第16話 雌々
雌々を助ける作戦はこうだ。
まず俺が千年龍に気付かれず千年龍の遥か上空にワープする。その後妹々が龍魂を出来るだけ千年龍の周りにばらまく。だがこれは威嚇になる可能性が十分高い。だから上空に居る俺がサポートに入る。
「優しい心」
この魔法で千年龍は同種に敵意を持つことは無くなった。ここでフレイヤの出番。
「赤い流れ星」
この時千年龍には当てない。ただの目眩まし。なんの目眩ましかって。それは……
「俺が千年龍の目の前にさりげなく現れる為のフェイクだ」
千年龍の前にワープをすれば、千年龍は敵意を向け人質を噛み砕く。だからさりげなくワープする必要があった。
「千年龍さん。驚きすぎて、口空いてますよ。対龍弾、発射」
対龍弾は千年龍のこめかみにヒットする。その隙に雌々を抱き抱え妹々と交代だ。
「存分にぶつけてこい。お前の今の気持ち」
「紅の空。暗雲の大地。死を持っても償えないのなら、今ここで滅するまでだろう。龍葬滅拳」
妹々の拳は千年龍に直撃し跡も残らないほど、粉々に砕け散る。
「大丈夫だったか。雌々」
「別に…私は平気だったけど…」
「聞いたぞ。HP誤魔化してたんだってな」
「うっ、うるせー」
「ごめんな、なんか。俺がトラップの場所、教えとけば済む話だったんだけどな。でもさ、これからは弱い部分も見せてくれよ。いつまでも強がってたらいつかお前がしんどくなっちまう」
「別に…今回は…」
「いいんだよ。お前が弱くたって。だってこの俺のチートスキルでお前を地の果てからだろうと救ってやるから。だから俺の前では弱くいてくれ。無理にとは言わねーけどよ。でも俺はお前を理解したい。ただそれだけだ」
雌々の頬を伝った涙が俺の手に当たって弾ける。
「泣いてるのか。雌々。もっと泣いてもいいんだぜ」
「別に、泣いてなんか無い」
「本当か?」
「でも、ありがとう……」
「最後、何て言ったんだ。もう一回言ってくれ」
「聞こえてるだろ、バーか」
まあ一件落着ってことで幕を閉じるか。