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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
23/168

20 数学者、授業を受ける①


・身分について その2


 ザビンツ国において王族とその他身分の間には絶対的な壁が存在する。それは初代国王からの血がつながっているかどうかという条件による。それ以外の聖職者、貴族、平民は身分が変わる可能性がある。聖職者であれば教会に修道士または修道女として入ること、貴族であれば国王に任命されることで、その身分に変わることがある。


―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.11


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


Side レオン・カール


「よく来たな!俺は魔物討伐局のガーフィーだ。これから三年間かけて体の使い方、魔力を使って魔物と戦闘する方法を学んでもらう。覚悟はいいな!?」

「こんにちは。私も同じく魔物討伐局のリラです。女子の体育は私が担当します。よろしくお願いします」


 魔物討伐局という組織から来た人が体育の授業を受け持つようだ。二人の先生について、男性は非常にガタイのよい大男で、対照的に女性はスタイルのよい細身で小柄だ。


「それじゃあ男子は運動場の反対側に移動して男女別れて授業をはじめるぞ!…ではリラ先生、お願いします」

「分かりました。ガーフィー先生。…では女子は男子が移動したら準備運動から始めましょう」

「よし!男子は向こうまで走れ!」


バタバタバタ…


「さて、今日から魔物討伐に関するイロハを教えるわけだが、そもそも魔物と戦闘ができるだけの基礎体力がついていない者が多い。運動ができないと遠方からちくちくと魔法を打つしか役割が持てないからな。魔物戦で一番魔物に傷を与えるのはやはり近距離で戦う者であることは想像に難くないと思う。王立魔法学校の生徒ならば前線にも立てるだけの実力は必須だ」


 ひええ。前世から運動はほとんどしていない俺はこの授業についていけるのか。いちおう屋敷にいたころは兄のエドガーと素振りやランニングをちょこちょこしていたから大丈夫だと信じたい。


「まあ、運動がどうしてもできない奴は毎年3分の1くらいはいる。二年生からは体育は必修じゃなくなるから、どうしても無理そうなら来年からは選ばなくていいからな」


 おお。逃げ道が用意されているようだ。少し気が楽になると同時にやる気も出てきた。


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


「よし!今日はここまで!」


 先生の号令と共に、生徒が次々と膝をつく。自分も疲れて座り込んでしまった。あまりにも厳しい運動をやらされた結果、誰もまともに口を開くことができない。遠くからこちらを見ている女子たちが心配そうな顔で見ている。


「うむ!やはり一年生の最初の授業はこうでなくてはな!ガハハハハ」


 腕を組み、やたら満足気な顔でガーフィー先生が笑う。鬼だ。鬼がここにいる。


「いいかお前ら、座ったままでいいから聞けよ。今日はあえて己の限界を知ってもらうために極限まで厳しくした。魔物と戦うにあたり、自分がどれくらい動くことが出来るのかを把握しておくのは最も重要なことだからな。

次回からは普通のトレーニングだから安心してくれていい。しっかり体をほぐす運動をしておかないと翌日の筋肉質がひどいから、ケアも怠らないようにな!

さあ、息が整ったやつから着替えて教室に戻れよ」


 誰も立ち上がらない。いや立ち上がれない。限界まで酷使した体は鉛のように重たく、毎朝の素振りはただのおままごとだったのかと思えてくる。女子に見られているからか、何人かが続々と半ば無理をしつつ更衣室に戻っていく。それを見ながら自分はゆっくり回復するのを待つと、女子も帰り、ついには自分とあと一人だけが残った。残ったもう一人はかなり体が細く、こう言ってはなんだが、見るからに運動ができなさそうである。こちらの視線に気づいたのか、四つん這いのままこちらへやってくる。


「レオン・カール君だよね?」

「そうだよ、君は?」

「ボクはユウ・アーベル」

「アーベルだって?」

「うん、そうだよ、別に有名な家名じゃないと思うけど…」

「…ああ、そうか。いや、自分の遠い遠い故郷の有名人にアーベルって名前の算術の学者がいてね」

「へー。ボクは知らないけど、たまたま同じ名前なのかな」

「そうだと思う。というか、君って女子と間違われたりしない?」

「そうなんだよ!体が小さいし細いからか、女の子と間違えられちゃうんだ。入試の時もトイレに行こうとしたら女子トイレはあっちですよって手を引っ張られて連れていかれちゃうし…」


 確かにユウは非常に女の子っぽい。ユウっていう名前も両性で使える名前だし。丸い顔にクリクリした大きな瞳。激しい運動の後だからか、やや赤く染まった頬。たしかにこれは女子だと言われても全く違和感がない。


「それで、女子トイレまで連れていかれてどうしたんだ?」

「…誰にも言わない?」

「??何を言うんだ?」

「ボクがその後どうしたか」

「…そんなことを聞くってことは、まさかそのまま女子トイレに入ったのか?」

「わーーー!わーーー!なんで分かっちゃうの!!」

「ええ、本当なの!?」

「お願いお願いお願い!絶対に誰にも言わないで!!」

「…分かったよ。男と男の約束だ」

「レオン君…キミってやつは…」


 瞳をうるうるさせながら胸の前で手を握るユウ。細くてすらーっとした指。上目遣い。肩にかかるくらいでさらさらな髪。


「本当に男だよね?」

「…ひどいよ!!!」


 こうして新しい友達ができた。



人物紹介 ユウ・アーベル


王都に住む小人族の男の子。その見た目からしばしば女の子と間違えられてしまう。しかし本人は男らしくなりたいと日々願っており、男らしさ、強さ、といったことに憧れる。

何回か女子トイレを使った(使わざるを得なかった)ことがある。かわいい。



ちなみに数学者のアーベルは、アーベル群、遠アーベル幾何学など、数学用語に名を冠する程の偉大な数学者で、完璧主義者だったとされています。

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