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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
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番外編4 お嬢様、下校する


Side シェーラ・キース


「レオはこのまま帰るの?」

「いや、ちょっと図書室を覗いてから帰るよ」

「そう。わかったわ。私は先に帰るわね」

「うん。じゃあね」

「ごきげんよう」


朝、セバスに向かって『今日から一人で登下校します』と見栄を張った。

ついにセバスから離れて一人で、自由な学校生活を送れると思ってそう宣言しちゃったのよね。

でも後悔はしていないわ。

レオは用事があるみたいだから先に寮に帰りましょ。




校門を出て、振り返り校舎を仰ぐ。

屋敷の何倍も大きい校舎。何倍も広い敷地。

つまらなくて狭い屋敷からついに抜け出すことができた。


待ちに待った、夢にまで見た学校生活。

物語の人物は帰り道に公園で花を愛でたり、喫茶店でご学友と楽しく話に花を咲かせたりしていたわね。いつか自分もそんなことができるかしら。



さ、寮に帰りましょう。

この道は比較的大通り。

他の下校する同級生や先輩方もたくさん歩いているわね。

たしかこちらに乗り合い馬車の乗り場があるんだったかしら。


すぐそこですし、少し覗いてみましょう。




「あら、カティアさんではありませんの」

「あ、シェーラさん、こんにちは」

「ごきげんよう。乗り合い馬車を待っておられるのですね」

「そうなのです。シェーラさんも乗り合い馬車に乗るのですか?」

「いえ、たまたま気になって覗いてみたらカティアさんを見つけましてね」

「そうだったのですね。確かに、よく考えてみたらシェーラさんのようなお嬢様は乗り合い馬車なんて使うわけないのです…」


やはりカティアさんはまだ私のことを貴族だからと、すこし距離を置いているところがありますわね。気にせず気軽に接して欲しいと何度か伝えていますのに。


「…あ、乗り合い馬車が来たのです」

「もうお話はおしまいですわね。もっとお話ししたかったのですが、残念ですわ」

「カティアも残念なのです。また明日、たくさんお話するのです」

「ええ、そうですわね」

「それじゃあ、バイバイなのです」

「ごきげんよう」


それにしても、まさかカティアさんのご実家の雑貨屋が一度魔物によって倒壊しているだなんて。

たとえ王都であっても、凶暴な魔物の危険があるのね。

これから毎日一人で登下校するけど、もし魔物と遭遇しても、私はまだ戦えないわ。

これは体育や魔法理論の授業をもっと真剣に勉強しなきゃってことね。



…そんなことを考えながら歩いていると、知らない道に入り込んでしまった。

どうしよう。

とりあえず来た道を戻ろう。


たしかここまで戻れば乗り合い馬車乗り場が…あら?

……まさか、迷子??


背中に汗が流れて、着ている服がぴったりとくっつくのが気持ち悪い。

周りには誰もいないし、お店もない。

どうしよう。


いったん落ち着こう。

私はもう10歳。

そう、王立魔法学校第一クラスに入る者として、この程度のトラブルに負けられないわ。


……はっ、乗り合い馬車が近づく音が聞こえる。一つ向こうの道だわ。


生徒が何人か乗った馬車が前を左から右へ通り過ぎた。これで今馬車が来た方向を歩いていけば学校に近づくはず。

よし。ちゃんと頭を使って解決できる。


…まだ着かないの?

このまま帰れなかったらどうしよう。

カティアさんの話が頭をよぎる。

魔物に襲われたらどうしよう。


急がないと。


…きゃ!


駆け出したら、段差につまづいた。

地面についた両手が痛い。


皮がめくれて血が出た両手を見てじわりと視界がにじむ。

私はまだ一人じゃ何も出来ないのかしら…


目に涙をためながら歩く。

一人でもどうにかするしかない。




向こうに校舎のてっぺんが見える!

…行きましょ。



そうだ、レオが図書室にいるかもしれない。

もしレオが帰っていたら、本当に終わりかもしれない。

どうかいますように。



どうかお願いと祈りながら図書室のドアを引く。

…いた!


「いや、あのね……帰り道、分かんないの」

「ええ……っと、外で話そうか」



「……うん…だから、一緒に帰ってくれない?」

「もちろんいいよ。ただ、さっき読んでいた本を借りるまで待ってくれる?」

「ありがとう。もちろん待っているわ。

その、もう二度と寮に帰れないんじゃないかと思ったの…一人で歩くのって初めてだって思ったら怖くなっちゃって、それに万が一魔物に出会ったら…」

「あぁそうだね、大丈夫大丈夫、急いで借りてくるから待ってて」


迷子になったなんて恥ずかしいことはぼかして話した。

図書室に戻るレオの背中はとても大きく、頼もしかった。

安心したと同時に、これまでせき止めていた何かが決壊して涙が頬を伝う。

だめ、レオにこんなカッコ悪い姿見せられない。


しきりに目をぱちぱちさせ、とにかく涙をぬぐう。

…よし、いつもの私に戻ってきた。

大丈夫。

レオにばれていないはず。


「おまたせ、帰ろうか」

「!…ええ、案内お願いするわね」


ばれていない…のかな?




レオと校門を出る。

校門を出るのは二回目。

いつの間にか太陽があんなに低くなっている。

泣いて充血した目を見せたくないから、横は向かない。


「…綺麗な夕焼けね」

「そうだね。自分の影が3.8mくらい伸びているから太陽高度は約20°だね」

「…雰囲気が台無しね」

「シェーラの影は4mくらいあるし、身長が1m40cmくらいだと分かるね」

「やっぱりレオって変わっているわね、もう」


レオがおかしくて、つい笑ってしまった。

レオは頼りになるのかならないのか分からないわね。

でも一緒にいるとなぜか安心する。



レオは…私のことをどう思っているんだろう。


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