11 数学者、入試を受ける①
・ガイアの教育について
ガイアには全ての子供に教育を受けさせる体制がまだない。全国に私営の初等的教育機関が存在するが、通うことは義務でない。また、経済的に余裕のある家庭は家庭教師をつけることで教育を受けるさせることが多い。
10歳からはザビンツ国王都にある国営の魔法学校に通うことができるが、入試が存在し、通える子供は少ない。
教育機関が少ないことの理由として、子供に小さい頃から農業などの仕事をさせる家庭が伝統的に多いことがある。
―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.7
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Side レオン・カール
昨日は研究に没頭するあまり時間を忘れてしまった。今日の朝ちょっとだけ勉強できたが、もう少し勉強しておきたかったなあ。
「ではレオさま、試験会場へ向かいましょう」
「はい、行きましょう」
マリーさんとともに馬車に乗り込む。ホテルから学校までは歩いて行ける距離らしいけど、領主の次男が移動するなら基本的に全て馬車らしい。歩きでいいと思うが、他者に下に見られないためにも必要なのだとか。貴族は舐められたら終わりらしい。
ホテル正面入り口前の噴水広場に馬車が止めてあるとのことで行ってみると、もう一台馬車が止まっており、白いワンピースを着たお嬢様が執事の手をとって乗り込もうとしている場面に出くわす。緊張で顔をこわばらせている。あの人も入試を受けに来たのだろうか。
「あちらに見える方も入試に来たんですかね」
「そのようですね。あちらにおられるのはシェーラ・キースさま、キース領を治めているキース家の長女です」
「そうなんですね。よくご存じで」
「メイドはこのようなことも覚えるものです。ちなみに、キース領は住民ほとんどがエルフで、シェーラさまもエルフです」
「へー、エルフ。エルフの方を見るのは初めてです」
「エルフは魔力量が比較的多く、風属性や土属性魔法が得意な種族です。身体的特徴はとがった耳ですかね」
「なるほど」
向こうの馬車が出発する。馬車の窓からみえる彼女。風でたなびく金髪をとがった耳にかけ、遠くを見つめるエメラルドブルーの瞳はまさに宝石のようだった。
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魔法学校に到着し、マリーさんと別れる。学校の先生らしき人物に誘導されるがまま、200人くらいが入る大教室に入って座る。ふと周りを見渡してみると、人族7割、その他3割くらいの比率であることがわかる。猫人族、犬人族、竜人族…種族が分からない人もいた。
鐘が鳴り、ついに魔法学校の入試が始まった。まずは筆記試験。魔法、算術、歴史の三科目からなる。
魔法の入試問題は属性が正しく答えられるか、簡単な魔法陣を見て魔法名を当てられるか、といったクイズ要素が強い内容だった。感触としては全て答えられた気がする。
算術は小学生の文章問題レベルだったので、もう何も言うまい。文句なしの満点だろう。最後の問題だけ三平方の定理がテーマの問題で中学数学レベルだったが。
歴史。これが一番苦戦した。小さい頃からガイアの歴史本を読んではいたが、名前をど忘れしたり、ガイアの童話からの出題で完全に盲点だった問題もあった。
ということで、うまくいけば魔法10割、算術10割、歴史7-9割といったところか。歴史でちょっと失速したが、気持ちを切り替えて実技にいこう。実技は鑑定水晶を使った検査と、指定された魔法の実演の二つからなる。鑑定水晶の方は試験というより健康診断のようなものだとマリーさんから聞いているし、実演については10歳がやる試験だからやたら高度な魔法をやらせることはないだろう。実技が終わったらさっさと帰って研究しよう。
「ではお次、受験番号50番から59番まで、屋内運動場に来てくださいな」
優しそうな犬人族のおじいちゃん先生がやってきて自分の番号を呼んだ。59番の俺は、受験生の列の一番後ろに並び、先生の引率で屋内運動場に向かう。途中で実験室の前を通ったが、見たことの無い機器が置いてあったのが気になった。
屋内運動場に入る直前におじいちゃん先生が振り返り、俺ら受験生に実技全体の説明をしてくれた。
「まず運動場の向かって右側、あそこにいる先生方の所に行って受験番号を伝えてください。そしたら先生が鑑定水晶を使って測定してくれます。ここまではいいかな?」
「「「はい」」」
「うん。よい返事ですね。測定が終わると先生が結果の紙を渡してくれますから、それを受け取って、左側に移動して魔法の実演になります。鑑定水晶の結果の紙をあっちにいる先生に渡すと、じゃあこの魔法やってみて?と聞いてくるから、実際に発動してください。ちゃんと発動できるかを見るだけだから、焦らずやってね。ここまではいいかな?」
「「「はい」」」
「よし。じゃあ前の受験生がみんな終わったみたいだから、順番に鑑定水晶の所へ行きましょうか」
説明も終わり、いよいよ測定が始まる。楽しみだ。
・人物紹介 シェーラ・キース
ヒロイン候補。由緒正しいエルフのキース家長女。背の高さは主人公と同じくらい。金髪ロング、エメラルドブルーの瞳。
エルフであること、キース家の長女であることに誇りをもっていて、亜人差別をひどく嫌う。
伝統あるキース家の長女に相応しいように、とかなりエリート教育を施されてきた模様。魔法学校に来てから、押さえつけられていた好奇心が爆発するかも??




