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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
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番外編6 雑貨屋の少女、夢を見る②


Side カティア・オルティス


一番乗りで入学手続きを終えた後、お母さんとお別れして第一クラスの教室に入ったのです。

全員そろったみたいでランプ先生から挨拶があって、自己紹介が始まったのです。

最初に教室に入ったからか、最初に自己紹介させられたのはとても悲しかったのです…

たくさんお友達が出来たらいいなぁなんて思うのです。


でも、自己紹介を聞いていると、どこかの領主の息子とか、大商会がどうだとか、すごい人ばっかりなのです。

カティアとは大違いなのです…


カティアにお友達が出来るか怪しくなってきたのです…




「よし、これで全員自己紹介が終わったわね。じゃあ今日やるべきことはもう終わりよ。さっき配った1年生が受講できる授業の一覧を見て、どの授業を受けるか決めておくこと。あ、そうそう、屋内運動場で必修科目の教科書を受け取ってから帰ってね。それじゃあ解散!」


ランプ先生が今日は終わりと言ったので、逃げるように教室を出たのです。

カティアは貴族さまばかりのあの場所になんとなく居づらいのです。




屋内運動場の入り口でなぜかレオンさんとシェーラさんと仲良くなったのです。

お二人とも偉い身分のはずなのですけど、カティアにとっても親しく話してくれるのです。

気軽に名前で呼ぶことまで許してもらえたのですけど、恐れ多いので絶対にさん付けは忘れないのです…




帰り道、乗り合い馬車を待っていたらわざわざシェーラさんがやってきてお話してくださった時もあったのです。

シェーラさんは勉強もすごい出来て、エルフだからやっぱり美人で、しかも貴族さまで、完璧超人に見えるのです。

レオさんも言わずもがな、算術で満点をとるくらい天才なのです。

いつも二人は一緒にいるのですけど、そこにカティアも混ざれることが不思議でたまらないのです。




学校が始まって三日目、下校時に校門の前でシェーラさんが男の三人組に絡まれたのです。

大声でシェーラのことを不正だとか貴族の裏金だとか言ってきて、なんだか雰囲気が怖いのです。

周りの人も見てきて、カティアは今すぐにでも走って逃げだしたい気持ちになったのですが、先生が来て職員室に行くことになってしまったのです…

シェーラさんが不正なんかしないことはカティアの目からも明らかなのです。

でもその場ではそれを言い出す勇気はなかったのです…


校長先生が間に入って話を聞くことになったのです。

とうぜん三人組がこっぴどく怒られて、泣きながら帰ってったのです。


「レオン君、カティアさん、ちょっといいかね?」


帰り際、校長先生に言われたのです。


「この国は種族差別を禁止してはいるが、今回のようにまだ差別的な考えを持つひとはいる。さっき話したように、第一クラスにエルフは非常に珍しいからどうしても浮いてしまう。可能な範囲でいいから彼女の味方になってあげてくれ」


カティアはこんなに優しくしてくれたシェーラさんのことは何があっても裏切らないのです。

エルフは美人でも得することばかりではないってことがよく分かったのです。



「私…お二人に本当にご迷惑をおかけしてしまいました。どうお詫びすればよいのか…」


職員室から出てすぐ、シェーラさんが申し訳なさそうに言ったのです。


「シェーラさん…そんなこと、一切気にしなくていいのです。それに、カティアは一緒にいたのに何のお役にもたてなかったのです…」

「うん。気にしなくていいよ。これくらいは全然かまわないからさ」

「…本当ですか?」

「もちろんなのです」

「ああ」

「本当の本当に、私のことをお嫌いになりませんか?」

「当然なのですよ。大切な友達なのです」

「そうだな」

「…私はなんて恵まれているのでしょう…ぐすっ」

「わわわっ、泣かないで欲しいのです」


びっくりしたのです。

あの完璧超人のシェーラさんが泣いたのです。

しかもカティアに抱き着いてきたのです。


「あのようなことを言われるのは初めてで、視線も怖くて…」


はっとしたのです。

今までシェーラさんは完璧超人だと思ってどこか近寄れない部分があると思っていたのだけど、本当はカティアと同じく怖がっていた普通の女の子なのです。

抱きしめると柔らかくて、暖かくて、涙は冷たくて。

カティアと何も変わらないのです。


貴族だからと勝手に決めつけて、本当のシェーラさんを見ていなかったのです。


思えばこれまで何度も身分関係なく気軽に話して欲しいって言われたのです。

貴族の人がそういうことを言うのは建前とか、貴族の常識みたいなもので本当は全然そんなことないとばかり思っていたのです。

でもシェーラさんは本当の本当にカティアと仲良くしたかったのです。

カティアは不誠実だったのです。


気づいたら自然と、いつもお家で妹にしているかのように、シェーラさんの頭をなでなでしていたのです。


「分かるのです。カティアも怖くて何も言えなかったのです。でもシェーラさんは逃げずに立ち向かったのです。かっこいいのです」


今この瞬間、シェーラさんと確かに通じ合っていると分かるのです。

カティアができること。

カティアにしかできないこと。


「カティアにとってシェーラさんは大事な大事なお友達なのです。どんなときも味方になるのです。カティは怖がりで、人とお話しするのもちょっと苦手ですけれど、それでも、一緒にいることができるのです」




「カティアさん、いいえ、カティア。私のこと…シェーラ、って読んで?」

「あ…も、もちろんなのです。じゃあ…えっと……シェーラ」

「うん。カティア」

「えへへ…なんだか、体がむずむずするのです」

「うふふ。私もよ、カティア」


こうしてカティアはシェーラと本当のお友達になったのです。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


「それじゃあ、カティアはこっちの道なのです」

「うん、また明日」

「それじゃあカティア、ごきげんよう」

「バイバイなのです」


王立魔法学校に勉強して入ってよかったのです。シェーラだけでなく、レオとも気軽に話せるようになったのです。

道を曲がる直前に、振り返ってみると、まだ二人がそこにいたのです。

カティアはそれがとても嬉しくて、大きく手を振ったのです。


「カティアは二人と友達になれて世界で一番幸せなのです」


かなり離れているから聞こえないだろうけど、二人を見ながらそうつぶやいたのです。


二人が笑って手を振り返してくれたのです。



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