番外編5 雑貨屋の少女、夢を見る①
Side カティア・オルティス
カティアには妹のサリアがいるのです。
サリアが生まれてから、カティアはサリアのお世話と雑貨屋の店番を手伝うようになったのです。
お父さんは遠くの領や国外に出張してさまざまなものを買い集めることが多かったのですが、サリアが生まれてからは出張が減ったのです。
それでも毎日お母さんもお父さんも忙しそうだったのです。
お母さん、お父さんの役に立ちたくて、精一杯合計金額とおつりの計算を練習したのです。
そしたら来てくれたお客さんにおつりの計算がはやいと褒められて、お母さんからもたくさん感謝されたのです。
それが嬉しくて、ますますお手伝いを頑張るようになったのです。
ある日、お父さんが算術の本を買ってくれたのです。
ちゃんとした勉強ができる本は高いってことは知っていたので、ずっと欲しくても言わずに我慢していたのです。
それなのに買ってくれたのが嬉しくて、何度も何度も読み込んで勉強したのです。
最初は計算がもっと早くなってもっと褒められたいと思っていたのですが、だんだんと算術そのものが面白くなってきたのです。
「カティアは勉強の才能があるんじゃないかね。お父さんもお母さんも魔法はあまり出来ないけど、カティアなら魔法学校に入れちゃうかもねぇ」
そんなことをお父さんに言われたのがきっかけで、魔法学校というものに興味をもったのです。
いま住んでいるところから一番近い魔法学校は評判もかなりいいそうなので、そこに通ってみたい、と言ってみたのです。
そしたらお母さんとお父さんは少し難しい顔をして、何とか通うためのお金を用意してみる、と言ったのです。
そこで初めて高いお金がかかることを知ったのです。
とにかく頑張って勉強したのです。
本を買ってもらうのはあきらめて、古本屋で立ち読みしたり、少しお金はかかるけど図書館で本を借りたりして勉強したのです。
でも、しばらくしてから、お母さんに、
「カティア、ごめんね…ううっ…なかなかお金がたまらなくて…あそこの魔法学校に通わせてあげられそうにないのよ…頑張って勉強しているのに、ごめんね…ごめんね…」
そう泣きながら言われたのです。
それでもカティアは諦めきれずに、何とかならないかと思っていろんな魔法学校を調べたのです。
タダでもらえる入学案内で王都にある魔法学校を比べていると、王立魔法学校だけ、成績優秀者は学費が大幅に免除されることを知ったのです。
でも王立魔法学校は一番入るのが難しい学校。
しかもその中で成績優秀者じゃないといけないのです。
でもカティアにはその道しか残されていないのです。
「カティア、王立魔法学校の第一クラスを目指すのです。第一クラスなら、お金がほとんどかからないのです」
そういって入学案内を見せて宣言したのです。
お母さんはカティアにごめんねと謝りながらも応援してくれて。
お父さんも出来るとこまで頑張ってみなさいって言ってくれたのです。
店番でお客さんがいない間はずっと勉強したのです。
たまに常連のお客さんに
「勉強しててえらいねぇ…」
「王立魔法学校?すごいねぇ。受かったら将来は安泰だねぇ」
なんて褒められることもあったのです。
サリアのお世話。
雑貨屋の店番。
王立魔法学校のための勉強。
毎日夜遅くまで起きる日が増えたのです。
夜更かしが悪かったのか、たまに体調を崩すときもあったのですが、入試の日までただやるべきことをやったのです。
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「今日までよく頑張ったわね、カティア。お母さんはカティアが誰よりも努力しているってことを知っているから。安心して受けてきなさい」
「行ってくるのです」
乗り合い馬車に揺られて、とうとう王立魔法学校に着いたのです。
必ず第一クラスに入る、そう決意しながら校舎に入ったのです。
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気づいたら、入試が終わっていたのです。
入試のことはほとんど思い出せないのです。
とにかく夢中で出来ることをやったのです。
魔力量は、人族の平均くらいだと言われたのだけは覚えているのです。
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「お母さん、やっぱり合格発表に来るのが早すぎたのですよ。まだ門が空いていないのです」
「まあまあ。いいじゃない。カティアが最初の入学者になればいいのよ」
「そうなればいいのですけど…」
「ふふっ。大丈夫だって。カティアなら絶対大丈夫よ。お母さんの自慢の娘だもの」
「…でも、やっぱり心配なのです」
「大丈夫よ、ほら」
「あううぅ…ほっぺを引っ張らないで欲しいのです…」
「門を開けまーす。合格発表は突き当りを右でーす」
「さぁ、カティア、行くわよ」
「分かったのです」
お母さんと真っ先に合格発表の掲示板に向かうのです。
突き当りを曲がってすぐ、お母さんが急に立ち止まりました。
「うそ…」
「お母さん、どうしたのです?」
「あったわよ!ほら!あそこ!こっち!」
「あわわ、引っ張らないで欲しいのです…」
「ほら!上から二番目!」
「ほんとなのです…やったのです!」
カティアが番号を見つけるや否や、お母さんに抱き着かれたのです。
「カティア…ううっ…よくやったわね」
「お母さん…急に泣いちゃったのです」
「ぐすっ…本当はね、とてもとても不安だったの。お金の問題もあってカティアにはずいぶん無理をさせちゃったのが申し訳なくて、悲しくて…」
「お母さん、さっきまであんなに明るかったのに…」
「ただでさえ大変なカティアに余計な心配をかけたくなくて…普段から強がってたのよ…ごめんね…」
「お母さん…謝らないで欲しいのです…ううっ」
とても嬉しくて、カティアも一緒に泣いてしまったのです。
「お母さん、そろそろ移動しないと他の人の邪魔になっちゃうのです」
「…そうね。ごめんね。だめなお母さんで」
「ううん。全然そんなことないのです。カティアにとって世界一大切な、大好きなお母さんなのです」




