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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
34/168

30 数学者、トラブルに巻き込まれる③


・教会について


 ザビンツ国各地にある教会はガイア―ル教の聖職者が住まう場所である。聖職者は毎日ガイア―ル神の像を前で祈り、教典を読み、奉仕活動をして一日を過ごす。教会の役割はケガや病気の治療、孤児の養育、結婚式の執り行いなどが存在する。ガイア―ル教の聖職者、主に位の高い者は中級以上の回復魔法を習得していることが多く、さらに聖女と呼ばれる者は特別な魔法「オールキュア」が使える。


―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.20


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


Side レオン・カール


「シェーラさん、どうしたのです?」

「帰らないのか?」


 カティアと俺が立ち止まったままのシェーラに声をかける。シェーラは胸の前で両手をぎゅっと握り、絞るように声を出す。


「私…お二人に本当にご迷惑をおかけしてしまいました。どうお詫びすればよいのか…」

「シェーラさん…そんなこと、一切気にしなくていいのです。それに、カティアは一緒にいたのに何のお役にもたてなかったのです…」

「うん。気にしなくていいよ。これくらいは全然かまわないからさ」

「…本当ですか?」

「もちろんなのです」

「ああ」

「本当の本当に、私のことをお嫌いになりませんか?」

「当然なのですよ。大切な友達なのです」

「そうだな」

「…私はなんて恵まれているのでしょう…ぐすっ」

「わわわっ、泣かないで欲しいのです」

「な、泣いていませんわ」


 そういって顔をぐしゃぐしゃにしながらカティアに抱き着くシェーラ。背が低いカティアは精一杯背伸びをしてシェーラを受け止める。


「あのようなことを言われるのは初めてで、視線も怖くて…」

「分かるのです。カティアも怖くて何も言えなかったのです。でもシェーラさんは逃げずに立ち向かったのです。かっこいいのです」


 カティアがシェーラの頭をなでる。


「カティアにとってシェーラさんは大事な大事なお友達なのです。どんなときも味方になるのです。カティは怖がりで、人とお話しするのもちょっと苦手ですけれど、それでも、一緒にいることができるのです」

「カティアさん…」


 二人の間に確かな絆が生まれる。俺はただそれを黙ってじっと見る。

 シェーラを抱きとめるカティアは優しく目を閉じ、柔らかい笑みを浮かべていて、それはまるで絵画に描かれる聖母のようだった。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


「そろそろ帰ろうぜ」


 しばらく空気になるよう徹していたが、そろそろいいだろう。そもそもここは校舎の廊下だし先生や生徒に見られるぞ。

 名残惜しそうにゆっくりと離れる二人。お互いの背中に回していた手が自然と重なり、握り合う。女の子同士がよく手をつなぐのはどの世界でも共通なのか。


「カティアさん、いいえ、カティア。私のこと…シェーラ、って呼んで?」

「あ…も、もちろんなのです。じゃあ…えっと……シェーラ」

「うん。カティア」

「えへへ…なんだか、体がむずむずするのです」

「うふふ。私もよ、カティア」


 なにこいつら。恋人同士か?と言いかけたが、ぐっとこらえる。


「よかったな、カティア。シェーラはよほど仲がよい人にしか友達口調を使わないらしいからな」

「そうなのですね。嬉しいのです」

「せっかくだし俺のこともさんを付けないで呼んでよ」

「え、いいのですか?」

「いいぞ」

「いいんじゃないかしら。そもそもレオは最初から砕けた口調だし」

「分かったのです…レオ」

「うん、仲良くなった証拠だな」

「ええ。こうやってお友達ってできるのね。カティアもレオも、私にとって初めての同い年の友達よ」

「カティアも初めてなのです」

「よく考えると俺もだな」

「ふふ。同じね」

「私達、これって遅いのです?」

「さぁ?比較できるような友達がいないもんなあ」

「ふふ、確かにね」

「言われてみればそうなのです」


 校舎を出る。二人は手をつないだままだ。


「…そうだ、シェーラの部屋でいつかやろうって言っていた勉強会、いつやる?そろそろいいんじゃないかと思うんだけど」

「そうでした。勉強会、はやくやりたいのです」

「そうね…明後日がいいんじゃないかしら」

「土曜日で学校がないし、いいんじゃないか」

「分かったのです」

「場所は私の寮の部屋ね。集合は…朝ごはんを食べた後、8時に校門でどうかしら」

「異論なし」

「それがいいのです」

「まあ、詳しいことはまた明日の帰りに話しましょ」




「それじゃあ、カティアはこっちの道なのです」

「うん、また明日」

「それじゃあカティア、ごきげんよう」

「バイバイなのです」


 カティアが乗り合い馬車のりばの方へ軽快な足取りで走っていく。二人で小さくなっていくカティアの背中を見届ける。


「カティアと仲良くなってよかったね」

「ええ、本当に」


 少し走ったカティアがこっちを振り返り、笑顔で大きく手を振ってくる。自然と笑顔になりながら、二人で手を振り返す。


「さ、帰りましょうか」

「ああ」


 曲がり角を曲がってカティアが見えなくなってから、俺たちは寮に向けて歩き出した。




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