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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
32/168

28 数学者、トラブルに巻き込まれる①


・宗教について


 ガイアでは全土でガイア―ル教という宗教が信仰されている。ガイア―ル教は、ガイア―ル神と呼ばれる神の教えを尊重する宗教で、ザビンツ国の建国に伴い、地域によって微妙にことなる教義が統一されて今に至る。他の神に対して比較的寛容な宗教であり、地域や種族によってはガイア―ル神に加えて土着の神も信仰されることがある。ガイア―ル教の教えに厳しい戒律などはほぼなく、貧しい者に施しを与えるような、他者を慈しむ精神の育成が重要視される。


―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.19


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


Side レオン・カール


 シェーラ、カティアと三人で下校しようと校門に向かうと、魔法技術の授業でシェーラを敵視していた三人組が待ち伏せをしてのに気づいた。おそらくシェーラのことを待っているのだと推測されるが、シェーラはすっかりおびえて俺の後ろに隠れているし、カティア困った顔をしている。


「カティア、あの三人組がさっき話した怪しいやつらなんだよ」

「そうなのですね。あまり関わりたくない雰囲気がするのです」

「シェーラ、どうする?とりあえずいったん引き返すか?」

「…いえ、私は逃げないわ。行きましょう」

「本当に大丈夫なのです?あの人達、すごい顔がこわいのです」

「私はキース家の名に恥じない行動をとらなければなりません。何が来ようとも切り抜けて見せます」

「いいのか?俺とカティアさえ黙っていればシェーラが逃げたなんてことは誰の耳にも入らないし、別に逃げても構わないと思うんだがなあ」

「そうなのです。カティアはシェーラさんの味方なのです」

「お二人とも、ありがとうございます。ですが、もう覚悟を決めました。行きましょう」


 そう言い切ったシェーラがずんずんと校門に向かう。俺とカティアは一瞬顔を見合わせ、すぐに後を追った。

 やはり校門にいた三人組はシェーラに用事があったらしく、こちらに気づいた彼らは俺たちの前に立ちふさがった。三人組の真ん中に立つ、ひと際ガタイの大きい男が口を開く。


「おい、エルフ」

「…はい、何の御用でしょうか」


 シェーラはゆっくりと振り返り、凛々しく返事をする。よく名前でなくエルフと呼ばれたことに怒らなかったな。


「不正して第一クラスに入って楽しいか?」

「………はい?」

「いいよなあ、貴族さまはよぉ。お金の力で第一クラスに入れるんだからな」

「俺たち平民をバカにしてるのか?」

「そーだそーだ」


 三人組の取り巻きも続けてシェーラを非難しだす。


「いえ、私は入試の結果で第一クラスに入りました。誓って不正などはしておりません」

「嘘だ!」

「なら証拠を見せろよ!」

「そーだそーだ!」


 三人組の語気が強まる。下校しようとする生徒が不審に思い立ち止まってこちらに目をやり、カティアは居心地悪そうに小さく縮こまる。


「証拠も何も、不正をしていないのですから。先生に入試の結果が正しいことを確認されてはどうでしょうか?」

「適当なことを言うな!お金を払っているなら先生は嘘をつくに決まっている!」

「無実を証明できていないじゃないか!」

「やっぱりこのエルフは不正入試で第一クラスに入ったんだ!」


 どういうことだ。シェーラと一緒に授業を受けてきた身からすると見当違いも甚だしい。たまらず俺は口を挟んだ。


「なあ、ちょっといいか?」

「ん?なんだお前は!」

「シェーラが不正をしたって言っているようだが、具体的にどんな不正をしたんだ?」

「裏金だ!大量のお金を握らせて第一クラスに進学させたんだ!」

「そーだそーだ!」

「ちょっとうるさいから声を小さくしてくれ。それで、あんたらはどうやってそれを知ったんだ?」

「そんなの、エルフのくせに第一クラスにいること自体がありえないんだから不正をしたにきまっているだろ!」

「は?それだけか?物的証拠とかはないのか?」

「金の力でもみ消されているに決まっている!」

「エルフのくせに貴族になるからこういうことをするんだ!」


 これはまずいぞ。三人組が大声で主張し続けるものだから、周りでみている野次馬が騙されかけている。次第に三人組よりも俺たちの方に怪しむ視線が集中しているのが分かる。たくさんの視線にさらされてカティアは完全に目をまわしているし、このままでは取り返しのつかないことになりかねない。


「ここで立ちっぱなしですると他の人の迷惑にもなるし、校舎のどこかの教室で話さないか?」

「逃げるのか?」

「お前も不正をしたエルフの仲間なのか!」

「いや逃げないって。場所を変えて話そうって言っているんだよ。場所を変えたらまずいことでもあるのか?ないだろ?」

「話をそらすな!そういって逃げようとするんだろ!」


 こいつら…こっちの話をまともに聞く気がないようだ。どうすりゃいいんだ。


「おい、そこの君たち!」


 途方に暮れかけていると、校舎から先生が小走りでやってきた。助かった…


「何をしているんだ?」

「この三人組がシェーラに向かって言いがかりをつけてきたんです」

「いいや違う!あっちが不正を認めないんだ!」

「いえ。私は決して不正などしておりません」

「はぁ…毎年こういうトラブルが必ず一件はあるんだよなあ…君たち全員職員室に来なさい」


 こうして吹っ掛けられた喧嘩は一時休戦となった。ただ一緒にいただけなのに職員室に行くこととなってしまったカティアがかわいそう。そんなことを考えながら先生の背中を追った。職員室に移動する間、シェーラはずっとうつむいたままだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 3人組が明らかに、教師や学校を侮辱していることになるんだけど。 それと、「エルフ差別するのは王国法に違反している、君たちは反逆者だ」くらい言わないと。 そういう指摘が出来ないあたりが、主人公…
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