9 数学者、王都へ向かう
大変お待たせしました。第2章、魔法学校編開始です。
かわいいヒロインが登場予定です。
・ガイアの通貨について
ガイアはザビンツ国の他に大小いくつかの国が確認されているが、それぞれが独自の通貨を用いる。ザビンツ国の通貨は金貨、銀貨、銅貨が主に使われており、単位はギルである。地球の通貨単位との関係は、1円≒1ギルである。銅貨1つが1ギル、銀貨1つが100ギル、金貨1つが10000ギルである。
―大神学『地球とは異なる異世界について』p.8より引用
―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―
Side レオン・カール 9歳
エドガーが魔法学校を卒業して帰ってきた。たまに夏休みなどのタイミングでカール領に帰ってくることもあったが、改めてエドガーを見ると非常に立派になっていた。言葉遣いもきちんとしてきたし、一つ一つの所作が堂々としている。次期領主としての自覚を持ったのだろうか。
「お兄様、卒業おめでとうございます」
「ありがとうレオ。来年、今度はレオが魔法学校に通う番だな。楽しみか?」
「はい。楽しみです。魔法学校はどんなところでしたか?」
「魔法学校は刺激的なところだったよ。自分はまだまだなんだと思い知らされたことが数えきれないほどあった」
「天才がいたんですか」
「ああ。信じられないくらい強いやつがいてな。そいつに毎日のように模擬戦を頼んではぼこぼこにされて鍛えられたよ」
「あ、魔法学校でも体を鍛えていたんですね。魔法学校の勉強は難しかったですか?」
「科目にもよるが難しいのが多いな。剣術の授業は楽勝だったけど」
「まさにお兄様向けの授業があったのですね。寮の住み心地はどうでした?」
「なかなか住みやすいぞ。領主の息子だからか、一番きれいな寮に住まわせてもらったからな」
「おおー」
「ところでレオは最近どんな研究をしていたんだ?」
「そうですね…振り子で時間を計る研究、てこを利用して重さをはかる研究、自分の魔力量を量る研究ですかね」
「…聞いてもどんな研究かあまり想像つかないが、すごいことをしているんだな」
「ありがとうございます」
「俺は長男だから当然領主を引き継ぐ。レオは将来何になるつもりなんだ?」
「魔法学者になりたいです」
「確かにレオなら向いているかもな。魔法学校の先生はレオみたいな、変人が多かったからな」
「弟に向かって変人って…」
「いや誰がどう見ても変人だぞ。いきなり変な道具を作り出すし、見慣れない文字を一心不乱に書いたりするし」
「…そういわれると反論できないですね」
「気にするな。魔法学校で好きなだけ勉強するといいさ」
―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―
「お父様、お母様、エドガー兄様。行ってきます」
「おう。しっかり勉強してこいよ!」
「頑張ってね、応援してるから」
「レオがいない間、家のことは兄に任せておけ」
「レオのことを任せたわよ、マリー」
「かしこまりました。クレア様」
家族に見送られ、馬車に乗る。今日はついに魔法学校入学のためにカール領を発つ日だ。馬車に補佐としてマリーも乗り込む。
「ん、マリーさんも王都へ向かうんですね」
「はい。道中に魔物や盗賊が現れた場合の駆除、王都に入る時の手続き、入寮の手続きなどをクレア様から任されております」
「なるほど。よろしくお願いします」
意図せず王都までマリーさんとの二人旅が始まった。いや、御者もいるから正確には二人ではないのか。
―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―
「そういえばマリーさんともしばらく会えないのですよね。寂しいです。マリーさんがいれば魔法学校でも色々実験がしやすくなるだろうに」
「大丈夫ですよレオさま。私も寮に入りますから」
「…え?」
「ご存知なかったのですね。地方から寮に入る人のために、付き人を一人まで同じ部屋に入れることが可能なのですよ。それで私がレオさまと同じ部屋で過ごさせていただきます」
「そ、そんなことが。知らなかった…」
「ですから、魔法学校でも実験の手伝いをさせていただきますね」
「…」
「ふふ。まあ私とクレア様で協力してあえて知らせなかったのですけどね。サプライズ成功です」
「驚きましたよ。というかマリーさんと私が同じ部屋って…部屋は広いのですか?」
「はい。レオさまが入る寮は一番ランクの高い寮です。王都にある標準的な宿とは雲泥の差がありますよ」
「へえ…というかマリーさん…その…毎日同じ部屋で嫌じゃありませんか」
「いえ。メイドとして、レオさまと一緒にいられること以上の喜びはありません」
「そんなおおげさな。でもありがとうございます。マリーさんのような美しい女性と同じ部屋なんて、考えるだけで緊張してしまいます」
「もったいなきお言葉。ありがとうございます」
地球にいたころは数学ばかりやっていたので当然女性には縁がなかった。女性との接し方もあまり分からないし、これからうまくやっていけるか不安だな。
―∽―∽―∽―∽―∽―∽―∽―
「通行税を払いました。王都に入りましょう」
「ありがとうございます」
道中は特に何も起きず、夕暮れ時に王都の関所に着いた。マリーさんが関所での手続きを済ませてくれて、貴族専用の入り口から優先して入ることができた。通常の入り口にできた長蛇の列に申し訳なさを少し感じた。マリーさんは「カール家の次男ですから、これくらい優先されて当然です」と言うが、しばらく慣れそうにないな。
「これから王都の高級宿をとり、夕食をとりましょう。その後は明日の入試に備えてゆっくりお休みされるのがよいかと」
「高級宿かあ、高そうだな」
「一泊金貨10枚です。王都の一般的な宿は一泊銀貨50枚ですから、値段にして20倍ですね」
「金貨10枚てことは10万ギル…約10万円かあ。それは高いですね。せっかくだからマリーさんも存分に楽しんでくださいね」
「お気遣いありがとうございます。ですが、私はメイドです。レオさまがおくつろぎいただくのが一番ですから」
まあその心意気はメイドとして100点なんだろうけど、自分としては、もう少しフランクな関係のほうがやりやすいんだけどなあ。




