巫女さんの事情(上)
「私は、聖さんのフォロー役としてこちらの世界へ来ました…って言いましたよね?ちょっと…っていうより、かぁーなーり、遅かったみたいですが。」
なんていうか、物語は完結しましたよね?って感じの雰囲気だよね。
聖女様と王子様がなんやかんや苦難を乗り越えて、ハッピーエンド!って感じだもんね…
「いえ、その…」
「まぁ、タイミングは私の責任ではないので、文句なら神々へどうぞ。えーと、どこから話そうかな…」
いや、そんな唖然とした顔しないでよ。
ちゃんと神様敬ってるよ?これでも巫女よ??
とにかく、私についての説明かぁ…
どこから説明しようかしら…
そんな事をつらつら考えながら、こんな事になった顛末を思い出していくーーーー。
◇ ◆ ◇
『かんな…かんな、そのままでは、死ぬぞ。』
そうだ、私は直に死ぬ。
「いぃ…もう、いい…疲れた…」
そもそも、この世界に居場所なんぞないのだ。
現代では意味のない《白の御子》という色の存在は、ただただ虚弱な巫女でしかない。
神と繫がるこの役目には、もう白という色はいらない。神秘性も薄れてしまった。
『かんな…妾の可愛いこ…そう言わないでおくれ…
』
『そうじゃ、そうじゃ…そなたならまだ…』
あぁ、この方々は、本当に…
でも、本当にもういいのだ。もう、現代に巫女はいらない。
人はもう、神離れする時だ…巫女という生贄は、私で最後だ。
「大丈夫…わたしは…しあ、わ…せ…」
さぁ、このまま、この泉で、眠ろう…
『そうはさせないよ、かんな』
その声を聞いた時には、私は私のいた世界から消え去った。
「ってうぇ!?なんだここ!いや私死ぬ感じだったよね!?」
周りを見まわせば、白、白、白ーーー…え、ここ、発狂部屋?
いや、死後の世界はこんなんだった?そんな筈ないんだけど…え、巫女教育間違ってた??
『間違っていないよ、かんな。ここは死後の世界でもなんでもない。世界と世界の狭間だ。』
あ…
「巫女、かんなにござります。御身に…」
『あぁ、そんな挨拶は良いよ。声をかけるのは初めてとはいえ、君のことは皆知っているからね』
「は、ぃ…」
最後に聞いた声のお方だ。
神多き日本において、馴染みのある神とそうでない神とでは、対応が違う。そしてこのお方は、馴染みのない神様だ。
それにしても、随分とお優しい…本来の神々は、もっと…こういってはなんたが、傲慢で、気紛れと聞いていたんだが…
『ふふ、かんな、ここでは思考がもれるからね。それに、そのへんの下位のモノと、可愛い御子の扱いが違うのは当然だよ。』
「っ!?も、申しわけござりませぬ…」
巫女は特別…?ううん?歴代巫女はそんなこと…
いやちょっとまて、思考がだだもれ!?
『あぁ、そうだよ。だから、気遣わなくて良い。それに、君の思う巫女は御子ではないよ?』
「あ、ありがとうござ…います…?」
え、まって。
巫女が巫女じゃないって…どういうこと?
『うん?君の言う巫女は〈巫女〉、役職を指す。私が言う〈御子〉は御子、私達の愛し子としての御子だよ。』
それ、は…私ではなく、色が白いから…
だから…神々も、みんな、優しかった、の…?
『色ではないよ、かんな。君のその色は、現代では解明されつつあるだろう?その色と、私達は関係ない。そして、私達にとっての価値は魂の…うん、輝きだ。』
かがやき…それは、随分と…過大評価だ…
『おや、その割には嬉しそうだね?…さて、落ち着いたようだし、そろそろ本題を話して良いかな?』