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命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
2章 天才数学者、魔法学校に通う
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12 数学者、入試を受ける②



Side レオン・カール


 屋内運動場に入ると、向かって右側に横長の机が2台置いてあり、それぞれに鑑定水晶2つ、先生2人がついていて、1度に4人を測定できるようになっている。男の子の何人かが屋内運動場に入るやいなや走って鑑定水晶のものに向かう。鑑定水晶は珍しいらしいし、初めて見るものに興奮しているんだろう。他の子の魔力量がどの程度か知りたいし、自分はこのグループの最後にやってもらえばいいか。走って鑑定水晶に向かった子がやっている様子でも見ていよう。ちょうどその子も人族だし。


「はい、受験番号と種族をどうぞ」

「51番です。人族です。」

「はい、ではこの水晶に手をかざしてください。……はい。もう大丈夫ですよ」


 人族の受験生が手をかざすと、サッカーボールよりやや小さい鑑定水晶の中に、じわじわと赤い雲が現れる。それはまるで水の中に垂らした食紅が広がっていくようだった。他の子が測定するところを見ると、緑、青など、さまざまな色の雲が現れているようで、色によって属性を見ていると推測される。ということは、雲の量で魔力量が分かるのだろうか。

 測定前に種族を答えるのは、種族ごとに基準となる魔力量が異なるからのようだ。たとえ水晶内の雲の量が同じだったとしても、それが人族か魔力量の多い種族なのかで意味が変わってくる。

 測定結果を書き込んでいるところをのぞいてみると、魔力量はA,B,C,D,Eの5段階で評価されるのが分かる。先生がCに丸を付けた紙を受験生に渡す。


「はい、じゃあこの紙をもって向こうの先生に見せてきてください」

「ありがとうございました」


 鑑定水晶。実際に使われているところを見ると、色鮮やかな反応が見られて面白い。他の子が測定しているところを見ながら自分の順番をゆっくり待とう。


「おおっ!!なんということじゃ!!」


 エルフの女の子を担当していた高齢の先生が驚きの声をあげる。たしかエルフは魔力量が多い種族だったはずだが、その中でもひときわ魔力量の多い子なんだろうか。鑑定水晶を見ると、もはやただの黄色の球体かと思うくらい黄色の雲がびっしりと発生し、鑑定水晶全体がぼんやりと黄色の光を発している。


「こ、これは間違いなく学年トップレベルの魔力量じゃ!!しかも鑑定雲は黄!!光属性の適性がある子は非常に珍しいですぞ!!」


 高齢の先生が結果の紙のAに丸を付け、さらに「+」を書き込んだ。魔力量を数字できちんと評価していないからどれくらいすごいかあまりピンとこないが、学年トップといっていたし、そうとうなのだろう。それと、鑑定水晶に現れる雲は鑑定雲と言うという、新しい学びがあった。


「はーい、そこの君、こっち空いたからおいでー」

「あ、すみません」


 エルフの子の測定を見るのに夢中になっていると、一番遠くの先生から呼ばれる。若干の恥ずかしさを感じつつ、早歩きで呼ばれた先生の元へ向かう。


「では、受験番号と種族を教えてくれる?」

「はい。59番、人族です」

「はーい。じゃあこの鑑定水晶に手をかざしてみて」


 いよいよこの瞬間がきた。小さい頃から鍛えていた魔力量はどんなものか。わくわくしながら手をかざすと、水晶がじわじわと白く染まり、ぼんやりと光が漏れる。

 自分の手でもしっかり動作するのが分かり、興奮すると同時に安堵した。俺は生まれた直後、体内の魔力量が異常に多いせいで命が危なかったということを以前マリーから聞いたので、何かしらの原因で鑑定水晶が正常に動作しなかったら、と心配していたのだ。

 鑑定雲を見ると、そこそこ魔力はあるようだが、先ほどのエルフの女の子ほどではないようだ。種族による生まれつきの魔力量の差は覆せないのだな。ちょっと残念だ。そう思ってさっさと手を引っ込める。水晶はやがて無色透明に戻る。


「…え?ごめんね、もう一回やってみてくれる?」


 見逃したのだろうか、先生は真剣な顔つきで言う。測定を終え手の空いた他の先生も気づいて様子を見守る中、もう一度手をかざすと、鑑定水晶はやはり同じ反応を見せる。改めてみると光るとはいっても、ろうそくにすら比べ物にならない明るさである。さっきまで見ていたエルフの子よりも暗いし…


「なんということじゃ…単純な魔力量はキース君ほどじゃないが、人族でこの量なら規格外じゃぞ」

「鑑定雲が白ってことは、ほとんどの属性が使えるんじゃないか?」

「魔力量だけじゃなく適性もずば抜けているな…」

「今年は魔力が優秀な生徒が多いですねぇ」


 ただごとではないと気づいた教師陣がざわめく。それに気づき、向こうに行きかけたさっきのエルフの子が振り返り、ふと、目があう。


 白いワンピース。

 なびく長い金髪。

 合間から見える長い耳。

 澄んだエメラルドブルーの瞳。


 彼女はホテル前で見たシェーラ・キースだった。一瞬目が合った彼女はそのまま魔法の実演の方へ去っていった。


「こ、これは…多分人族ではこの学園一番かもしれません…私より多いなんて…しゅん」


 目の前の先生の声で意識が戻る。先生は気を落としながらAに丸をつけ、「+」を書く。俺も評価はA+か。人族で一番かもしれないが、全生徒の中では一番でないし、そこまで大ごとなのか?と思いつつ魔法の実演へ向かった。



―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―



・魔力量について


 魔力量を厳密に、数値化する試みは魔法学界の主要な課題であった。かつては鑑定水晶内に発生する雲の濃さによる目測しか方法がなかった。それに対し現在では専用の魔法陣、魔力量測定紙という、魔力を流すと紙自体が光り、すぐに魔力を流す前の状態に戻るだけの魔法陣が開発され、これを用いて、


魔力量測定紙で1回魔法を発動させるのに必要な魔力量を1とする


として1の魔力量が定義された。この測定紙で魔法を発動させた回数がその人の魔力量になる。また、仕組みは変わらず、1度の発動にちょうど10の魔力量が要求される測定紙なども開発され、魔力量が多い人はそれらも併用して測定する。


 主な種族の10歳の平均魔力量は以下の通りである。

・人族 50

・犬人族、猫人族 45

・ドワーフ 100

・エルフ 150

・竜人族 200

・妖精族 250

 魔力量を増やす最良の方法はまだ確立していないが、現時点でも一度でその人の保有する魔力量は最大でも0.05%しか増加しない。また、年をとればとるほど、魔力量は成長しにくくなる傾向もあるので、やはり生まれ持った魔力量によってほぼ全てが決まるといっても過言ではない。これまでに確認されている最も魔力量の多い人は妖精族の女性で、その魔力量は482である。

 また、魔力量は10倍以上の差がつきにくいので、魔法を用いた戦闘などにおいては、魔力量よりも消費魔力の少なさ、効率が重視される傾向にある。



―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.10


 話の流れをよくするために、いつも冒頭にある『地球とは異なる異世界について』を末尾に持ってきました。

 このレポートは大神学(レオン・カール)が晩年に書いたものなので、この入試時、本人は種族による魔力差がどの程度か知りません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 1回の魔力量増加が0.05%だとしたら、 年間100回魔力量を増やす努力をすれば、年5%の増加。 10年で約1.8倍、15年で約2.4倍にはなるかな。 人族で魔力50なら、15年の努力で12…
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