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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
19/168

17 数学者、入学する③


・成人について


 ガイアにおいて成人とみなされる年齢は15である。毎年の国王誕生日に、その年に成人を迎えるザビンツ国民を祝うパーティーが開かれるのが習わしである。成人して数年の間に結婚をすることが最も一般的ではあり、特に貴族の男性については成人して割とすぐに複数の女性と婚姻関係を結ぶこともある。対して女性は比較的年をとってから貴族の男性に第二婦人以降として嫁ぐ場合もある。これはガイアにおける男女比がおおよそ4:6と、女性の方が多いことが関係する。


―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.11


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―


Side レオン・カール


 王立魔法学校の一番上のクラス、通称第一クラスの顔合わせがつつがなく進んでいく。担任であるランプ先生が学校の施設の場所や授業の選び方を説明していく。話を聞く限り、この学校はかなり自由度が高いようだ。


「さて、それじゃあ最後に一人ずつ簡単に自己紹介でもしてもらおうかしら。そうね…こっちに座っている人から順番にいきましょ」

「うえっ、わ私からですか?」

「そうよ、はい立って立って。名前とみんなに一言だけでいいから」

「は、はいぃ……えっと、カティア、カティア・オルティスです。……みんなに一言…み、皆さん、仲良くして欲しいのです!!」


 ペコリと大きく頭を下げた一人目は、赤らめた顔を上げることなくそのまま素早く座る。ひどく緊張していたようだ。

 その後も順番に自己紹介がすすむ。正直全員の名前と顔を一回で覚えるのは無理だと途中から思い、話を半分聞き流しながら黒板の大きさを計算で求めることにする。あの教壇の横幅を50cmと仮定すると、だいたい黒板の幅は教壇の横幅8つ分くらいだから…


「(ねぇ、次レオの番だよ、ぼーっとしてないで早く自己紹介したほうがいいよ)」

「!…えーと、レオン・カールです。算術が好きです。算術学者か魔法学者になりたいと思っています。よろしくお願いします」


 横長な黒板はよく見るとやや内側に湾曲していて、その曲がり具合、すなわち曲率半径に思いをはせていたら隣のシェーラがひそひそと教えてくれた。俺のすぐ次にシェーラが自己紹介をしたので、シェーラが着席したタイミングでこっそりお礼を言っておく。


「よし、これで全員自己紹介が終わったわね。じゃあ今日やるべきことはもう終わりよ。さっき配った1年生が受講できる授業の一覧を見て、どの授業を受けるか決めておくこと。あ、そうそう、屋内運動場で必修科目の教科書を受け取ってから帰ってね。それじゃあ解散!」


ガララララ…


 重さを感じさせる引き戸を引いてランプ先生が出ていく。一瞬の静寂の後、様子を窺うように何人かが前後左右に座る生徒に話しかけだす。ヒソヒソ声だけが聞こえる室内。シェーラが俺に話しかける。


「ねぇレオ、必修の魔法理論、歴史、体育以外にどの授業とるの?」

「そうだなぁ…まずは算術、あとは魔法技術、科学かなあ」

「じゃあ私と同じね…えっ、いま体育の説明を初めて見たんだけど、『魔物討伐の第一線で活躍する卒業生を招き、3年間かけて模擬戦や魔物討伐に参加し戦闘技術を積む』ってあるよ、なんだかとても危なそうじゃない?」

「えっ本当?…うわ本当だ。でもさすがに1年生からいきなり戦わせたりしないんじゃないかなあ」

「本当かなぁ…私魔物と戦う以前に見たことすらないよ」

「俺もだなあ。魔物図鑑で見たことはあるけど」

「あっ、それなら私も見たことあるわね、くすっ」

「詳しいことは始まってみないと分からないね。じゃあ教科書取りに行こうか」

「うん、行きましょ」


 屋内運動場の入り口に向かうと、開いた扉から運動場の中をこっそりのぞいては顔を引っ込めている人がいることに気づく。何か理由があって中に入れない状況なのだろうか。近づくと、その人は先ほど自己紹介で最初にやっていた人のようだ。


「あちらの方は何をされているのでしょうか」

「まだ運動場には入れなかったりするのかな。聞いてみようか」


 シェーラはさっそく敬語モードに入ったようだ。真剣に運動場の中をのぞく彼女の真後ろに二人で立ち、声をかける。


「ねぇ、ここで何をしているの?」

「ひいぃぃ!!!」


 ビクッ、と飛び上がる。


「そんなに驚かなくても…」

「驚かせてしまって申し訳ありません。ただ何をされているのか気になったのですわ」

「し、心臓が止まったかと思ったのです…って、レオン・カールさんにシェーラ・キースさん!?」

「あら、ご存知なのですね」

「それはもう、入試の成績が断トツでトップのお二人なのですから…有名人なのです。本当にすごいのです」

「いえいえ、私はまだまだですわ。レオさんのほうが何倍もすごいのでしてよ」

「でも、魔力量はシェーラの方が多いじゃないか」

「そうかもしれません。ですが、私にはそれくらいしかレオさんに勝てるものがないですわ」

「うぅ…わたしからしたらお二人ともすごすぎて同じような感じなのです…」

「それはそうと、君はたしか第一クラスで最初に自己紹介していた…」

「カティア・オルティスさん、でしたよね?私のことは気軽にシェーラとお呼びください」

「そう、カティアさんね、俺のこともレオって呼んでくれ」

「はうぅ…恐れ多いです…シェーラさんにレオさん、どうかカティアと仲良くして欲しいのです」

「うん、よろしく」

「はい。よろしくお願いします」

「それで、カティアは何をしていたの?」

「いやぁあの…中にまだ先生しかいないから、入ってもいいのかなって…」

「教科書もらいに来たんでしょ?俺たちが一番乗りなだけなんじゃないかな。一緒に行こうよ」

「カティアさん、行きましょう」

「分かったのです」


カティアは少し慎重というか、臆病な性格なのだろうか。そう思いながら屋内運動場の中へ三人で歩みだした。


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