1話
ある高校の校庭。グラウンド。
集まる人たち。
「潮峰ーーーっいくぞーっ」
「おーけーっ!どんとこいっ!あたしが打てたらセンセー約束どうり補習ナシね!」
坊主のいかにもな野球青年に混ざってバッターボックスに立っているのは、これでもかってくらいショートカットの小柄な・・・女の子。
勝負は目に見えている。
「おいっ見ろよ!潮峰だ」
「え!あれが?もっとがっしりした人かと思ってたー。」
180cmはありそうなピッチャー、野球部顧問の先生が大きく振りかぶる。
「潮峰 空って、陸上とか水泳とかテニス、卓球、バスケにサッカーそのほかいろんなのでで全国大会行ってるひとでしょ!?」
「マジ!?運動神経ハンパねー。」
ピッチャーが・・・
「ねぇ!潮峰さん、打てると思う?」
「ウチは絶対・・・」
投げた。
「打てると思う。」
カキーーーーーン!
目に見えない剛速球は、少女のバットのよって綺麗で巨大な放物線を描き、グラウンドの彼方に消える。
・・・・・・。
静まり返る野次馬。
次の瞬間・・・
おぉーーーーーっ!
一面の歓声、歓声、歓声。
「えへへへ・・・」
歓声の矛先、潮峰 空は、恥ずかしそうに、うれしそうに笑う。
「センセー、これで補習ナシね!」
満面の笑みで喜ぶ空を、
「やっぱ悔しいから補習アリ。」
理不尽で無慈悲な言葉が待っていた。
潮峰 空、17歳。元気でスポーツ大好きにして万能な、高校生。
笑顔が何よりも似合うみんなの人気者だ。