第10話 謎の巨人
「くそっ。なんで何も無いんだ」
俺は壁を蹴る。
「痛っ」
痛い!?
なぜ痛い。ここはVRの世界。ここでの能力はVRMMOの能力に等しいはず。なのに……痛い!?
「おい、カミシマ。ここは本当にVRの世界か?」
カミシマは呆気にとられた表情を浮かべる。それもそうだろう。世界がVRと融合されたと皆焦っているのに、この質問をされるのは意味が分からない。
「皆VRと融合されて焦っているんだ」
「そうだけど、ここは違うかもしれない」
カミシマはポカーンとしていた。
どうにか伝えたいと思った俺は魔法を唱える。だが当然のように発動しない。
「魔法が…出ない」
「分かってもらえたか?」
カミシマは額に手を当て考える。
「つまりここだけVRでは無い。なぜだ?」
「それはまだ分からない。でも予想は付いてる」
「あの巨人か」
「その通りだ」
だがどうすればいい。あの巨人が何だからここがVRの世界にならない。俺は何時間も考える。考えて考えて考える。そして俺は1つの答えを見つける。
「VRを創り出しているのはここではない」
カミシマは動揺する。
「なぜ分かっ………どういう事だ?」
「ここはVR工場だ。だが産み出しているのはVRではない……かもしれない」
あくまでもそうかもしれないというただの推測に過ぎない。だけど他に答えが見つからない。
「なあアズサワ……。やっぱいいや」
カミシマは何か話そうとしていたが止めた。何を話そうとしていたんだろう。
この時確信は無かった。けど心のどこかで怪しんでいたんだ。
けどそれが分かったって、俺達はもう、進めない……