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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
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27 数学者、寮生活を始める⑤


・食文化について その3


 美味な食材は高くなる傾向があるため、ガイアの食文化は貴族中心に発展してきた。さまざまな調理法、調理に適した魔道具の開発により、次第に一般の人々もおいしいものが食べられるようになり、限られた食材でどれだけおいしい料理が作れるかをより考えられるようになった。


―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.19


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


Side レオン・カール


シェーラと算術の教室に入る。先ほどの魔法技術と比べ、明らかに人が少ないのがすぐ分かる。先生はまだいないようだ。少し後ろの方の席にカティアが座っているのを見つけたので、そちらへ向かう。


「あ、シェーラさんにレオンさん、こんにちはです」

「ごきげんよう」

「?シェーラさん、いつもと様子が違うのです」

「ああ、それはね……」


「そうだったのですか…」

「そう。理由が分からないのが一番怖いところなんだ」

「ええ…私、気づいていないだけで何かしてしまったのでしょうか…」

「シェーラさん…カティアは必ずシェーラさんの味方なのです」

「ありがとうございます、カティアさん。少し気が楽になりましたわ」


 そんなことを話していると算術の先生が入ってくる。分厚い教科書の山を重そうに抱えている。教壇にドスンと置いた先生が一息ついてから口を開く。


「こんにちは。算術を担当するジョージ・ペアノです。普段は算術学者としてスカイという数の世界を研究しています」


 立派なあごひげを持つおじいさんは黒板の低い位置にゆっくりとジョージ・ペアノと書いた。

 ちょっと待て。ペアノだって?そしてスカイという地球にない概念。非常にワクワクする。


「まずは教科書をここから一人一冊持って行ってください」


 教科書を受け取って中を開いてみる。簡単な関数、初等幾何があるのは地球の教科書と同じだな。小学校高学年から中学3年までの数学を魔法学校の3年間でやるようだな。かなり進んでいる。


「この本全てが3年間で学習することになる内容です。ここまでの内容が分かれば、魔法技術や経営を深く勉強することができるようになります。魔法学校の選択授業で魔法技術や経営をとっている人は、必要に応じてこの教科書で勉強するとよいでしょう」


 おお。ただ算術の理論を教えるだけではなく、他の分野にどの知識が使われているかも詳しく教えてくれる先生のようだ。これは期待。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


「…そろそろいい時間ですかね。では最後に一つ問題を出します。さっき配った紙に解答を書いた人から提出して終わりにしてください。えー問題は、魔力量50を持つ人が…」


 初回授業だから問題も簡単だ。地球の記法とは異なる記法がこの世界では使われていることがあるからいちいち書き方を脳内で変換するのが面倒だがすぐに書き終わった。周りを見てみるとまだ誰も終わっていないようなので、別解でも書いて待っていようかな。

 別解を書き上げると、カティアができたようなので、教壇に向かうカティアの後ろについていって一緒に提出した。すると提出した紙に書かれた俺の名前を見た先生が口を開く。


「君がレオン君かね?」

「はい、そうですけど」

「おおそうか。算術の入試で満点を取ったということで、教師の間で話題になっていたのだよ。何せあの入試で算術の満点はここ20年近く出ていなかったからね」

「そうなんですか」

「算術の最後の問題。ここの卒業生でも半分くらいは解けるか怪しい問題なんだけど、毎年遊びでいれているんだよ。なのに君は完璧に答えられた。今まで誰の元で算術を習っていたんだね?」


 うっ、これは困った。自分の前世が地球で数学を研究していたなんて言えない。どうやってこの場を切り抜けようか…怪しまれないように無難な嘘をついておこう。


「屋敷にあった算術の本を読んで、所々家庭教師の先生に聞きながら独学で学びました」

「ほう、よほど優秀な家庭教師に教えてもらったんだね」


 関心した顔をしている。少し心が痛むけどうまく騙せたようだ。これ以上しゃべるとぼろが出そうだと思ったので自分の席にそそくさと戻る。カティアもシェーラも課題を提出したので、三人でそのまま下校する。


「シェーラさんとレオンさんは算術の前は何の授業だったのです?」

「魔法技術ですわ」

「そうなのですね。どんな授業だったのです?」

「そうですわね…かなり難しかったですわ。フーコー先生という先生が担当されたのですけど、とても説明が早くてノートをとるのが忙しかったですわ」

「確かにすごい早口だった。あと見たことない時計みたいなものを持ってた」

「あれはフーコー先生が去年発表した懐中時計ですわ。時計を持ち運べるくらい小さくするのに初めて成功したそうですわ」

「へぇ、それはすごいな」

「懐中時計、名前だけ聞いたことあるのです、実物を見てみたいのです」

「まだフーコー先生とごく一部の人しかもっていないそうですわ。確か、この国にはまだ10個もないとか」

「ということは、とてつもなく高いんじゃないか?」

「ええ、確か…以前オークションに出された時は1000万ギルで落札されたそうですわ」

「わぁ、とっても高いのです」

「そんなに高いのか…」

「ええ、到底手が届きそうにない額ですわね…」

「俺たちが卒業したころにはもっとたくさん作られて安くなっているといいけどなぁ」

「そうですわね」

「カティアはそれでもいいのです。高いものを持っていると無くしそうで怖いのです」

「ふふ。その気持ちも分かりますわ」

「確かにな。うっかり壊したりするのも怖いよな」

「そうなのです!だからカティアはやめておくのです」


 カティアと一緒に他愛もない話をしているとシェーラもすっかり元気になって、笑うようにもなってきた。

 分厚い雲が太陽を覆い隠している。通り雨が降ったのか、校門へ向かう道にはいくつかの小さな水たまりができていた。それらをよけつつ校門に向かうと、



「ねぇ、レオ」

「ん?」

「ほら、あそこ…」


 校門の近くで誰かを待っているのをシェーラが見つけ、俺の袖を引っ張る。魔法技術のときにシェーラをにらんでいた三人組がそこにはいた。シェーラのことを待っているのかもしれない。どうしようか。シェーラがおびえている顔をしているし、カティアもどうすればよいか分からずうろたえている。どうしようか…




ジョージ・ペアノ先生は、地球の数学者ペアノからとっています。

数学者ペアノは自然数を集合論的に構成して公理化したすごい人です。

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