同郷の女の子
まぁそんな要望は当たり前だったらしく。
「ならば御使い様のお立場を公表し、資金を…」
なんてお話になったから、とりあえずそれは辞退しておいた。
立場なんて公表したらきっと勝手に出歩けないし、そもそも短期的なものだし。
「そうですね…ひとまず、聖さんの侍女とか…えー…と、こちらにレディズ・コンパニオンなんて立場は?」
「もちろんございます。…ですが、侍女としてはあまりに格が低すぎますし…レディズ・コンパニオンとしては…その、」
「…?あぁ、そうですね。少し私が幼すぎますね…」
レディズ・コンパニオンは格としては同程度か少々目下の…所謂お話相手。でも家庭教師的な…お目付け役的役割もあるから、少なくとも同い年位でないと。
「…レディズ・コンパニオンって、ホステスさんみたいな?…確かにかんなちゃんの見た目じゃ無理だと思う…」
「あー…多分イメージしてるイベントとかのコンパニオンとかとはまぁ違うんですけど…感覚としては近所のお姉さんに家庭教師みたいな?どちらにしても無理ですね。…かと言って出自がハッキリしない者を傍におくわけにはいきませんでしょう?」
王子様が苦笑いするあたり、やっぱりよね。王弟だもんね。
「…普通に同郷とかじゃダメかなぁ…」
「?聖さんは聖女として認識されているのでしょう?同郷って事にしたら色々偉くなりません?」
ふらふら出来ないのは嫌なのよー。
「あー…いや…多分その辺りは大丈夫。異世界のことも一部の人しか知らないし…私が帰れないのは周知されてるし…」
どうにも歯切れの悪い言葉だけど、この表情、なんかあった…ていうか、まだ進行形かな?
王子様にちらりと視線を向ければ目礼…うーん、この辺はお話しないとか。
「とりあえずその辺りはお話聞かせて下さいね。…問題なければ同郷の…まぁ親戚が訪ねてきた位の設定でいきましょうか?」
「うんうん!それでいこう!そうすれば私が持て成しても大丈夫だし、客人扱いで良いよね!?」
「…ん、問題ないよ。…では巫女様、それでよろしいですか?」
遠い故郷から親戚で年下の女の子が訪ねてきた、ね。
おーけー、おーけー。私、お姉さんってほしかったのよね!
◇ ◆ ◇
「それで?聖女様するにあたって色々あったって事だけど、何があったか聞いてもいい?」
「もちろん!もー、ほんっとに色々あってね!!あっちの感覚で聞いてほしかったのー!!!」
時は飛んで、ここはアレクセイ王弟殿下の離宮…まぁ所謂、愛の巣である。
あれから、視察と称したお忍びデートで街に出たところを偶々同郷の私と出会った、と、なんともまぁ無理矢理感のするーーー一応、街に出て合流するという裏工作はしたーーー理由によって、無事に私は客人として招かれた。
…まぁ、不自然な事があっても王弟様と聖女様が相手である。何も文句は言えまい。権力バンザイ。
私としては町娘的な口調だったり、王子様…アレクセイ王弟殿下をアレク兄様呼びすることになったりと、親戚設定はしっかり守ってる。
そうして早速とばかりに聖さんと…まぁ女子高生みたいなノリでのパジャマパーティのはじまりだ。
…パジャマパーティにスナックは欠かせない。色々無理して取り寄せたが、必要経費だ。これは譲らん。