表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命題:数学者は異世界で生き残れるのか?  作者: kmath
5章 天才数学者、研究する
107/168

96 数学者、告発する②


Side レオン・カール


 ベンフォードの法則について説明して少しやり取りをすると、あとは大人がやるべきことだと言われて帰らされた。失礼しますと言いながら静かに扉を閉める。


「よし、これでようやく研究に集中することができる」


 校門をくぐりながら安堵のため息が出る。これでもう後腐れなくやりたいことをやれるのだ。肩の荷が降りた瞬間、泉のように研究のアイデアが浮かんでくる。俺は久しぶりに走って寮に帰った。




「レオさま、さすがにもう寝てください!」


 マリーさんが珍しく大きめの声を出したことで我に返る。横を向いて時計を確認するともう日付が変わろうとしている。ずっと研究が出来なかった反動で過度に集中してしまったのだろう。いつもはマリーさんに言われて11歳の子供らしく10時ごろには就寝していたのだが、今日だけは多少の夜更かしを許容してくれたようだ。とは言っても、12時まで起きることはさすがにダメらしい。


「もう、何度か申し上げましたが、前世ではよくても、今は貴族のご子息ですし、まだ成年に達しておられません。体は大事になさらなくてはなりませんから」


 マリーさんは腰に手を当てて言う。この注意をされた回数は、もう両手では足りないくらいだ。久々に聞けてどこか嬉しくもある。あ、そういえば。


「そうだマリーさん。人は両手の指を折りながらいくつまで数えられると思う?」

「何でしょう。わざわざ聞くということは、10ではないのですか?」

「正解は2^10-1、つまり1023だ。こうやるんだよ。1,2,3…」


 俺は1から順に自然数をカウントしながら右手の指をせわしなく曲げては伸ばす。左手を使うことなくとある方法で16近くまで数えた時、マリーさんが合点がいった様子で答えた。


「なるほど。2進数を使うのですね」


 2進数とは2進法で表された数のことで、2進法とは0と1だけで表される、コンピュータが内部で数値を扱うときに使われることがよく知られている数の表記法である。0と1だけを使って書ける数を小さい順から並べれば、それが2進法で1から順に数を書いたことになる。


1

10

11

100

101

110

111

1000

1001

1010


 2進法で書いた101は5番目の数で、10進法の5にあたる。このとき、0と1を指を折る、伸ばすで表現することで、手で2進法が使えるのだ。1は右手親指を伸ばし、2である「10」は右手人差し指を伸ばし、3である「11」は親指と人差し指を伸ばすことで表す。10である「1010」を表すときは薬指と人差し指を伸ばすことになる。これは少々やりにくいが。

 この理屈でいくと右手の全ての指を伸ばすのは31である「11111」の時で、左手親指だけを伸ばすと32である「100000」になる。こうして表すことができる最大の数が両手の指をを全て伸ばしたときで、1023である「1111111111」なのだ。


「では『指を半分曲げた状態』を導入することで1つの指で0,1,2の3段階を表すことにすれば、3^10-1まで出来るのではないでしょうか」

「確かにそうね、なら1つの指でn段階を表すことが出来たらn^10-1まで出来る。まあnが大きければ指の曲げ具合でどうn段階を表すかが難しいけど」

「ふふ、そうですね」


 マリーさんがかわいく笑う。


「って、レオさま、時間が!」

「え、別に1回くらい日付変わるまで起きていても大丈夫だって」

「ダ、メ、で、す!ほらっ」


 俺はそのままマリーさんに机から引きはがされた。


 その後、いつもよりテキパキと入浴、歯磨き等を済ませ、いざ横になろうというタイミングでマリーさんが真剣な表情で話しかけてきた。


「レオさま。お聞きしたいことがございます」

「うん、何?」

「レオさまが告発したということで、不正をしていた領などから逆恨みを買うようなことはございませんか。もしレオさまの身に何かがあれば、私は、誰よりもお慕いしているレオさまのメイドとして、とてもとても耐えられません」


 言われて初めて気づく。不正を見抜いて、はいおしまい、とはいかないのだと。あの宿題として渡された表は『領D』と伏せられていたが、あの金額を手掛かりに調べれば分かるかもしれないし、告発した人には知る権利があるとか言って校長先生から伝えられるかもしれない。知ったが最後、口封じとして誘拐、事故に見せかけた暗殺なんてことがあるかもしれない。日本国内でそういうニュースは耳にしなかったが、海外ではそのような事件は確かに存在した。いや、実際に俺が知らなくても『俺が不正をした領を知っている可能性がある』というだけで十分排除されるに値するかもしれない。


「もしかして暗殺を企てられる?」


 俺はおそるおそるマリーさんに尋ねる。するとマリーさんは苦しそうに答える。


「可能性は0ではありません。さすがにないとは思いますが…」


 俺はショックを受けながらベッドに倒れ込んだ。


なんだか物騒な感じになってしまいましたが、そういった危ない展開はしません(大胆なネタバレ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ