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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
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26 数学者、寮生活を始める④


・食文化について その3


 美味な食材は高くなる傾向があるため、ガイアの食文化は貴族中心に発展してきた。さまざまな調理法、調理に適した魔道具の開発により、次第に一般の人々もおいしいものが食べられるようになり、限られた食材でどれだけおいしい料理が作れるかをより考えられるようになった。


―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.19


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


Side レオン・カール


 歴史の授業が終わり、選択授業が始まる。今日は魔法技術と算術があるようだ。非常に楽しみだ。


「レオ、魔法技術の教室に向かいましょ」

「うん行こう。教室の場所は…302教室。てことは3階か」

「ええ、授業中回復魔法を使っていたレオならもう階段は大丈夫でしょ?」

「んんっ、気づいていたんだ」

「さすがに隣にいれば気づくわよ。さ、こっちよ」


 シェーラについていって教室に入る。二、三人で固まって座っているグループがいくつか見られる。選択授業はクラス分け関係ないのもあり、見たことのない顔ばかりだ。


「おい…」

「ああ…」

「……だな…」


 こちらに気づいたある人族の集団がひそひそと何かを話している。目つきが厳しく、あまり歓迎されている様子はない。


「なんだか居心地がよくないわね」

「シェーラはあの人達が誰か知ってる?」

「知らないわ。少なくとも第一クラスではないわね」

「そう。まあ、実害がなければいいか」

「…そうね、座りましょ」


 嫌な感じのする集団とは一番離れた席に座ると、すぐに先生が入ってきた。眼鏡をかけた男の先生で、教壇に荷物を置くやいなや黒板に名前を書きながらしゃべりだす。テンポが速いな。


「こんにちは。えー、今日から魔法技術の授業をします、ジョージ・フーコーといいます。えー、魔法技術の授業ということで、魔道具の基本的な原理や魔法陣、そしてさらに先に進んだ話として、魔道具設計なんかについても講義をする予定です。

えー、まず魔道具は…とその前に、教科書を配りますね」


 慌ただしくチョークを置いたせいでチョークが割れる。しかしフーコー先生は全く気にせず教科書を取り出し配り始める。

 誰が見ても分かる。この先生は授業がうまい先生というよりは、研究に特化したプロの研究者っぽさがある。ジョージ・フーコーとだけ黒板に書き、生徒の方はほとんど見ずに黒板の前を左右に歩きながらしゃべり続ける。


「はい、教科書は行き渡りましたかね。この教科書は勿論授業中にも使いますが、どちらかというと復習に使ってください。

えー、それで、魔道具というのは、どう定義されているかというと…」


 とどまることなくしゃべり続け、重要な言葉をたまにメモ程度に書くだけの板書。これはお世辞にも「いい授業」ではないかもしれないが、耳から入る情報の量は濃密で、フーコー先生の頭の回転が非常に速いことがよく分かる。思考が速すぎて、考えていることを漏らさず口に出すには早口でなければならず、黒板に長々と文章を書く暇すらない。いわゆる天才タイプだ。



「えーいまの時間は…もう終わるようですね。では今日はここまでにします。今日は初回ということで、特に宿題は指定しません。しいて言えば、教科書をぱらぱら読んで、こんなことを学ぶのか、ということを確認してみてください。今日の授業について、何か質問はありますか?……ないですね。それでは今日は終わりにします」


 フーコー先生はとどまることなく時間いっぱいしゃべり続け、終わったらすぐ帰っていってしまった。驚いたのは、懐中時計のようなものを見て時間を確認していたことだ。魔法学校には敷地中央にそびえたつ時計塔でしか時間が確認できないものだと思っていたが、さすが魔法技術の先生、自分専用の時計を開発していたようだ。次回の授業の終わりに懐中時計について聞いてみるか。

 フーコー先生がいなくなり、張り詰めていた空気が次第に緩んでいく。みんな濃密な授業でどっと疲れたようだ。シェーラも疲れているようだ。


「いやー魔法技術はかなり大変な授業になりそうだね」

「ええ。フーコー先生がとても偉大な先生であることはよく分かったわ」

「そうだね。あの喋り方からして天才っぽいよね」

「この授業はついていくだけで精一杯かもしれないわね…」


 のんびり片付けをして、時間割の紙を見て次の算術の教室を確認していると、授業前に変な目で見てきた三人組が俺たちの座っている前を通り過ぎる。


「…!」


 シェーラが一瞬びくっとする。三人組は明らかにシェーラをにらんでいる目つきをしていた。知り合いでないはずのシェーラにここまで敵意むき出しの視線を向ける理由が分からなかったが、座ったままのこちらが声をかける暇もなく三人組は教室を出ていってしまった。


「シェーラ、あの三人とは本当に知り合いじゃないの?」

「…え、ええ…知らないはずだけど…」

「あそこまで敵意むき出しな目つきをするなんて、よほどのことがないと無理だと思うんだがなあ」

「本当に心当たりがないのよ…怖いわ…」

「…うーむ、考えても分からないならとりあえず算術の教室に行こうか。同じ階だってよ」

「え、ええ。行きましょう」


 次回以降の授業ではこのようなことが起きなければと思いつつ、二人で算術の教室へ向かう。


フーコー先生


ザビンツ国で最も多くの魔道具を考案、設計した天才。眼鏡をかけた男の先生。早口。

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