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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
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13 数学者、入試を受ける③


・魔力量について その2


 同じ魔法であっても、威力の大小、詠唱もしくは魔法陣の有無などにより、消費魔力は異なる。同じ威力、同じ発動時間という条件のもと、消費魔力を抑える方法がさかんに研究されている。例えば、最も基礎的な火属性魔法であるファイアの消費魔力は通常3程度だが、無詠唱などにより、約0.8まで減らすことが可能である。一般に魔法の消費魔力は1/3まで減らすのが限界とされている。


―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.10


―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―



Side レオン・カール


 鑑定水晶での測定を終え、いよいよ魔法の実演になる。屋敷にいた頃にさまざまな属性の基礎的な魔法をマリーさんに教えてもらっているし、すぐ終わるだろう。


「じゃあ測定の紙を見せてもらえる?」

「はい、こちらです」

「はいはい…ってまたA+?今年は多いわね…もう驚かないわ、って鑑定雲が白!?ええっ!?」


 驚いてんじゃん。心の中で突っ込んだ。



「私は魔法理論の授業担当のランプよ。この測定結果なら、入学したらきっと私のクラス、1番上のクラスになると思うわ」

「そうでしたか。よろしくお願いします。ランプ先生」


 改めてランプ先生を見る。いかにも魔女という言葉が似あうような、つばの大きい真っ黒の帽子をかぶった、背の低い先生だ。足を組んで座りながらこちらを下から見上げ、言う。


「じゃあとりあえずファイアからやってみましょうか。これは当然できるのかしら…って、無詠唱ね。すごいわね。じゃあウォータは?…うん、できるのね。ウィンドは?…」


 言われるがまま、火水風土雷…使い手の多い属性の基本的な魔法を無詠唱でこなしていく。


「基本属性の基礎魔法は全て出来るのね、無詠唱で。そうなるとあなたは一年生の魔法の授業は免除でしょうね。さて、もう実技は満点合格でいいのだけど、せっかくだからもっと色んな属性の魔法が発動できるかためしてみない?」

「わかりました。よろしくお願いします」

「よろしい。じゃあとりあえず…この本のこのページに載ってる魔法から順にためしてみましょうか」

「えっ、分厚い…これ全部…」

「まあまあ、いいからやってみなさいって。白の鑑定雲はそれだけじゃ何も分からないからやるしかないのよ」

「はあ。じゃあいきますね。キュア」

「ああ。虚空に向かって回復魔法やっても意味無かったわね。ちょっと私の手の甲にやってみてくれる?…お、出来たわね。じゃあこれは?」



―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―



「うーん、いまの所、魔法名を唱えるだけで発動できる基礎魔法は全部いけるっぽいわね。さすが白の鑑定雲なだけあるわ。」

「基礎魔法が全部できるのは珍しいんですか?」

「えーとね、基礎魔法だけなら半分以上の人が練習でほぼ全属性できるようになるから、そういう意味では珍しくないかもしれないけど、この歳でもうできるってのは珍しいわね」

「では、白の鑑定雲もそこまですごいことではないのですか?」

「いや、普通の人は、中級から上級以上の魔法はせいぜい2属性くらいまでしか習得できないけど、白ならもっと多く覚えられるのよ。それも5つとか6つとか」

「なるほど」

「そう。魔物との戦闘だと中級以上の高威力な魔法じゃないと話にならないことが多いから、中級以上の魔法がたくさんできる人ほど重宝するわけ。だから白の鑑定雲はかなりすごいことよ。…じゃあ次、このページの魔法。私の両肩に手を置いてやってみて」

「えーと…この者に暖かい癒しを与えよ、ハイキュア」

「おっ……あぁ~いいわねぇ~肩の凝りが消えていくわ…ふぅ…」

「何させてるんですか」

「いやぁ、中級の回復魔法は特に使える人がいないからね。1度試してみたかったのよ。白の鑑定雲だからいけるんじゃないかと思ってね」

「職権濫用に当たりませんかねこれ」

「や、やだなぁ、もう。これは…そう、試験よ、あくまで試験なんだからね。回復魔法は発動先が無いと意味ないから、たまたま肩を選んだだけよ?決して肩が凝ってたからちょうどいいなんて思いは…」

「絶対ありましたよね」

「…他の先生には秘密ね。はい実技試験終わり!この紙はこっちで預かるから、そのまま手ぶらで帰っていいわよ」

「…ありがとうございました」


 正直全く納得していないが、やんわり帰れと言われた気がするのでさっさと帰ろう。行きと同じ場所に馬車が止まっているはずだから、そこでマリーさんと合流して、そのあとは…マリーさんがレストランの予約をとっているって言っていたっけ。

 そんなことを思いながら屋内運動場を出てすぐ、誰かに横から声をかけられる。


「あの…すいません」

「はい?」


 声の方へ顔を向けると大きくてぱっちりした青い瞳と目が合う。シェーラ・キースだ。


「ええと、魔力量が学年トップだと言われていた…シェーラさん?」

「私を知っていただいて光栄ですわ。あなたも魔力量がとても多かったようですが…お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」

「レオン・カール。カール家の次男なんだ。レオって呼んでね」

「レオさんですわね。私のことはシェーラと呼んで下さい。レオさんはあの大きなカール領の…すごいですわね」

「いや、そういうそちらもキース領の長女だから同じようなものなんじゃ…」

「いえいえ、キース領は代々男の方が優遇されるので、長女であってもあまり意味ないのですわ。それに領の規模もまるで違いますから」

「なるほど。…というか、同い年ですから、友達口調でいいですよ」

「ありがとうございます。ですが、この口調が染みついてしまっていますの。気になさらずそちらは砕けた口調でいいですわよ」

「そ、そうか。なんかやりづらいな」

「これまでは領から出ることはほぼなく、同い年の方とお話することがなかったので困らなかったのですわ」

「はー。たぶんこれから同い年の人とたくさんしゃべるし、友達口調を出来るようになったほうがいいんじゃないか」

「そうですわ…そうね。やってみま…やってみる。ふふ」

「その調子。俺も地元の屋敷にいたころは年上しかいないし、親は領主だしで丁寧な口調をずっと使っていたから、急に口調を変えろと言われても大変だという気持ちは分かる」

「ありがとう。レオは優しいのね」

「そ、そうかな…はは」


 こっちも初めての同い年(ただしこちらの精神年齢はもっと高いが)との会話だから緊張しているが、うまくいっている気がする。魔力量が多い仲間同士ということで、シェーラとは仲良くなれそうだな。



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