19 数学者、寮に入る
・身分について
ザビンツ国の身分制度は大きく、王族、聖職者、貴族、平民に分けられる。王族はザビンツ国の国王と血が繋がっている者、聖職者は教会で修行し、ガイア―ル神に祈る者、貴族は王族に任命されて各領を治める者とおよびその者と血縁関係にある者、平民は以上に該当しない、商民職人農民などが該当する。
―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.11
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Side レオン・カール
「レオさま、荷物の積み込みが完了いたししました。寮へ向かいましょう」
出発ぎりぎりの時間までホテルの部屋で数式と格闘しているところへマリーさんがやってきて言った。ついに寮に入る時が来たようだ。マリーさんにお礼を言って馬車に乗り込む。
寮は魔法学校から徒歩5分くらいの場所にある、年期を感じさせるレンガ造りの建物だ。馬車から降りて寮の入り口で待っていた管理人さんに挨拶をする。管理人さんは恰幅のよいおじいさんだ。管理人さんの案内に従って自分の部屋まで歩くが、寮全体がやたら静かだ。疑問に思って聞いてみると、ちょうど去年まで住んでいた先輩は全員卒業でいなくなったらしく、自分が新年度最初に来た入寮者だそうだ。新しく寮に入るのは10人もいないらしい。
授業を受けている間にマリーさんが荷物の運び込みなどをしてくれるらしいので、部屋の場所の確認だけさっさと済ませて学校に行くことになる。今日から歩きでの登校になるんだな。これから何度も歩くことになるであろう通学路をよく観察しながら歩く。文房具屋、古本屋、パン屋、カフェ…まだ朝で人通りの少ない商店街を歩く。放課後、この商店街がどれだけ賑わっているのかが楽しみだ。
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「レオさん、ごきげんよう」
「おはようございます」
「シェーラ、カティア、おはよう」
「レオさん、ご存知でして?レオさんと私、同じ寮ですわよ」
「え、そうなの?どうして知っているの?」
「寮にあなたのメイドがおりましたもの。マリーさん、だったかしら」
「うん、マリーさんであってる。一緒なんだね。改めてよろしく」
「ええ。よろしくお願いいたしますわ」
「お二人とも同じ寮なのですね。私は実家から通うのです」
「カティアは実家通いか。家はどのあたりなの?」
「南区にあるのです。乗り合い馬車で20分くらいかかるのです」
「…聞いといて悪いんだけど、南区と言われてもあまりピンとこないなぁ…」
「南区は確か、王立公園がある地区ですわよね?」
「そうです。うちは王立公園のすぐそばなのです」
「へえ。王立公園って有名な場所なの?」
「レオさん、ご存知ないんですの?国内で一番美しいとされるローズガーデンがある、とても有名な公園ですわよ」
「全く知らなかったな…」
「一度は訪れてみたいですわね…王立公園」
「そしたら、案内するのですよ」
「まあ。その時はお願いしますわね」
ガララララ…
ランプ先生が入った瞬間、教室で会話をしていた全員がぴたっと黙る。みんな意識が高いなあと感心する。いや、授業初日だから慎重なだけか?
「みんな、おはよう。寮に入る予定の人はちゃんと荷物を運び入れたかしら?
さて、今日から本格的に授業が始まるわ。大いに挑戦し、大いに学ぶ。このことを意識して一年を過ごして欲しいわ。
最初の授業は魔法理論ね。少ししたら鐘が鳴るから、そしたら始めましょうか」
鐘が鳴り、授業が始まる。初回だからか、用語の確認や基本的なことからゆっくりと授業が展開されていく。たまーに新しい学びはあるので話を聞き逃さないようにはしているが、ノートには数式が溜まっていく。一時間経ち、鐘が再び鳴る。
「それによって魔力の存在は…と、時間ね。それじゃあ今日はここまでにしましょう。今日は宿題なし。次は歴史ね。この教室で待ってれば歴史の先生が来るから。それじゃあ休憩!」
かなり本格的な授業だった。教科書に沿った授業をしてはいるが、時々教科書をはみ出たより発展的な小話もしてくれるので、こちらの知的欲求をくすぐる。
その後の歴史の授業は見るからに優しそうな犬人族のおじいちゃん先生だった。そういえば入試の時に一度顔を見た気がする。見た目通り優しい口調でストーリーを語るのがうまく、一人一人に語り掛けるような授業で生徒全員の心をつかんでいた。
「それじゃあね、第一クラスは次、体育だから。準備のできた人から屋内運動場に移動してね。入り口で体操着をもらって、更衣室で着替えて集合するようにね。いいかな?」
「「「「「はい」」」」」
ゆっくりとした足取りでおじいちゃん先生が職員室に帰っていく。
「ねぇねぇ、あの先生かわいかったよね」
「うんうん分かる」
「あたし歴史めっちゃ勉強する!」
「あたしも!」
どうやらクラスの一部の女子にコアなファンが生まれたようだ。盛り上がっている女子を横目に、屋内運動場に向かう。体育は確か魔物との戦闘を学ぶんだったか。危険が無ければいいなと願う。




