優しいから大丈夫よ。私に対しては口調や作法の細かい所まで厳しいけどね」
「それもそれでどうなんだ?って思うけどなあ」
「あっ、カティアのこの服装、怒られないのです?大丈夫なのです?」
そういってドアの前で急に心配するカティア。その装いを見てみると、真っ白なブラウスに桜色のスカートと、春を感じさせる可愛らしい出で立ちだ。耳の上の髪を留めるピンクの髪留めが桜の花のようでいいアクセントとなっている。
「ええ、とっても可愛らしいですわ。ね、レオ?」
「そうだね。この髪留めとか、いつもより明るい雰囲気がしていいね」
「あぅ…シェーラもレオも、ありがとうなのです…ちょっと恥ずかしいのです…」
「ふふ。カティアは私と違って背が低いしとても可愛らしいのだから、もっと自分に自信を持っていいのよ?さ、入りましょう」
「おかえりなさいませ、お嬢様」
ドアを開けた瞬間、深くお辞儀をするセバスさんが目に入る。もしかしてドアの前で待ち構えていたんじゃないか?と思いちらりとシェーラを見ると、シェーラにとっても想定外だったようで、ドア越しにさっきまでのやり取りを聞かれたんじゃないかと危惧しているのが見てわかった。カティアはカティアで、初めて会う人の前でガチガチに緊張しているようだ。まあ、従者なんていう存在といままで一切縁がないのもあるし、仕方のないことかもしれない。
「ただいま戻りましたわ。セバス、もしかしてずっとそこで待っていたのかしら?」
「いえ。掃除をしていたのですが、複数人の足音が聞こえたのでもしかしてと思い、ちょうどここへ来た次第でございます」
「そ、そうなのね。えーと、紹介しますわね。私のお友達のカティア・オルティスさんにレオン・カールさんですわ」
「カティアさんにレオンさん、ようこそお越しくださいました。私はシェーラお嬢様の執事のセバスです。どうぞよろしくお願いいたします」
「セバスさん、こんにちは。レオン・カールです。合格発表の日以来ですね」
「初めましてなのです。カティア・オルティスなのです。えと、どうかよろしくお願いします」
やはりカティアの挨拶は少しぎこちなさを感じる。しかしセバスさんは全く意に介さない様子でにこにこしている。
「おやおや、ご丁寧にありがとうございます。お嬢様と仲良くしていただいて心の底から感謝しております。さあ、こちらのお部屋へどうぞ」
セバスさんに連れられてシェーラの部屋に向かう。セバスさんはお茶を出すといって出ていった。
「ここがシェーラの部屋、すごいのです」
「そう?あまり物もなくてつまらないわよ」
「ううん、部屋も広くてベッドも大きいのです。何もかもがすごいのです」
「ふふ、そうかしら。ありがとう」
「お茶とお菓子をお持ちしました」
「あら、ありがとう」
「ありがとうございます」
「わぁ、すごいのです…あっ」
カティアがお菓子を見て思わず声を上げたが、はしたないと思ったようで慌てて口を押えた。セバスさんはそんなカティアを見て微笑みながら、「どうかごゆっくり」と言って出ていった。
「あ、セバス」
「どうしましたかお嬢様」
「私達はこれから勉強会をするの。集中したいから部屋には近づかないで」
「かしこまりました」
セバスさんが小さくお辞儀をしてドアを閉めるのを確認してから俺は口を開いた。
「そんな理由で大丈夫か?」
「大丈夫。問題ないわよ」
次回はがっつり数学要素を増やします。中学レベルの話で、誰でも楽しめる内容になる予定です。




